2016年 09月 21日

【声明】共謀罪法案(「テロ等組織犯罪準備罪」)の国会提案に反対する声明

共謀罪法案(「テロ等組織犯罪準備罪」)の国会提案に反対する声明
-秘密保護法×共謀罪×盗聴は監視社会をもたらす-

1 政府による新法案の国会提出検討とその断念
 報道機関は、政府が、2003、2004、2005年の3回に渡り国会に提出し、日弁連や野党の強い反対で廃案となっていた共謀罪規定を含む法案の修正法案をまとめ、今臨時国会に提案を検討していると報じた。
 新法案では、「組織犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」を新設し、その略称を「テロ等組織犯罪準備罪」とする。新法案を2003年の政府原案と比較すると、適用対象を「団体」とされていたものを、「組織的な犯罪集団」とし、団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が死刑若しくは無期若しくは長期4年以上の懲役若しくは禁固の刑が定められている罪等を実行することにある団体と定義するとされる。
 また、犯罪の「遂行を二人以上で計画した者」を処罰することとし、「その計画をした者のいずれかによりその計画にかかる犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の当該犯罪の実行の準備行為が行われたとき」という要件を付すとされる。
 その後、市民が新法案にいち早く反対の声を上げたためか、政府は、2016年9月16日、臨時国会への法案の提案はひとまず断念した。しかし、政府は提案そのものを断念したわけではなく、予断を許さない状況である。

2 なぜ共謀罪は危険なのか
 そもそも犯罪とは、人の生命、身体、財産などの法益が侵害され、被害が発生することだと考えられている。法益の侵害又はその危険性が生じて初めて事後的に国家権力が発動するというシステムが、近代的で自由主義的な刑事司法制度の基本である。
 人は、様々な悪い考えを心に抱き、口にもすることがあるかもしれない。しかし、大多数の人は、自らの良心や倫理感から、これを実行に移すことはなく、犯罪の着手に至らないのである。
 我が国の刑事法体系が、犯罪の処罰を「既遂」を原則とし、必要な場合に限って「未遂」を処罰し、ごく例外的に極めて重大な犯罪に限って、着手以前の「予備」等を処罰しているのは、刑事法が「悪い意思」を処罰するのではなく、法益侵害の現実的危険性がある「行為」を処罰する法益保護主義に基づくものである。
 共謀罪は、刑法の基本原則を否定するものであり、極めて危険である。

3 やはりこれは「共謀罪」だ

 新法案の「計画」は、旧法案の「共謀」の言換えにすぎず、どのような行為を「準備行為」とするかについて、明確な限定も付されていない。そのため、例えば生活費のための預金の引き出しであっても、「(犯罪資金の)準備行為」とされかねない。結局、「計画」(共謀)だけで処罰することは、元の政府案と変わりがない。
 また、旧法案では、適用対象が単に「団体」とされていたが、新法案では、「組織的犯罪集団」とされ、その定義は、「目的が長期4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」とされる。しかし、捜査機関による法律の解釈によっては処罰される対象が拡大する危険性が高い。例えば、現在、高江ではヘリパットの建設に抵抗して、市民が座り込みを続けており、これに対して警察は全国から機動隊を動員して警察権を濫用し、多数の市民を負傷させ、逮捕者も出ている状況であるところ、これらの抗議活動が、組織的な業務妨害行為をする組織的犯罪集団の活動と見なされ、摘発の対象とされる可能性がある。また、原発の再稼働に抗議するような活動についても、同様に、摘発の対象とされる可能性がある。
 政府の修正によって、人権侵害の危険性が除かれたとは、到底評価できない。

4 秘密保護法で導入された共謀罪の危険性
 2013年12月に成立した「特定秘密保護法」にも、共謀や煽動を罰する規定が既に盛り込まれていた。
 私たち秘密保護法対策弁護団は、この秘密保護法に強く反対し、その廃止を求めてきた。特に、秘密保護法に盛り込まれた、共謀や煽動を罰する上記規定の存在は、国にとって不都合な事実を明らかにする内部告発やこれを報ずるジャーナリズムに大きな萎縮効果をもたらし、これにより市民の知る権利を制限し、民主主義の機能不全をもたらすことは明らかである。

5 共謀罪の制定は盗聴の拡大をもたらす
 共謀罪法案が成立すれば、警察当局は、秘密保護法違反の共謀罪を含む共謀罪全体について通信傍受(盗聴)の対象とすることを求めて来るであろう。既に産経新聞は2016年8月31日の「主張」において、「(共謀罪)法案の創設だけでは効力を十分に発揮することはできない。刑事司法改革で導入された司法取引や対象罪種が拡大された通信傍受の対象にも共謀罪を加えるべきだ。テロを防ぐための、あらゆる手立てを検討してほしい。」とまで述べている。
 人と人とが犯罪を遂行する合意をしたかどうかや、その合意の内容が実際に犯罪に向けられたものか、実行を伴わない口先だけのものかどうかの判断は、犯罪の実行が着手されていない段階では、極めて困難である。そして、検挙しようとする捜査機関の恣意的な判断を容れる余地がある。人と人との意思の合致によって成立する共謀罪の捜査は、会話、電話、メールなど人の意思を表明する手段を収集することとなる。そのため、捜査機関の恣意的な検挙が行われたり、日常的に市民のプライバシーに立ち入って監視したりするような捜査がなされるようになる可能性がある。
 秘密保護法違反の共謀罪が、通信傍受(盗聴)の対象とされれば、政府の違法行為や腐敗を暴く内部告発・調査報道は極めて困難となる。

6 秘密保護法は廃止、共謀罪は新設阻止
 秘密保護法と、今般の刑事訴訟法改正に盛り込まれた盗聴の拡大に、さらに共謀罪の新法案が加われば、それらはセットとなって、監視社会をもたらし、市民活動に対する萎縮効果を生じさせ、ひいては、民主主義的な政治プロセスの崩壊を招きかねない。
 政府は、同年9月16日、臨時国会への新法案の提案はひとまず断念したと報道されている。しかし、政府が提案そのものを断念したわけではない。政府は、10年前に成立させられなかった修正案よりも、さらに後退した法案を出してこようとしており、予断を許さない状況である。
 私たち秘密保護法対策弁護団(構成員約400名)は、敢然とこれに立ちふさがり、秘密保護法の廃止を求める同時に、共謀罪法案と盗聴拡大を阻止するため、共謀罪法案の国会提案に強く反対するものである。

2016年9月21日
秘密保護法対策弁護団       
共同代表  海 渡  雄 一
同     中 谷  雄 二
同     南    典 男

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by himituho | 2016-09-21 23:00 | 弁護団の声明など


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