2015年 08月 13日
小池晃議員が国会に出した文書をシェアすると秘密保護法に触れるのか? |
報道によりますと、共産党の小池晃議員は、8月11日の参院特別委で、今年5月頃、防衛省統合幕僚監部が安保法案の成立を前提とする内部資料「『日米防衛協力のための指針』および平和安全法制関連法案について」を作成していたことを指摘して質問しました。
この資料には、8月に法案成立、来年2月ごろ施行と書かれていました。
委員会が紛糾して、審議がストップしたようですが、審議再開後、中谷防衛相は「同じ名前の資料は存在するが、細部まで特定するまでは時間がかかる」と回答。
小池議員は、国会で審議の真っ最中で、それを受けた今後の方向性を統幕が議論していいのかと突っ込みました。
中谷防衛相は「安保法案については国会の審議が第一で、法案が成立した後に検討すべきだと思います」と答弁したそうです。
その問題の文書のPDFファイルがネット上に公開されていて、それをシェアすると特定秘密保護法に触れて処罰されるのではないかという不安があるようです。
上記リンク先を見ますと、「取扱厳重注意」と書いてありまして、特定秘密なんじゃないか、これに触れることは危険なんじゃないかということのようです。
しかし、特定秘密に指定されたものは「特定秘密」と表示されることになっていますので、「取扱厳重注意」という表示ということは、特定秘密ではありません。
(リンク先4頁目の下段参照)
ところで、仮に、特定秘密だったらどうかということを考えてみましょう。
秘密取扱者ではない一般市民の方が処罰される可能性のある条文は、24条、25条ということになります。
24条は、不正な目的で、だましたり、暴行を加えたり、脅迫したり、窃盗、損壊、施設の侵入、盗聴、ハッキング、その他管理を害する行為によって秘密を取得した場合ということです。
そうすると、ネット上に流れているものをシェアすることは、これには当たりません。
対象となっている行為は、秘密の管理者から秘密を取得する行為の中で、特に不正な手段を用いた場合を処罰しているのですが、ネット上にあるものは、秘密の管理者から取得したわけではありません。
※逐条解説133頁以下参照。
http://www.cas.go.jp/jp/tokuteihimitsu/pdf/bessi_kaisetsu.pdf
25条は、23条1項で処罰している秘密の漏えいや、24条1項の秘密の不正取得等の共謀、教唆、扇動を処罰するものです。(秘密が漏れていなくても処罰します。おーこわ。)
しかし、やはり、ネット上にあるものをシェアするだけでは、共謀、教唆、扇動には当たりません。
したがって、処罰されることはありません。
刑法というものは、後から「これも犯罪だってことにしたから」と言って、そのとき犯罪でなかったものを、後から犯罪だったことにすることはできません。
予め定めていなければならないということになっています(罪刑法定主義)。
ですから、「ひょっとしたらこれも犯罪と言われるかも」ということを心配することはありません。
なお、シェアされているのを見て、「お前が秘密を盗み出してきてアップしたんだろう」と言う公安がいたとしたら、大変にスジが悪いと言わざるを得ません。
そもそも、秘密であることを知っていて取得してアップすると、自分の犯罪の証拠になるではありませんか。
本当に不正に取得した人がそのようなことをするとは考えられません。
そんなことを言ってきても、瞬殺です。
もしそんなことがあったら、秘密保護法対策弁護団までご相談ください。
(弁護士・内山宙)
by himituho
| 2015-08-13 22:53
| 弁護団メンバー記事