2017年 03月 02日
秘密保護法の1年を振り返る(2017年3月) |
1 特定秘密の指定件数は増加の一途
秘密保護法が2014年12月10日に施行されてから、2年以上が経過した。特定秘密の指定件数は増加の一途をたどっている。
政府は、2017年1月17日、特定秘密保護法に基づく特定秘密の件数が、2016年末で計487件になったと発表した。※1
行政文書数という観点からは、まだ数が公表されていないが、2015年6月末時点で約23万件(当時の特定秘密の件数は417件)、同年12月末時点で約27万件(当時の特定秘密の件数は443件)と発表されているところであり、現時点で、膨大な数の行政文書が対象となっていることが容易に推測できる。
私たち市民の目に見えないところで、着々と、特定秘密は増え続けている。
※1 内閣官房のHPの「特定秘密関連」ページhttp://www.cas.go.jp/jp/tokuteihimitsu/に掲載されている、「各行政機関における特定秘密の指定状況一覧表(平成28年末現在)」を参照。
2 適性評価が拡大し、不適合者や同意拒否者も
2016年中の適性評価の実施件数は、約9万6000人だった。「特定秘密を漏らすおそれがないと認められない」とされた者が1名いた。また、適性評価を実施するに当たっての同意をしなかった者が36名、一度同意したが取り下げた者が2名いたと発表されている。※2
特定秘密の増加とともに、適性評価が拡大し、行政機関が不適合と判断する者や、同意拒否者が現れていることが分かる。
※2 内閣官房のHPの「特定秘密関連」ページhttp://www.cas.go.jp/jp/tokuteihimitsu/に掲載されている、「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施状況に関する報告」(平成28年4月26日付け)10~12頁を参照。
3 独立公文書管理監の動き
特定秘密の指定等に関する検証・監察をおこなう、内閣府・独立公文書管理監は、2016年の報告書をまだ発表していない。
独立公文書管理監は、2016年4月、外務省と警察庁の計3件の特定秘密に相当する文書が存在しないとして指定の解除を求めた。これを受けて、両省庁は指定を解除した(2016年5月23日付け毎日新聞)。
さらに、独立公文書管理監は、同年8月、防衛省が指定した特定秘密に関して3件の不適正な運用があったとして、初の是正要求をした。防衛省は2014年12月、外国企業の衛星が撮影する建物などの名前が記された計画書を特定秘密に指定していたところ、2015年、経済産業省と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星が撮影する対象物も同じ計画書に追加記載していたが、これは別途、秘密指定を受ける必要があるものであった。防衛省は、是正要求を受けて新たに2件を特定秘密に指定した。このほか、対象期間内に文書が作成されなかった特定秘密の解除を求め、文書に赤く記さなければならない「特定秘密」の表示が黒色だったとして是正を求めたという(2016年8月19日付け毎日新聞)。
独立公文書管理監が検証・監察のために、各行政機関からの説明聴取、行政機関に赴いての実地調査等をおこなっていることは評価すべきであろうが、運用に形式的・手続的な違反がある場合にのみ、指摘・是正をしているようにも思われる。もっと内容に踏み込んで検証・監察が充実されることが望まれるところである。
4 情報監視審査会の動き
国会は衆参両院に情報監視審査会を置いている。原則非公開で、所属する議員には守秘義務を課し、携帯電話の電波も届かない部屋で、秘密保護法の運用をチェックする機関である。
参院の審査会は、7月に参院選があった影響もあり、半数の4人が入れ替わった。2016年12月5日付け毎日新聞によれば、審査会は、審査の前提を欠いたまま、本題に入ることができなくなっており、2015年に指定された特定秘密61件の妥当性がおもな審査課題だが、指定した省庁の説明聴取が始まっておらず、2017年3月までに年次報告書を作成するのは難しい状況になっているという。
衆院の審査会は、2015年の特定秘密の指定状況などについて11省庁からの説明を聴取し、2016年11月30日には、警察庁と経済産業省から特定秘密を記録した文書や画像を提供させてチェックした。警察庁の特定有害活動(スパイ活動)にかかわる特定秘密の文書の中に30年以上前の古いものがあり、特定秘密としてふさわしいかを調べたという。2017年3月に報告書を公表する方向とのことである。
国会による運用監視が期待されていたところであるが、審査会が十分機能しているとは言いがたいところである。
(弁護士・海渡双葉)
秘密保護法が2014年12月10日に施行されてから、2年以上が経過した。特定秘密の指定件数は増加の一途をたどっている。
政府は、2017年1月17日、特定秘密保護法に基づく特定秘密の件数が、2016年末で計487件になったと発表した。※1
行政文書数という観点からは、まだ数が公表されていないが、2015年6月末時点で約23万件(当時の特定秘密の件数は417件)、同年12月末時点で約27万件(当時の特定秘密の件数は443件)と発表されているところであり、現時点で、膨大な数の行政文書が対象となっていることが容易に推測できる。
私たち市民の目に見えないところで、着々と、特定秘密は増え続けている。
※1 内閣官房のHPの「特定秘密関連」ページhttp://www.cas.go.jp/jp/tokuteihimitsu/に掲載されている、「各行政機関における特定秘密の指定状況一覧表(平成28年末現在)」を参照。
2 適性評価が拡大し、不適合者や同意拒否者も
2016年中の適性評価の実施件数は、約9万6000人だった。「特定秘密を漏らすおそれがないと認められない」とされた者が1名いた。また、適性評価を実施するに当たっての同意をしなかった者が36名、一度同意したが取り下げた者が2名いたと発表されている。※2
特定秘密の増加とともに、適性評価が拡大し、行政機関が不適合と判断する者や、同意拒否者が現れていることが分かる。
※2 内閣官房のHPの「特定秘密関連」ページhttp://www.cas.go.jp/jp/tokuteihimitsu/に掲載されている、「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施状況に関する報告」(平成28年4月26日付け)10~12頁を参照。
3 独立公文書管理監の動き
特定秘密の指定等に関する検証・監察をおこなう、内閣府・独立公文書管理監は、2016年の報告書をまだ発表していない。
独立公文書管理監は、2016年4月、外務省と警察庁の計3件の特定秘密に相当する文書が存在しないとして指定の解除を求めた。これを受けて、両省庁は指定を解除した(2016年5月23日付け毎日新聞)。
さらに、独立公文書管理監は、同年8月、防衛省が指定した特定秘密に関して3件の不適正な運用があったとして、初の是正要求をした。防衛省は2014年12月、外国企業の衛星が撮影する建物などの名前が記された計画書を特定秘密に指定していたところ、2015年、経済産業省と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星が撮影する対象物も同じ計画書に追加記載していたが、これは別途、秘密指定を受ける必要があるものであった。防衛省は、是正要求を受けて新たに2件を特定秘密に指定した。このほか、対象期間内に文書が作成されなかった特定秘密の解除を求め、文書に赤く記さなければならない「特定秘密」の表示が黒色だったとして是正を求めたという(2016年8月19日付け毎日新聞)。
独立公文書管理監が検証・監察のために、各行政機関からの説明聴取、行政機関に赴いての実地調査等をおこなっていることは評価すべきであろうが、運用に形式的・手続的な違反がある場合にのみ、指摘・是正をしているようにも思われる。もっと内容に踏み込んで検証・監察が充実されることが望まれるところである。
4 情報監視審査会の動き
国会は衆参両院に情報監視審査会を置いている。原則非公開で、所属する議員には守秘義務を課し、携帯電話の電波も届かない部屋で、秘密保護法の運用をチェックする機関である。
参院の審査会は、7月に参院選があった影響もあり、半数の4人が入れ替わった。2016年12月5日付け毎日新聞によれば、審査会は、審査の前提を欠いたまま、本題に入ることができなくなっており、2015年に指定された特定秘密61件の妥当性がおもな審査課題だが、指定した省庁の説明聴取が始まっておらず、2017年3月までに年次報告書を作成するのは難しい状況になっているという。
衆院の審査会は、2015年の特定秘密の指定状況などについて11省庁からの説明を聴取し、2016年11月30日には、警察庁と経済産業省から特定秘密を記録した文書や画像を提供させてチェックした。警察庁の特定有害活動(スパイ活動)にかかわる特定秘密の文書の中に30年以上前の古いものがあり、特定秘密としてふさわしいかを調べたという。2017年3月に報告書を公表する方向とのことである。
国会による運用監視が期待されていたところであるが、審査会が十分機能しているとは言いがたいところである。
(弁護士・海渡双葉)
by himituho
| 2017-03-02 20:35
| 弁護団メンバー記事