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2015年 08月 03日

国会での「お答えを控える」政府

戦争法案の衆議院での審議の過程で、大臣や政府側参考人が「お答えは控えさせていただく」などとして答弁を拒否する姿勢がよく見受けられました。
具体的な想定事例や過去の戦争を例に挙げて法案の当てはめを問う質問に対して「仮定の質問なのでお答えを控える」というタイプもたくさんありまし た。

一方で、「大事な情報だから答えない」「資料を出さない」というタイプも散見されました。
といっても「特定秘密だから」と答弁するわけでもなく、ただ「お答えを控えたい」というだけ。法的根拠は示さないけれど答えたくない、と言っているのです。

国会会議録から答弁を一部抜粋してみました。

(1)「国際テロへの対処は日米共同計画の対象か」(2015/6/5衆議院特別委)

○赤嶺委員 (略)次は、日米新ガイドライン、これについて伺います。
 平時から緊急事態に至る日米間の共同計画を策定、更新するとしております。共同計画の対象に国際テロへの対処は含まれますか。
○深山政府参考人 (略)まことに申しわけありませんが、それ以上の共同計画の内容等詳細につきまして、またどういう事態が入るか入らないかにつ きましては、緊急事態における日米両国の対応にかかわるものでありますことから、お答えを差し控えさせていただきたいと考えております。
○赤嶺委員 (略)国際テロについて日米両国がどんな共同対処をしているかというのは、我々も報道等でいろいろ知り得る立場にあります。ガイドラ インの中で共同計画を平素からつくると言っている。これは、ガイドラインの中の一番目を引く部分でもあります。その中に、共同計画の対象に、対象 にですよ、共同計画にどんな国際テロ対処方針をつくっているかじゃないんです、共同計画の対象に国際テロへの対処は含まれますかと。これはごく常 識的な質問じゃないですか。国民みんなが思っていることじゃないですか。それに答えられないというのはおかしいじゃないですか。答えてください。
○中谷国務大臣 新ガイドラインのもとで日米両国が平時において共同計画策定メカニズムを通じて策定する共同計画の対象は、日本の平和と安全に関 する緊急事態でございます。
 これ以上、共同計画の内容等の詳細につきましては、緊急事態等における日米両国の対応にかかわるものでございますから、事柄の性質上、お答えは差し控えさせていただきたいということでございます。

(2)「自衛隊の部隊行動基準を改定するか否か」(2015/6/19 特別委)
※米軍の標準交戦規則では「敵対的行動」だけでなく「敵対的意図」に対しても武力攻撃できるとされている。今後、自衛隊の部隊行動基準も米軍と共 通化させられるのではないか、という懸念があると指摘されました。そしてこれに関連して、日米新ガイドラインの改定および安保関連法案が通ったら 自衛隊が部隊行動基準(ROE)を改定するかどうか、を宮本徹議員が質問。

○黒江政府参考人 お尋ねの部隊行動基準につきましては、これはまさに自衛隊の手のうちでございますので、個々具体的にその内容について、どのよ うなものを定めるのか等々につきましてお答えすることはできないということを御理解いただきたいと思います。
○宮本(徹)委員 いや、改定するのかどうか。全部明らかにしろなんて言っていないですよ。今回のガイドラインと法改正がもし行われた場合に、部隊行動基準を改定するのかどうかというのをお伺いしているんですよ。大臣、どうですか。
○黒江政府参考人 個別具体的なものに対しまして我々がどのような基準を設けるのかといったことも含めまして、これは我々の手のうちでございます ので、これをお答えすることはできないということをぜひ御理解いただきたいと思います。
○宮本(徹)委員 いや、できないとかなんとか言っていますけれども、日経新聞なんかの報道でも、ROEは今後改定することが報道されているじゃ ないですか。何でそのことも答えられないんですか、大臣。ROEを改定するんじゃないですか。
○中谷国務大臣 報道につきましてはいろいろな報道があるかもしれませんけれども、我が防衛省といたしましては、ROEについてお答えをするとい うことにつきましては、これは控えておくべきことだというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 二〇一三年に安倍首相自身が、ROE改定は検討するということを国会で答弁されていますよ。何でそんなことも隠すのか。

(1)(2)で「お答えを控えた」のは、何でそんなことまで隠すの?と疑問になる内容です。
また、法的根拠は何なんでしょうか。秘密保護法ではないようです。
そもそも質問と答えがかみ合っていない点も気になります。

さらに、資料の提出をめぐっては次のようなやりとりもありました。

(3)「イラク復興支援活動行動史」
※「非戦闘地域」の枠組みをなくし、戦闘現場でなければどこでも外国軍の支援を可能にする内容の法案。審議の前提として、「非戦闘地域」を建前と していたイラクでの活動を明らかにする必要がある、として、辻元議員ら複数の議員が、イラク戦争での陸上自衛隊・航空自衛隊の活動内容や教訓、問題点などをまとめた報告書の提出を求めた。
ところが、防衛省は黒塗りの資料を提示。
完全な開示資料が世間には出回っているにもかかわらず、国会での提出要求に対しては黒塗り資料だけを提示していた。
衆議院での法案採決後に「完全版」をようやく提出。

「黒塗り版」と「完全版」は辻元清美議員のウェブサイトにアップされています。
http://www.kiyomi.gr.jp/blog/5969/

国会というのは国の最高機関であり、政策の議論の場です。国会議員は国民の代表です。そこにさえも法的根拠を示さず答弁を拒否する、「秘密」でないのに情報を出さない、という姿勢がありありと見えています。
こういう政府の姿勢を見るにつけ、本来隠すべきでない情報が「秘密」だとして一層隠されていく危険、秘密保護法が濫用されていく危険を強く感じます。
(弁護士・矢﨑暁子)

by himituho | 2015-08-03 19:45 | 弁護団メンバー記事


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