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2014年 11月 11日

【報告】「秘密保護法」このまま施行していいの? 緊急 全国会議員アンケート結果 記者会見

<施行予定まで1ヶ月>
「秘密保護法」このまま施行していいの?
緊急 全国会議員アンケート結果

記者会見民主党をはじめ、野党議員から「廃止」「施行延期し、法の抜本見直し」求める声が相次ぐ

10月14日に秘密保護法の運用基準と政令を閣議決定し、12月10日(世界人権デー!)の施行に向けて突き進む安倍政権。2万3820件も寄せられたパブリックコメントや自民党総務会で出された異論すら反映されていません。行政の権限を肥大化させ、立法府の役割を制約しかねない秘密保護法の施行を前に、与野党の立場を超えて国会の存在意義が問われています。
こうした中で「秘密保護法」廃止へ!実行委員会は、すべての国会議員の皆さんに施行をめぐる緊急アンケートを行いました。10月29日にアンケート用紙を全議員の国会事務所に届けて、ファックスによる返送を求め、11月6日には議員会館を訪れ、回収にまわりました。そして、施行予定まで1ヶ月となる11月10日午後、衆議院第2議員会館で結果発表の記者会見を行いました。会見には、12社、計13人の取材がありました。

<記者会見の概要>

海渡雄一さん(弁護士)
秘密保護法に対して、秘密の恣意的指定を防ぐ制度がない、第三者機関に独立性がない、内部通報者保護の仕組みがない、ジャーナリストや市民活動家の処罰が可能になっている、などの懸念が国際世論にまで高められてきている。我々と同様の批判が自民党総務会でも出されたことは決定的な事実だ。あと1ヶ月で施行と既成事実であるかのように言われるが、いったん決まった法律でも、これだけ問題点が明らかになれば、施行しないで議論を継続するために、法律で施行を延期すればいいだけのこと。国会議員の皆さんに、これだけ国内外の世論の反対がある中でこのまま施行するつもりですか、と問いたいとアンケートに取り組んだ。
書面回答は計58人。与党は自民の2人のみが無回答と「このまま施行」。野党からは次世代の「このまま施行」(2人)以外はかなり批判的な意見が多かった。共産(19人)、社民(4人)は「廃止」。生活は「廃止」(2人)と「延期して法の抜本見直し」(1人)。注目の民主は「廃止」(9人)と「延期して法の抜本見直し」(11人)、維新は「延期して法の抜本見直し」(2人)と「延期して基準の部分見直し」(1人)、無所属は「廃止(延期して法の抜本見直し含む)」(3人)、「延期して法の抜本見直し」(1人)という結果だった。
私たちが廃止を求める点に揺らぎはないが、施行を延期できれば、廃止の芽も出てくるだろう。幅広い野党で施行延期法案が出せれば、現実的に政府を揺り動かすような政治状況が生まれる可能性もある。施行延期法案が通ったケースは、司法修習生の給費制廃止の施行を延期する法案の例などがある。この結果を踏まえて、今後も強力に働きかけていきたい。

前田能成さん(出版労連)
率直に言って、民主党議員の中で、1番目の「廃止法案に賛成する」という回答がこんなにあるとは思っていなかった。民主党がこうした方向に意見をまとめて動いてくれると、ひょっとすると何か動きが出てくるのではないか。また、与党議員の口頭回答でも「決まった通りに施行すればいい」と断言する人は少なかった。与党も掘り起こしていけば、大きな動きにつながるかもしれない。

杉原浩司さん(秘密法反対ネット)
民主党の回答者を見ると、党の幹部、役員も一定含まれている。また、維新の党も含めて、法律制定時に反対していた議員がしっかり意思表示されている。少なくとも施行を延期して、透明性の高いプロセスで抜本的な見直しを行った先に廃止という選択肢も見えてくる。現在、民主党と維新の党の間で密に行なわれている政策協議の中に、秘密法の問題もしっかり入れ込んでほしい。


<ぜひご覧ください!>

◆アンケート結果はこちらに掲載!(ダウンロードもできます。)
→ 記者会見資料「国会議員アンケート結果」と「全体の傾向」
http://bit.ly/1wN3Lty

【IWJ】2014/11/10「与野党は今すぐ秘密保護法の『施行延期法案』の議論を!」
市民団体がすべての国会議員を対象にした秘密保護法アンケート結果を公表
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/204813
※「11月14日まで、会員以外の方にも動画全編公開中!」わかりやすくまとめていただいています。

20141110 UPLAN【記者会見】(約30分)
「秘密保護法」このまま施行していいの? 緊急 全国会議員アンケート結果
https://www.youtube.com/watch?v=vwhkUYUPoO8&feature=youtu.be




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by himituho | 2014-11-11 22:30 | 報告
2014年 07月 29日

【報告】国連自由権規約委員会は日本政府に何を求めたか ~死刑・代用監獄・慰安婦・秘密保護法・ヘイトスピーチ・技能実習生・福島原発事故~

自由権規約の審査にもとづいて秘密保護法についても勧告が出されました。
報道をより深く理解できるように、この制度の仕組みから説いた文章をまとめました。
かなりの長文となっていますが、国際機関が日本の人権状況をどのように見ているかがよくわかります。

以下、弁護団メンバーの海渡雄一弁護士の報告です。

国連自由権規約委員会は日本政府に何を求めたか
=死刑・代用監獄・慰安婦・秘密保護法・
ヘイトスピーチ・技能実習生・福島原発事故=

海渡 雄一(弁護士・日弁連自由権規約WG座長)

第1 自由権規約委員会とは
1 本論考作成の目的
 自由権規約委員会の総括所見が7月24日に公開され、かなりのメディアが断片的ではあるが、総括所見の内容や自由権規約委員会の審査について報じている。しかし、報道は細切れであり、この総括所見がどのような仕組みの元で、どのような審査を経て出されたものか、それが、日本政府と我々日本に住む外国人を含めた市民にとってどのような意味があるのか、正確に理解することは難しい。
 私は、1993年の自由権規約委員会第3回審査の時から日弁連の担当委員会に所属している。実際に審査を傍聴し、ロビー活動を行ったのは、1998年第4回、2008年第3回に続いて3回目である。本論考では、これまでの経験を踏まえ、この制度の仕組みから審査の内容と委員会から発せられた総括所見のほとんどの条項を紹介し、その意味について考えてみたい。

2 刑務所改革と自由権規約委員会
 自由権規約委員会の勧告には法的拘束力がないなどという報道が今も続いているが、委員会の指摘に政府が応えた例として、刑務所改革を上げることが許されるであろう。私は監獄人権センターというNGOの代表を務めているが、長く監獄内の人権状況の改善に取り組んできた立場から、刑務所改革は国際人権基準を国内で実現する過程であったと考える。1998年の時には、死刑や代用監獄の問題も取り上げられたが、刑務所における極めて厳しい所内規則、革手錠による虐待、独居拘禁などの問題が取り上げられた。2002年に発覚した名古屋刑務所事件が、刑務所制度の改革につながったのは、問題点が予め自由権規約委員会から指摘されていたにもかかわらず、複数の拷問死亡事件の発生を未然に防ぐことができなかったことを国会などで指摘され、当時の森山法務大臣自らが改革を決意せざるを得なくなったからであった。
 行刑改革後も、国内の刑務所の人権問題が解決されたわけではない。適切な医療を速やかに受けることができないこと、今も数は減ってきているが独居拘禁の処遇の対象となっている者の数が2012年の段階で2000人を超えている。このように、改善の必要な点はいくつも指摘できる。しかし、今日本のすべての刑務所に弁護士や医師や地域住民、研究者などから構成される刑事施設視察委員会が活動している。この委員会は刑務所改革の最大の成果である。外部の目が入ることにより、虐待の危険性などは明らかに減少しているし、話し合いを通じて少しずつではあるが、施設内の処遇は改善されている。すべてとはいわないが、日本にも海外からの訪問客に是非見てもらいたいような進んだ社会復帰のための処遇を展開している施設もある。このような変化は、法務省矯正局が死刑確定者の処遇を除いて、自由権規約委員会の指摘を受け容れて改善に取り組んできたことの成果であると評価できるだろう。

3 国連の複合的な人権システム
 国連人権条約にもとづいて自由権規約委員会、社会権規約委員会、拷問禁止委員会、女性差別撤廃委員会、子どもの権利委員会、人種差別撤廃委員会などの条約機関が条約ごとに作られている。これらの委員会は、国連の建物の中で開催されているが、厳密に言えば、国連の機関そのものではない。自由権規約委員会は、他の委員会との混同を避けるため、日本語ではこのように呼称されるが、条約機関の中では最も歴史が古く、またその英語名称がHuman Rights Committee(人権委員会)ということもあり、最も権威の高い条約機関である。委員は18名で、各国の最高裁の判事や国際法の研究者など高名な法律家が選ばれることが多い。日本からは岩澤雄司東京大学教授が委員に選出されている。
 条約機関以外の国連の人権関係の機関としては、2005年にあらたに作られた人権理事会が総会の直接の下部機関として活動している。条約機関は個人の資格で活動する専門家で構成される。これに対して、人権理事会は同僚審査であり、専門家でなく、各国代表が審査の対象となっている国に人権状況の改善を求める。しかし、この時の基準となるのも、自由権規約委員会をはじめとする国連条約機関が行っている勧告なのである。このように、条約機関の審査と人権理事会はこのように分かちがたく結びつけられている。
 人権理事会には課題別の特別報告者として、強制的失踪、略式処刑、拷問、宗教的不寛容、恣意的拘禁、児童、女性に対する暴力、司法の独立、表現の自由、健康などが取り上げられている。最近では、福島原発事故について積極的な現地調査を実施してくれた健康問題の特別報告者アナンダ・クローバー氏や秘密保護法について問題点を指摘してくれた表現の自由の特別報告者フランク・ラリュ氏らが著名である。自由権規約委員会の議長であるナイジェル・ロドリー卿は、長く拷問問題の特別報告者を務めた方である。

4 自由権規約委員会の第6回政府報告書審査
 2014年7月15日、16日の両日にわたって、自由権規約委員会による第6回日本政府報告書審査がジュネーブの国連欧州本部パレデナシオンで行われた。私は、日弁連代表団の団長として、他の弁護士とともにジュネーブで委員会へのロビー活動に当たった。この審査を受けて7月24日に総括所見が公表されたので、その概要と特徴を報告したい。本報告中意見にわたる部分は私の個人的見解であり、日弁連の見解を代表するものではないことをお断りしておく。

第2 審査の概観と国際人権保障に関する課題
1 これまでの課題と新たな課題
 今回の審査のためにほとんどの国内NGOがJapanNGONetworkIccpr2014を結成し、NGOブリーフィングを主催した。また、これらのNGOのほとんどが6月18日に日弁連が主催した政府との対話のための院内集会にも参加した。
 後に詳述する秘密保護法(23)やヘイトスピーチ(12)、福島事故の問題(24)以外にもムスリムの人々に対する警察による包括的な情報収集について、人種的プロファイルは許されず、権力濫用についての効果的な救済を求める新しい勧告がなされている(20)。
 委員会は、勧告5項において、1998年の第4回審査,2008年の第5回審査時の総括所見の多くが実施されていないことに懸念を表明し、過去の総括所見の実施を包括的に求めている。
 また、刑事司法と少数者の差別は委員会の活動の核であるが、詳細に取り上げる刑事司法、死刑制度以外にも、難民(19)、入管収容(19)、技能実習生制度(16  委員会は、この制度そのものの改変を強く勧告している)などの外国人に対する人権問題、ジェンダー(8,9)、アイヌ・琉球(26)などのエスニックマイノリティ、ジェンダーに基づく暴力とDV(10)、LGBT・性的マイノリティに対する差別(11)、慰安婦問題(14)についての政府の責任なども引き続き取り上げられた。精神病院における非自発的入院の問題(17)、アイヌ・琉球の少数民族問題(26)も大きく取り上げられた。

2 進まぬ国際人権保障システムの更新と克服の方向性 ―個人通報と国内人権機関―
 他方で、委員会が一貫して取り上げてきた、第1選択議定書の批准、条約の国内法的効力、国内人権機関の設立など国際人権保障システムについても、かなり詳細な質問がなされ、具体的な勧告がなされた。
 勧告6項は規約2条に基づいて、国内裁判所による条約上の権利の適用可能性について「締約国によって批准された条約が国内法的効果を持っていることを指摘しつつ、条約の下で守られるべき権利が裁判所では極めて限定されたケースでしか適用されていないことに注目する。」とし、「委員会は前回の勧告(CCPR / C / JPN / CO / 5、 para7)を再度引用し、締約国に条約の適用と解釈が、下級審も含めて、すべて弁護士、裁判官と検察官の職業訓練の一環となるよう、保証することを求める。 締約国は条約上の権利侵害の回復のために効果的な手段を保証するべきである。 締約国は個人通報制度を提供する選択議定書への加入を考慮すべきである。」と勧告した。
 裁判官の研修や法律家になるための司法研修所で国際人権法は取り上げられているが、系統的な研修がなされているとは評価できない。研修の充実が望まれる。
 続いて、勧告7項は、国内人権機関について、規約2条に基づいて「人権委員会法案の2012年11月の廃案以来、締約国が政府から独立した国内人権機関を創設するために何らの進展を見せていないのは遺憾である。」と最大級の失望感を表明した。そして、「委員会は前回勧告(CCPR / C / JPN / CO / 5、 para 9,)を想起し、締約国が幅広い権限をもち、適切な財政的ならびに人的資源を与えられ、パリ原則(総会決議48/134、附属書類)に適合する政府から独立した国内人権機関を設立することを再考するよう勧告する。」とした。
 民主党政権の下で、第1選択議定書の批准、国内人権機関の設立の二つの課題については、政府としての取り組みがなされ、かなりの程度まで具体化していた。第1選択議定書の批准とは、日本国内で発生した人権問題について国内における裁判などが終了した後に、個人が申立人になって自由権規約委員会などの条約機関に通報し、委員会の見解を得るための手続である。第1選択議定書の批准については、外務省と法務省間の協議が完了し、批准のための実務的な詰めの段階に入っていた。
 国内人権機関とは、人権保障を裁判だけで実現することは極めて困難であり、政府から独立した国内人権機関を設置するべきだという考え方が国連からも強く示されてきた。政府からの独立性について詳細に取り決めたものがパリ原則である。人事や権限、予算などのあらゆる面での政府からの独立性が求められている。
 この問題については、さまざまな問題を指摘できる法案ではあったが、法務省が人権委員会法案を閣議決定し、国会に提案した。したがって、安倍政権となってからこのような国際人権保障システムの更新に向けた動きが止まっていることについて、外務省や法務省などによって構成された政府代表団は政治的な経過を報告することができず、明解な説明をすることができなかった。政治的な状況をあからさまに説明することは困難だったからであろう。このようなわかりにくい説明が、さらに委員会のフラストレーションを高めたようにも見受けられた。
 このふたつの問題をどのように克服していくのか。第1選択議定書の批准は政権が決断さえすれば、実現できる。そんなに難しいことではない。世界中の115ヶ国が批准している。東欧や旧ソ連圏の国々はもちろん、日本の近隣国でもフィリピンは1989年に、韓国は1990年に、ロシアとモンゴル、ネパールは1991年に批准している。委員会に岩澤委員を派遣している日本が個人通報を認めていないことは、相当恥ずかしいことである。外交上の利害得失までを見通した政府の高いレベルでの判断が求められている。
 国内人権機関については、安倍政権の下ではなかなか困難があるだろう。自民党が2012年の衆院選挙時に、党として民主党政権の下で閣議決定された人権委員会設置法案に反対するという方針を決めているからである。しかし、政権として国際社会からの働きかけを無視し続けることは国際的な信用にもかかわる。とりわけ、この問題は、2008年、2012年の国連人権理事会の場でも、日本政府はパリ原則に基づく国内人権機関の設立を公約しているのである。国際的な政府としての公約と国内政治上の方針が矛盾をきたし、膠着状況にあるといえる。この問題をどのようにして打開していくかは、極めて困難な課題ではあるが、自民党の中にも国内人権機関の設立に賛同する議員も存在している。知恵を絞り解決策を見いだしていく必要がある。

3 日本政府の対応が評価された事項
 委員会が日本政府の対応を評価した点も存在する。
 委員会は、政府の説明を踏まえ、人身取引防止の行動計画(2009)、男女共同参画基本計画(2010)、公営住宅法の改正(2010)、婚外子差別規定を改めた国籍法の改正と民法の改正(2008,2013)、強制失踪条約の批准(2009)と障がい者の権利条約の批准(2014)については、前向きの要素として評価している(3,4)。実は、婚外子の差別解消については長年にわたる委員会からの勧告が続いていた。2013年9月4日の最高裁違憲判決は、過去の自由権規約委員会の総括所見について言及している。

第3 主要事項として取り上げられた代用監獄と死刑制度
1 袴田事件にふれた発言が3人の委員からなされた
 3月27日静岡地裁は袴田巌氏の再審開始を決定し、45年以上拘禁されていた袴田氏を死刑囚監房から釈放した。今回の委員会の審査の大きな特徴は、この袴田事件を題材に代用監獄、取調、死刑制度、死刑確定者の処遇などが大きなメインイシューになったことである。とりわけ3人の委員が袴田ケースに具体的に言及して発言した。
 南アフリカのマジョディナ委員は、代用監獄の問題について、委員会は1988年から勧告していることを指摘し、30年も問題が提起されているのに政府の対応はなぜ変わらないのかと迫った。そして袴田さんが代用監獄で長期間の取調の結果自白させられた時と現状はどう変わったのか。長期の取調による自白の強要がなされていることに変わりはない。日本政府は、拘置所を増やし、人権違反を防ぐべきではないかと述べた。
 アメリカのニューマン委員は死刑制度と死刑確定者の処遇について質問し、長期の独居拘禁によって精神の健康を害した袴田氏に言及した。死刑囚は長期に独房収容され、死刑執行は数時間前にしか知らされない。執行日時は家族にも知らされず、最後の別れも認められない。政府は「心の安寧を得るため。」というが、委員会はこの取扱は非人道的だと言ってきた。死刑判決を見直すために必ず再審査の機会を与えるべきではないか。裁判員制度の下で、全会一致でなくても死刑言い渡しが可能となっており、必ず再審査するべきではないか(裁判員制度の下では5対4の多数決で死刑判決が可能である)。心神喪失の者の処刑を避けるため、独立の審査システムがない等と指摘した。
 イスラエルのシャニイ委員は取調の問題を包括的に取り上げた。取調の録画が義務化されるのは、裁判員対象の3パーセントが対象になると言うNGOの見解は正しいのか。身体的な暴力や言葉で脅すようなことはあるのか。弁護士はなぜ取調に立ち会えないのか。自白に依存することの危険性は学術的な調査によって示されている。プレッシャーがあると25-30パーセントの被疑者が自白を強要されていると言う報告がなされている。袴田ケースでは再審が開始されたという。そのことは、高く評価されるが、そのような人が他にもいるのではないかと述べた。
 アルゼンチンのレスキア委員は、端的に日本政府に死刑を維持する理由について聞きたいと述べた。対象犯罪に19もの罪が上げられている。事前に処刑を知らせないことで死刑確定者の心の安静をはかるというが、それは国が決めるものではない。事前に通知を受けることで死刑確定者が、状況を把握できるようにするべきだと述べた。

2 代用監獄の廃止を明確に求めた勧告
 このような審査を受け、委員会は勧告18項では、規約7条、9条、10条、14条にもとづいて、代用監獄については、政府が「利用可能なリソースが不足していることと犯罪捜査のためにこのシステムが効率的であること理由に代用監獄の使用を正当化し続けていることを遺憾に思う。」「起訴前に、保釈の権利が欠如し、国選弁護を受ける権利が保障されていないことが、代用監獄における強制的な自白を引き出してしまうリスク強めていることに依然として懸念をもっている。」「取調べの実施に関して厳しい規則が存在しないことに懸念を表明し、2014年「改革プラン」(2014年7月9日法制審議会新時代の刑事司法特別部会「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果」のこと-翻訳者注)で提案されている取調べについてのビデオ録画が義務づけられた範囲が限られていることを遺憾に思う。」とし、「代替収容制度を廃止するか、さもなければ、規約9条と規約14条におけるすべての保障の完全な遵守を確実にすべきであり,それは特に次のことを保障することによって行うべきである。
(a)保釈などの勾留に代わる措置が、起訴前の勾留中にも十分に考慮されること。
(b)すべての被疑者が逮捕のときから弁護人の援助を受ける権利を保障され、弁護人が取調中に立ち会うこと。
(c)取調の継続時間及び方法に厳格な時間的制約を設定する立法措置,また、取調は完全にビデオ録画されるべきである。
(d)都道府県公安委員会から独立しており、迅速、公平かつ効果的に尋問中に行われた拷問や虐待の申し立てについて調査する権限を持つ不服審査メカニズム。」と勧告した。

 代用監獄を廃止するか、起訴前の保釈、取調への弁護人の立会、取調期間の制限と全過程の録画、警察から独立した不服申立のメカニズムの導入するためあらゆる手段をとるべきであることが勧告されている。
 委員会は、最近警察拘禁は48時間を限度とし、勾留決定後の拘禁施設は警察であってはならないことを内容とする規約9条の一般意見35の草案を作成し、公表し、意見を公募している 。今回の勧告は、国際社会は、法制審議会新時代の刑事司法特別部会で示されたような裁判員制度対象事件など一部の事件の取調の録画義務づけと国選弁護の範囲の拡大などを内容とする微温的な改革では、政府の対応として不十分であると考えていることを明らかに示している。

3 死刑制度の廃止を真剣に検討せよ
 また、死刑制度については、勧告13項で、規約2条、6条、7条、9条及び14条にもとづいて、死刑を最も重大な犯罪に限るとの規約の要請を充たしていない,死刑確定者がいまだに死刑執行まで最長で40年の期間,昼夜間独居に置かれていること,死刑確定者もその家族も死刑執行の日以前に事前の告知を与えられていないこと,死刑確定者とその弁護士との面会の秘密性が保証されていないこと,死刑執行に直面する人が“心神喪失状態”にあるか否かに関する精神面の検査が独立していないこと,再審請求あるいは恩赦の請求に死刑執行を停止する効果がないこと、袴田巌の事件における場合を含め,強制された自白の結果として様々な機会に死刑が科されてきたという報告に懸念を表明した。そして、死刑の廃止を十分に考慮すること,死刑を科しうる犯罪の数を死の結果を含む最も重大な犯罪に減少させること、死刑確定者とその家族に執行の日を予め合理的な余裕をもって告知すること,原則として昼夜独居処遇を科さないこと,弁護側にすべての検察側資料への全面的なアクセスを保証し,拷問あるいは虐待により得られた自白が証拠として用いられることがないよう確保すること、死刑確定者の精神面の健康に関する独立した審査のメカニズムを確立すること、死刑の廃止を目指し,規約の第二選択議定書への加入を考慮するべきであるとする勧告を行った。
 日本政府の死刑制度死守のための頑なな対応に対する委員会の不信といらだちは高まっている。このように具体的な勧告に対して、一歩でも二歩でも、日本政府とりわけ法務省刑事局の前向きの対応が切望される。

第4 表現自由と知る権利の危機に警鐘
1 人権制約には厳しい条件を
 委員会は勧告22項において、公共の福祉を理由とする基本的人権の制限に言及し、「「公共の福祉」の概念はあいまいであり、無制限であるということ、そして、規約(2条、18条及び19条)の下で許容されるものを大きく超える制約を許容するかもしれないということへの懸念を改めて表明」し、「以前の最終所見(CCPR/C/JPN/CO/5, para.10)を想起し、第18、19条の第3段落における厳しい条件を満たさない限り、思想、良心、宗教の自由や表現の自由の権利に対するいかなる制約をも押し付けることを差し控えるように締約国に要求する。」とした。
 このような見解は、これまで委員会が公職選挙法上の公務員の政治活動の制限や戸別訪問の禁止などが表現の自由に対する過度の制限となっていることを指摘していたことなどが背景となっている。また、委員会が19条だけでなく、18条にも言及した背景には、いくつかの市民グループが、学校における日の丸の掲揚、君が代斉唱に抵抗した教員に対する懲戒処分が、思想、良心、宗教の自由を侵害するものと指摘したことについても、考慮されたものと評価できるであろう。

2 秘密保護法は情報へのアクセスの権利を定めた規約19条を満たしていない
 秘密保護法については、日本のNGOは19団体のジョイントレポートを提出した。日弁連、アムネスティもこの問題を取り上げ、ツワネ原則を起草したオープンソサエティ・ジャスティスイニシアティブも、秘密保護法の内容を検討した詳細なレポートを提出した。このような動きを受けて、 審査の第二日目にドイツのフォー委員が表現の自由について質問する中で、秘密保護法について詳細に取り上げた。
 日本政府はかなり準備していたようで、法全体の英訳を委員会に提供し、一部の答弁は英語で、今回の立法は欧米なみのものである、恣意的な運用はされない、報道目的の情報取得は処罰されないなどと流ちょうに回答した。
 しかし、委員会は、勧告23項において、規約19条にもとづいて、「近年国会で採決された特定秘密保護法が、秘密指定の対象となる情報について曖昧かつ広汎に規定されている点、指定について抽象的要件しか規定されていない点、およびジャーナリストや人権活動家の活動に対し萎縮効果をもたらしかねない重い刑罰が規定されている点について懸念する」として、「日本政府は、特定秘密保護法とその運用が、自由権規約19条に定められる厳格な基準と合致することを確保するため、必要なあらゆる措置を取るべきである。」とし、「(a)特定秘密に指定されうる情報のカテゴリーが狭く定義されていること、また、情報を収集し、受取り、発信する権利に対する制約が、適法かつ必要最小限度であって、国家安全保障に対する明確かつ特定された脅威を予防するための必要性を備えたものであること。(b)何人も、国家安全保障を害することのない真の公益に関する情報を拡散させたことによって罰せられないこと。」が具体的に勧告された。
 秘密指定には厳格な定義が必要であること、制約が必要最小限度のものでなければならないこと、ジャーナリストや人権活動家の公益のための活動が処罰からの除外されるべきことが求められた。勧告が公表されたのと同じ7月24日から秘密保護法の政令案と運用基準についてのパブコメが始まっているが、下位法令や運用基準レベルでの小手先の対応ではなく、法そのものの廃止を含めて抜本的な見直しがなされなければ国際社会の日本政府に対する言論弾圧の疑念は払拭できないであろう。

第4 ジェンダーと性暴力、性的マイノリティについて
1 ジェンダー平等について
 委員会は、勧告8項において、規約2条、3条、23条、及び26条にもとづいて「女性に離婚後6か月間の再婚を禁止し、男性と女性とで異なる婚姻最低年齢を設けている民法の差別的条項の修正を、婚姻制度や家族の基本的考え方に影響を及ぼしかねないことを理由に、締約国が継続して拒絶していること」に懸念を表明し、「家庭内及び社会における女性と男性の役割に関するステレオタイプが法の下の平等への女性の権利を侵害していることを正当化するために利用されないよう,保障すべきである。それゆえ,締約国は,これに従って民法の改正のための緊急の行動をとるべきである。」と勧告した。
 また、委員会は、勧告9項において、規約2条、3条、及び26条にもとづいて「第三次男女共同参画基本計画の採択を歓迎する一方、政治的分野での女性の参画が乏しいという点を考慮して、上記計画の効果が限定的であることを懸念する。委員会は、意思決定の地位への、部落の女性を含むマイノリティ女性の参画についての情報が不足していること遺憾に思う。女性がパートタイムの仕事の70%を占め、同等の仕事をする男性が受け取る給与の58%しか稼げていないとの報告を懸念する。委員会は、また、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠・出産による女性の解雇に対する罰則措置が欠如していること」に懸念を表明し、「第三次男女共同参画基本計画の進捗を効果的に監視及び評価をし,たとえば政党における成文でのクォータ制等,暫定的特別措置を採ることを含めて,公的分野での女性の参画を増加されるための迅速な行動をとるべきである。締約国は,部落の女性を含む,マイノリティの女性の政治的参加を評価し支援するための具体的な措置を採り,女性をフルタイムの労働者として採用することを促進し,男女の賃金格差を縮める努力を倍速させるべきである。また,締約国は,セクシュアル・ハラスメントを処罰し,妊娠・出産による不公正な取扱いを禁止し,適切なペナルティを伴う制裁をするよう,必要な立法的措置を講ずるべきである。」と勧告した。

2 ジェンダーに基づく暴力及びドメスティック・バイオレンス
 委員会は、勧告10項において、規約3条、6条、7条、及び26条にもとづいて「前回の総括所見にも関わらず、締約国が、刑法での強姦の定義の範囲の拡大、性交同意年齢を13歳を超える年齢と設定すること、及び強姦罪や他の性犯罪を非親告罪とすることについて全く進展がないことについて遺憾に思う。また、委員会は、ドメスティック・バイオレンスが依然として蔓延しており、保護命令発令までの手続きに時間がかかりすぎ、及び、処罰された加害者の人数が非常に少ないという懸念を表明する。さらに、委員会は、同性カップル及び移住女性に不充分にしか保護が提供されていないという報告」に懸念を表明し、「前回の総括所見(CCPR/C/JPN/CO/5, paras 14 and 15)に従って,締約国は,第三次男女共同参画基本計画に記載されている通り,強姦やその他の性犯罪を告訴なしで起訴でき,遅滞なく性交同意年齢を引き上げ,性犯罪の構成要件を見直すための具体的な行動をとるべきである。締約国は、同性カップル間でのものも含めて、すべてのドメスティック・バイオレンスについての報告について、徹底的に捜査がなされ、加害者が訴追され、有罪になった場合には適正な制裁で処罰されることを確実にする努力を強化すべきである。また、締約国は、緊急保護命令を与えられることによって、及び、性暴力の被害者である移住女性が在留資格を喪失させないこと等によって、暴力の被害者がふさわしい保護を利用することができるよう、保障すべきである。」と勧告した。

3 性的マイノリティ
 委員会は、勧告11項において、規約2条・26条にもとづいて、「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダー(LGBT)の人々に対する社会的ハラスメントとスティグマの付与の報告について、また自治体が運営する住宅制度から同性カップルを実質的に排除している差別的規定について、懸念を表明し」、「すべての事由(性的指向およびジェンダーアイデンティティを含む)による差別を禁止する包括的な反差別法を採択するべきであり、また差別の被害者に対して効果的・適切な救済を提供するべきである。締約国は、LGBTの人々に対するステレオタイプや偏見と闘うための意識啓発活動を強化し、LGBTの人々に対するハラスメントの申立てを調査し、その防止のために適切な措置をとるべきである。また、自治体レベルで公的に運営されている住宅サービスとの関連で同性カップルに適用されている資格基準について、残されている制限も取り除くべきである。」と勧告した。

4 慰安婦問題をめぐって
 今回の委員会では、慰安婦問題は、これまでの審査以上に大きく取り上げられた。まず、マジョディナ委員が慰安婦問題を取り上げた。河野談話の検証についても質問がなされた。これに対する政府の回答は、これまでの経緯をふまえ、日本政府としては強制連行の事実は確認できないが、当時植民地統治下にあり、「甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して」なされたと述べた。そして、今後も河野談話を継承すると述べたが、アジア女性基金を超える慰藉措置は示されず、慰安婦を「性奴隷」と呼ぶことは相応しくないと繰り返し述べた。マジョディナ委員は再度性奴隷制という発言は1926年の奴隷廃止条約の定義に基づくと発言したのに対し、政府代表はさらに、「奴隷制度の定義について、条約上の検討をした上で、この制度は性奴隷制の問題ではない。その定義に当てはまるものとは理解していない。性奴隷制度は不適切な表現である」と強く反論した。
 今回のセッションには、慰安婦は強制連行されておらず、売春婦だったと主張している日米の団体の人たち約10人が参加していた。セッションでも慰安婦が性奴隷ではないとした政府代表発言に一斉に拍手したり、慰安婦問題について発言したマジョディナ委員をセッションの終了後に取り囲んで糾弾するという事件が起きた。これに対して、ロドリー議長は本稿末尾にも紹介したように、総括発言の中で代用監獄とともに慰安婦問題を「変わらない日本」を象徴する問題として取り上げた。そして、このような行為(慰安婦を性奴隷ではないとする発言に拍手する)ことは、許されない行為であると言明した。
 このような緊迫したやりとりを背景に委員会は、勧告14項で、規約2条、7条、8条にもとづいて「委員会は、戦時中の「慰安婦」は日本軍によって「強制的に連行」されたのではないとしつつ、慰安所の女性たちの「募集、移送、管理」は、多くの場合、軍や軍のために動いた組織によって、強圧や脅迫など一般的に意思に反して行われたとの、締約国の矛盾する立場に懸念を表明する。委員会は、被害者の意思に反して行われたどのような行動も、締約国の直接的な法的責任を伴う人権侵害だと捉えるに十分であると考える。」としている。
 そして、「戦時中、「慰安婦」に対して日本軍が行った性奴隷あるいはその他の人権侵害に対するすべての申し立ては、効果的かつ独立、公平に捜査され、加害者は訴追され、有罪であるとわかれば処罰すること。」「司法へのアクセスおよび被害者とその家族への完全な被害回復措置」「利用可能なすべての証拠の公開」「教科書への十分な記述を含む、学生と一般の人々へのこの問題に関する教育」「公式な謝罪を表明することおよび締約国の責任の公的認知」「被害者を侮辱あるいは事件を否定するすべての企みへの非難」のためあらゆる措置をとるべきことが勧告された。

第5 外国人の人権と人種差別をめぐる課題
1 ヘイトスピーチの処罰を法制化せよ
 ヘイトスピーチについて、イスラエルのシャニイ委員が取り上げた。「韓国人を殺せ」などと叫ぶデモが全国で350件も報告され、広範に起きていることが委員会の場でも確認された。
 政府の答弁は特定の人や集団への名誉毀損や脅迫にあたる場合に民事責任と刑事責任を問いうる、一般的なヘイトスピーチに関しては、啓発活動に取り組んでいるという答弁に終始した。このやりとりを通じて、日本に包括的な差別禁止法制がなく、ヘイトスピーチを禁止できていないことの問題点が明確になった。
 二日目のフォローアップ質問において、シャニイ委員は表現の自由の保障は重要であるとしつつ、規約20条がバイオレンスの防止のため、人種差別の煽動をするようなヘイトスピーチは抑制しなければならないことを定めていると指摘し、民事法的な措置だけに委ねると民事提訴ができない場合もあり、国が抑制することが望ましいと述べた。
 人種差別撤廃委員会の前記の見解は、法律により処罰されうる流布や扇動の条件として、委員会は以下の文脈的要素が考慮されるべきであると考えるとして、スピーチの内容と形態、経済的、社会的および政治的風潮(委員会は、ジェノサイドに関する指標において、人種主義的ヘイトスピーチの意味および潜在的効果を評価する際に地域性が関連することを強調した)、発言者の立場または地位、スピーチの範囲、スピーチの目的を考慮すべきだとしている。
 また、締約国は、扇動罪の重要な要素として上記の考慮事項に加えて、発言者の意図、そして発言者により望まれまたは意図された行為がそのスピーチにより生じる差し迫った危険または蓋然性を考慮に入れるべきであるとされている。
 日本の状況は、放置すれば、人種差別的暴力への歯止めが利かなくなる一歩手前まで来ている。委員会は、勧告12項において、規約2条、19条、20条、27条にもとづいて「朝鮮・韓国人、中国人および部落民などのマイノリティグループの構成員への憎悪および差別を扇動している広範囲に及ぶ人種主義的言説と、これら行為に対する刑法および民法上の保護の不十分さに懸念を表明する。委員会はまた、頻繁に行われている許可を受けた極端論者のデモ、外国人の生徒・学生を含むマイノリティに対する嫌がらせと暴力、並びに民間の施設や建物での“ジャパニーズ・オンリー(日本人以外お断り)”などの看板・貼り紙の公けの表示について懸念を表明」し、「締約国は、差別、敵意あるいは暴力の扇動となる人種的優越あるいは憎悪を唱える宣伝のすべてを禁止し、そのような宣伝を広めるためのデモを禁止するべきである。締約国はまた、人種主義に対する意識高揚活動のために十分な資源を割り当て、裁判官、検事および警察官が、ヘイトクライムや人種主義的動機による犯罪を見つける力をつける訓練を確実に受けるよう取り組みを強化するべきである。締約国はまた、人種主義者の攻撃を防止し、加害者とされる者が徹底的に捜査され、起訴され、有罪判決を受けた場合は適切な制裁をもって処罰されることを保証するためにすべての必要な措置をとるべきである。」と勧告した。
 これは、明確にヘイトスピーチそのものの刑事的規制を求めた勧告である。表現の自由を保障しつつ、ヘイトスピーチに効果的な規制を行うことは難しい作業である。実は、日弁連もヘイトスピーチに対して、これを強く非難する意見を表明しているが、刑事法的規制が必要であるという意見をまとめるに至っていない。しかし、日本の現状は戦争とジェノサイドの危険が切迫しているものと認識しなければならない。政府も、われわれNGOも、この難問に取り組むべき時機が来ているのではないだろうか。

2 人身取引と技能実習制度について
 委員会は、勧告15,16項の二つの項目で、人身取引に言及した。
 まず、15項では、規約8条にもとづいて「委員会は、締約国の人身取引への取り組みを評価しつつ、人身取引がなかなか根絶されないこと、また、加害者に懲役刑が科される件数が少ないこと、強制労働が処罰される事案がないこと、被害者認定が減少していること、および被害者に提供される支援が不十分であることを懸念する。」として、日本政府は、下記の行動をすべきであるとして、「特に強制労働の被害者について、被害者認定手続きを強化し、労働基準監督官を含むすべての法執行者に対して専門訓練を提供すべきである。」「加害者を精力的に捜査及び訴追すべきであり、有罪になった場合には、人身取引行為の深刻さに見合う刑罰を科すべきである。」「通訳サービス及び損害賠償のための法的支援を含む、現行の被害者保護の措置を強化すべきである。」としている。
 
また、技能実習制度について、16項では、規約2条、8条に基づいて「外国人技能実習生に対する労働法制の保護を拡充した制度改正にもかかわらず、同制度の下で性的搾取、労働に関係する死亡、強制労働に達しうる状況に関する報告が多く存在することに、委員会は懸念とともに指摘する。」とし、「現在の制度を低賃金労働者の雇用よりも能力開発に焦点を置く新しい制度に代えることを真剣に検討すべきである(strongly consider)。他方で締約国は、事業場への立ち入り調査の回数を増やし、独立した苦情申し立て機能を設置し、労働搾取の人身売買その他労働法違反事案を効果的に調査し、起訴し、制裁を科すべきである。」とした。
 勧告の根拠とされている規約8条は奴隷制と強制労働を禁止している条項である。最低賃金以下で働き、多くの実習生が健康を害し、自殺や過労死を引きおこしている状況を国際社会はこのような深刻な問題と捉えている。政府は実習生制度を、人権侵害も生じないよう配慮し不適切な団体も排除しつつむしろ拡大するとしている。このような政策は抜本的に見直さなければならない。この項目も一年内のフォローアップ事項に選ばれた。自由権委員会の厳しい視線に応えなければならない。

3 難民・入管収容など
 勧告19項では、規約2条,7条,9条,13条にもとづいて「委員会は、2010年に一人の死を生じさせた退去強制手続き中の虐待ケースについて懸念を表明する。委員会は、また出入国管理難民認定法の改正にもかかわらず、ノンルフールマンの原則が実務において十分に実施されていない点について懸念を表明する。委員会は、難民についての否定的な決定に対する停止の効果を伴った独立した異議手続の制度の欠如と正当な理由もなくかつ収容決定に対する独立した再審査もないまま行政収容が長期化されていることにさらなる懸念を表明する。」としたうえで、「退去強制の過程において移民が虐待にさらされないようにするためのあらゆる適切な措置を講じること」「国際的な保護を求めている全ての人が、公正な決定手続きへのアクセスと危険が待ち受けている地域へ送還されないよう保護を受けられること、また否定的な決定に対し執行停止の効果を伴った独立した異議手続きへのアクセス持つことを保障すること」「収容が最短の適切な期間となりかつ行政収容に対する既存の代替措置が十分に考慮された場合にのみ行われることを確保する手段を取ること、そして移民が自らの収容についての合法性について審査する裁判所に対し訴えを提起できることを保障する手続きを取ること」が勧告された。

4 ムスリムに対する監視について
 今回の審査では、ムスリムに対する監視の問題が、ムスリム弁護団によって新たに提起された。委員会は、勧告20項において、規約2条、17条、26条にもとづいて、「警察職員によるムスリムに対する広範な監視活動が報告されていること」に、懸念を表明し、「警察職員に対し、異文化の理解、及び、警察職員によるムスリムへの広範な監視活動を含む人種的プロファイリングが許容されないことについて、トレーニングを実施すべきである。」「権力が濫用された場合には、影響を受けた人々に対する効果的な救済手段へのアクセスを確保すべきである。」と勧告した。
 この事件は、公安警察による市民に対する監視活動の氷山の一角が警察情報の漏えいというかたちで明らかになった事件であるが、このような情報の漏えいは、秘密保護法の下ではテロ対策を理由に、厳しく秘匿されることとなるだろう。国内でも、この問題は国家賠償訴訟が提起されているが、裁判所は漏えいについては責任を認めたが、包括的な情報収集そのものの違法性を認めていない。今回の勧告は、包括的な情報収集そのものが規約と両立しないことを指摘したもので、画期的な勧告と評価できる。

第6 マイノリティの人権とその保護
1 精神病院における非自発的入院について
 委員会は、勧告17項において、規約7条と9条にもとづいて「非常に多くの精神障害者が非常に長期間、そして自らの権利侵害に異議申し立てする有効な法的な救済手段なしに非自発的入院を強いられていること、また代替サービスの欠如により入院が不要に長期化していると報告されていること」に懸念を表明した。そして、「精神障害者に対して地域に基盤のある代替のサービスを増やすこと」「強制入院は、最後の手段としてのみ必要最小限の期間、本人の受ける害から本人を守りあるいは他害を避けることを目的として必要で均衡が取れる時にのみ行われることを確保すること」「精神科の施設に対して、虐待を有効に捜査し罰し、被害者またはその家族に賠償を提供することを目的として、有効で独立した監視と報告体制を確保すること」が勧告された。精神障害者に対して社会内における治療と処遇を原則とする考え方が世界中に広まっている。

2 子どもに対する体罰
 委員会の質疑においても、日本の学校や家庭において、体罰が広範に用いられており、また世論調査などでも体罰を容認する考えが存在していることが指摘された。委員会は、勧告25項において、規約7条、24条にもとづいて、「体罰が学校では禁止されているものの、これが広がり、社会的にも受け容れられていると認められる」として、「適切な場合は立法手段を通じて、あらゆる場面で体罰をやめさせるため実務的な措置をとるべきである。体罰に代わる非暴力的な懲戒手段を導入することが望まれる。そして、体罰のもたらす心身を傷つける効果について、情報を提供するパブリックキャンペーンを実施するべきである。」と勧告した。

3 先住民
 委員会は勧告26項において、規約27条に基づいて「アイヌ民族を先住民族として認めたことを歓迎する一方で、委員会は、琉球・沖縄の認識の欠如並びにこれら集団の伝統的土地と資源の権利あるいはその子どもたちが独自の言語で教育を受ける権利の認識の欠如に関する懸念を繰り返す。」とし、「締約国は、法律を改正して、アイヌおよび琉球・沖縄のコミュニティの伝統的土地と自然資源への権利を全面的に保障するようさらなる措置をとり、これら人びとに影響を及ぼす政策およびその子どもたちが独自の言語で教育をうけることを可能な範囲で促進する政策に、自由に事前にそして情報を得た上で参加できる権利の尊重を保証するべきである。」とした。

4 福島原発事故被害者
 スイスのケリン委員が、福島原発後の状況に懸念があるとして、特別報告者(アナンダ・グローバー氏)のレポートを取り上げ、国際基準(年間1ミリシーベルト)の20倍の線量地域に帰還政策がとられていること、帰還した者に月次の補償がなされるのか、避難している人々にどの程度の情報が提供されているのかなどの質問がなされた。委員会は、勧告24項では、規約6条、12条、19条にもとづいて、「福島に許容する公衆の被ばく限度が高いこと、数か所の避難区域が解除され、人々が放射能で高度に汚染された地域に帰還するしか選択肢がない状況に置かれていること」に懸念が表明された。そして、「福島原発事故の影響を受けた人々の生命を保護するために必要なすべての措置を講ずるべきであり、放射線のレベルが住民にリスクをもたらさないといえる場合でない限り、避難区域の指定を解除すべきでない。」「放射線量のレベルをモニタリングし、こうした情報を時機にかなった方法で、原発事故の影響を受けている人々に提供すべきである。」と勧告した。
 
委員会は、福島原発事故の被害者が置かれた状況が生命の権利を保障した規約6条、規約12条、市民の知る権利を保障した規約19条が十分保障されていない事態であると見なしているのである。
 2012年に子ども被災者支援法が制定され、低レベル放射線被曝の健康影響が明らかでないという認識に立って、滞在と避難、帰還の選択肢を等しく支援することが法定されたにもかかわらず、政府は明らかに帰還優先の政策を強行してきた。このような政府の方針が生命・健康に対する権利と知る権利の侵害として断罪されたのである。政府は直ちに帰還促進政策を見直さなければならない。

第7 審査を踏まえた政府と私たちの課題
1 かみしめるべきロドリー議長の最終発言
 ナイジェルロドリー議長は会議の結びの言葉の中で、触れるべき二つの問題があるとして、日本政府が何度も同じプロセスを繰り返しているという点を指摘した。
 代用監獄制度に関して、政府はリソースの不足を制度を改めない理由として述べたが、議長は、「人権の尊重がリソース次第という状況は日本のような先進国ではあってはならないことであると指摘した。こういう制度が維持されている理由は、起訴側が自白を求めたいと考えているためであるとしか考えられない。このような状況は明らかに規約に矛盾している。日本政府は、委員会がこれまでよりも強い形で勧告を出しても驚かれることはないでしょう。日本政府は明らかに国際コミュニティに抵抗しているようにみえます。」と述べた。繰り返されているもう一つの重要問題として慰安婦の問題が指摘された。議長は、「意見の対立があるようであるが私には理解ができない。私の頭が悪いのだろうか。「強制連行されたのではない。」といいつつ、「意図に反した」という認識が示されている。これは、理解しにくい。性奴隷である疑念があるなら、日本政府はなぜこの問題を国際的な審査によって明確化しないのか。」と厳しく指摘した。

2 次の政府報告書提出期限は2018 年7 月31 日
 委員会は、勧告27項において、締約国の第6 回定期報告書と委員会の総括所見、そして委員会のリストオブイシューズに対して政府が行った書面回答などが、一般市民に対し、また、司法、立法、行政当局に対しても公表され、かつ、広く普及されるよう求めた。
 また、委員会は、勧告29項において、日本の第6 回定期報告書の提出日を、2018 年7 月31 日と定め、この勧告に対してとった措置を、市民社会との共同作業を経て提出するように求めた。

3 フォローアップ条項に選ばれた死刑,慰安婦,技能実習生,代用監獄
 委員会は、28項で、1年以内のフォローアップ事項として、死刑(13),慰安婦(14),技能実習生(16),代用監獄(18)の4テーマを取り上げ、委員会手続規則71 パラグラフ5 に従い、この4つの勧告について、1 年以内にフォローアップ情報を提供するよう求めた。これら4つの項目は、委員会がとりわけ重視している関心のあらわれである。とりわけ政府の集中した誠実な対応が求められる。

4 政府との建設的な対話を深め、困難な状況でも前進を目指そう
 今回の勧告は、これまでの5回の審査に基づく勧告と比べて、極めて厳しいトーンと内容のものとなった。その原因は明確である。世界中の国々が、人権の完全実施のために前向きの努力を続けている中で、日本では、人権とさらには民主主義そのものを危機に陥れるようなできごとが続いている。いわば、改善の方向が見えないだけでなく、むしろ後退している印象を与えたのだと推察する。
 とはいえ、私たち日本のNGOは政府と協力して、この勧告を一つずつ実現していく責務がある。私が歩みを止めず、大きな流れの中で捉えれば、これらの勧告はいずれ実現できる。しかし、民主主義的な法制度を傷つけたり、日本政府が戦争に突き進むようなことになれば、その回復には長い時間がかかるかもしれない。
 そのような破局的な事態を避けるためにも、この勧告の中の秘密保護法を含む表現の自由とヘイトスピーチを含む人種差別禁止などの勧告を重く受け止め、この勧告を速やかに実現する必要があるだろう。
 総括所見を日本国内にひろげ、政府と真剣に対話し、日本を包む人権と民主主義の危機を克服していくための梃子として活用したいと思う。



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by himituho | 2014-07-29 15:39 | 報告
2014年 07月 18日

【報告】7.15-16 人権委員会日本政府報告書審査を終えて‏

国連・自由権規約の審査において、秘密保護法の問題を審査してもらうため、
秘密保護法対策弁護団の2名の弁護士がジュネーブに行ってきました。
来週には勧告が出される予定とのことですので、注目して下さい。



以下、弁護団メンバーの海渡雄一弁護士の報告です。
***************************

日本の民主主義と人権の状況を憂えるすべての皆さんへ
秘密保護法の廃止を求めて闘いを続けている皆さんへ

                          海渡 雄一

規約人権委員会 日本政府第6回審査を終えて

                海渡雄一
                (弁護士 日弁連自由権規約WG座長)

はじめに
 2014年7月15日、16日の両日にわたって、自由権規約委員会による第
6回日本政府報告書審査がジュネーブの国連欧州本部パレデナシオンで行われた。
 私は、1998年第4回、2008年第5回に引き続いて3回目の審査立会と
なったが、これまでにもまして、日本の人権状況に照らして白熱した審議となっ
た。
 審査を受けた日本政府に対する勧告=総括所見は7月24日に公表される予定
となっている。
 今回の審査については、日弁連としても市民向けのパンフレット、審査の全貌
を記録した単行本などの作成を計画している。以下に、審査の終了を受けた一参
加者の見聞と感想を記しておきたい(この文章で述べたことは、特に断らない限
り、私の個人の見解であり、日弁連の見解を代表するものではない)。

第1 概観
1 新たにとりあげられたテーマ
 今回の審査では、これまで委員会が継続して取り上げてきたテーマだけでなく
、いくつかの重要なテーマが、あらたに審査で取り上げられた。
 その代表的なものが、多くのNGOが強く取り上げることをもとめた秘密保護
法とヘイトスピーチの問題であった。
 それ以外にも朝鮮高校が無償化の対象から外された問題、ムスリムの人々に対
する包括的な情報収集について、政府が停止せず、謝罪もしていないこと、福島
第1原発の被害者に対して正確な情報が提供されていないことなども取り上げら
れた。

2 国際人権保障システム 議定書と国内人権機関
 他方で、委員会が一貫して取り上げてきた、第1選択議定書の批准、条約の国
内法的効力、国内人権機関の設立など国際人権保障システムについても、フリン
ターマン委員からかなり詳細な質問がなされ、フォローアップもなされた。
 日本政府は、民主党政権の下で、第1選択議定書の批准、国内人権機関の設立
がかなり具体化していたにもかかわらず、安倍政権となってからこのような動き
が止まっていることについて明解な説明ができず、委員会のフラストレーション
を高めたように見受けられた。

3 刑事司法と少数者の差別
 刑事司法、死刑制度、死刑確定者の処遇、難民、入管収容、技能実習生制度な
どの外国人に対する人権問題なども、前回と同様に取り上げられた。
 女性、アイヌ、琉球などのエスニックマイノリティ、LGBT・性的マイノリ
ティに対する差別、慰安婦問題についての政府の責任なども引き続き取り上げら
れた。

第2 袴田事件を契機に大きく取り上げられた代用監獄、取調、死刑制度、死刑
確定者の処遇
1 メインイシューに
 今回の審査の大きな特徴は、袴田事件を題材に代用監獄、取調、死刑制度、死
刑確定者の処遇などが大きなメインイシューになったことである。とれわけ3人
の委員が袴田ケースに具体的に言及して発言したことが大きな特徴であった。

2 代用監獄の廃止の意図はあるのか(マジョディナ委員)、
 1988年から勧告している。代用監獄の廃止について、なぜ、代用監獄制度
の使用が停止されないのか。世界の他の地域では全く許されない制度である。C
ATでも取り上げられている。30年問題が提起されているのに変わらない。予
算の制約があると政府はいわれるが、代用監獄の問題における自白の強制が多く
のケースで発生している。最近では、PC遠隔操作事件で明確に無罪の人が自白
させられた。袴田さんが代用監獄で長期間の取調の結果自白させられた時とどう
変わったのか。長期の取調による自白の強要がなされていることに変わりはない。
日本政府は、勾留施設を増やし、人権違反を防ぐべきではないか。代用監獄を廃
止する意図はあるのか。
勾留の削減はあるのか。

3 死刑制度の廃止を、それまでの間も改善を(ニューマン委員)
アメリカのニューマン委員は死刑制度の死刑確定者の処遇について包括的な質問
を行った。彼も袴田氏が40年以上も拘禁されたことを取り上げた。
 ニューマン氏が取り上げたことは広範にわたるが、
○第2選択議定書を批准し、世界に範を示して欲しい。
○恩赦が1975年以来ないこと。規約の6条のパラ4に反している。恩赦の申
請中の処刑はあるのか。
○19の犯罪のリストに爆発物犯罪は入っているのか。
○死刑囚は長期に独房収容され、死刑執行は数時間前にしか知らされない。家族
にも知らされない。政府は「心の安寧を得るため。」というが、委員会は非人道
的と言ってきた。
○死刑判決を見直すために必ず再審査の機会を与えるべきではないか。
○裁判員制度の下で、全会一致でなくても死刑が可能となっている。再審査が必
要である。
○最高裁判決によって、死刑確定者との面会への弁護士の立会に一部の変化をも
たらしたというが、どのような変化か。
○心神喪失の者の処刑を避けるため、独立の審査がない。
○高齢者の処刑が続いているようだ。
○法務大臣による検討会は、まだ得られていないのか。

4 なぜ、取調に弁護人は立ち会えないのか、より包括的な取調可視化を(シャ
ニイ委員)
イスラエルのシャニイ委員は取調の問題を包括的に取り上げた。


○裁判員対象の3パーセントが対象になると言うNGOの見解は正しいのか。
○パイロットケースでは、どういうものが試行から外されているのか。残りの事
案はなぜしないのか。
○対象事件の選び方はどうなっているのか。
○弁護士はもともとの録画を見ることができるのか。
○身体的な暴力や言葉で脅すようなことはあるのか。
○手錠をしたまま、椅子に縛られて取り調べを受けているというのは本当か。手
錠をするのは一般的なのか。
○弁護士はなぜ立ち会えないのか。
○99パーセント以上が有罪判決というが、このような刑事司法制度は正しいと
見られているのか。
○事前の検察官の選別の判断によって有罪率高いという説明であるが、このよう
な高い有罪率は警告的な情報ではないか。裁判官は検察官の起訴を斥けることを
おそれているのではないか。
○自白に依存することの危険性は学術的な調査によって示されている。プレッシ
ャーがあると25-30パーセントの被疑者が自白を強要されていると言う報告
がなされている。
○袴田ケースでは再審が開始されたという。そのことは、高く評価されるが、そ
のような人が他にもいるのではないか。

5 日本政府が死刑制度を維持する理由を聞きたい(レスキア委員)
アルゼンチンのレスキア委員は、フォローアップ質問の中で、死刑について重ね
て質問した。彼は、ニューマン委員の質問は繰り返さないとしつつ、「国からの
適切な対応がなされてない。死刑廃止に向けて、刑事司法ポリシーが示されてい
ない。日本政府に死刑を維持する理由について聞きたい。対象犯罪に国に対する
犯罪が含められている。19もの罪が上げられている。内乱が含められている。
このような制度に合理性があるのか。」
「刑事司法は市民の気持ちに沿うべきと言うが、政府としての方向が示されるべ
きだ。死刑確定者の心の安静をはかるというが、それは国が決めるものではない。
事前に通知を受けることで死刑確定者が、状況を把握できるようにするべきだ。


6 まとめ 
最後には、ロドリー議長が日弁連の代用監獄と取調に関するレポートの一部を読
み上げ、政府に事実と違う点があれば、具体的に指摘するようにとの質問もあっ
た。
多くの委員は報道を通じて袴田事件の内容を理解していたようだったが、日弁連
が映画BOX袴田事件をジュネーブプレスセンターで上映し、この事件の具体的
な内容とこの事件から浮かび上がる日本の刑事司法システムと死刑制度の問題点
について記載したチラシを配布しながら、多くの委員と対話したことが、このよ
うな成果を生み出したと思う。

第3 秘密保護法について厳しい質問
1 事前の活動
すでにNHKが「国連委員会 特定秘密保護法に意見」として、流している。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140717/k10013071791000.html
7月17日 0時31分
 秘密保護法については、事前のLOIには入っていなかった。したがって、こ
れを審査で取り上げてもらうことには、最初から困難が予想された。
 NGOは、事前によく話し合い、委員会にレポートを提出しているNGOだけ
でなく、他のNGOにも呼びかけ、19団体のジョイントレポートを実現した。
 他に、日弁連、アムネスティもこの問題を取り上げ、ツワネ原則を起草したオ
ープンソサエティ・ジャスティスイニシアティブも、秘密保護法の内容を検討し
た詳細なレポートを作成してくれた。
 公式ブリーフィングでは19のNGOを代表して小川隆太郎弁護士が秘密保護
法の問題点について発言した。このブリーフィングでは、フリンターマン委員か
ら、法律は既に適用されているのかという質問があった。翌日には法は施行前で
あり、適用例はないが、日本では過去に西山記者事件があり、この法律によるジ
ャーナリスト、市民活動家、内部告発者に加えられているリスクは現実のもので
あることを説明するペーパーを19NGOのステートメントとして提出した。

2 フォー委員の包括的質問
 審査の第二日目にドイツのフォー委員が表現の自由について質問する中で、秘
密保護法について取り上げた。

(秘密保護法について質問するフォー委員)
 フォー委員の質問を少し詳しく紹介しよう。
 「表現の自由についての権利制約は、非常に狭いものに限定しなければならな
い。公共の福祉による制約は広くなっている。規約で認められたに限定していく
ことについてそのステップを明らかにして欲しい。これまで、この問題について
の司法審査が限られているようにみえる。
 ここで最近の例をとりあげる。去年のリストオブイシューの採択のあとに生じ
たことで、かなりの懸念を生んでいる秘密保護法に関してである。この問題につ
いて委員会の一般的意見34において、国家の保有する情報へのアクセスを拒否
するときには相当な理由が必要だとされ、不服申立の機会を慎重に締約国は確保
するとされている。安全保障に関する情報も厳しい要件を満たした情報を保護す
べきだ。
 日本政府が法律の全文を翻訳して下さったので、その翻訳を読んだが、この法
律は、翻訳を読んでも理解できない。アネックスの表の目的とされる防衛、外交、
テロの防止、特定有害活動の分類基準が明らかでない。10年の刑は重すぎる。
24条は、メディアに対して萎縮効果をもたらすのではないか。22条がニュー
スの報道の自由にどのような保障をもたらすのかも明らかでない。日本としては、
規約19条に即してセーフガード措置を用意しているのか、人権活動家や環境活
動家が逮捕されないようにどう確保するのか。」

3 日本政府代表団による回答
 これに対して、日本政府代表団(内閣府)は「日本政府は表現の自由を最大限
保障している。情報公開制度は、特定秘密保護法にも適用される。規約19条は、
国の安全、公共の秩序に基づく一定の制約を認めている。秘密保護法は、19条
に反するものではない。
 秘匿性の高い情報をを保護する制度、その指定と解除に関する制度は、米国や
英国で整備されている。秘密の定義や指定の要件は、法的に明確されている。
 附属表については、「賢人会」(情報保全諮問会議)により詳細な基準が審議
されていて、閣議で決められることとなっている。特に秘密性が高い、限定的で
具体的な情報に限って秘密に指定されるのであり、行政機関の恣意的な運用はな
されない。
 法24条により、自己の不正の利益を図る場合にのみ取り締まりの対象となる
とされており、報道目的の取得は処罰されない。このような規制は国民の知る権
利を不当に制限するものではなく、自由権規約19条と整合的である。

4 ロドリー議長による立法事実に関する質問
 このやりとりを受け、委員会の最後のロドリー議長による質問の中でも、「特
定秘密保護法について、懸念が表明されている。この法律はどのように既存の法
律を変えるのか。いま、なぜ、このような法律が必要となったのか説明して欲し
い。」という根本的な立法事実の有無に関する鋭い質問がなされた。
 この点については、日本政府は審査終了後48時間以内に書面で回答すること
ができる。
 このように、日本の市民社会が共同で取り組んだ秘密保護法を国際人権法の視
座から検討してもらうというミッションは成功したようである。どのような具体
的な勧告がなされるかを見守りたい。

第4 ヘイトスピーチ
1 審査でのやりとり
 ヘイトスピーチについて、イスラエルのシャニイ委員が取り上げた。
このようなデモが350件も報告され、広範に起きていることが確認された。そ
して名誉毀損の場合以外は取り締まれないのか、他の刑事的規制はないのか質問
された。このように、ヘイトスピーチについて具体的な防止策がとられていない
ことが大きく取り上げられた。
これに対して、政府代表団は、極めて深刻なヘイトスピーチが起きているにもか
かわらず、政府の答弁は名誉毀損や脅迫にあたる場合に民事責任と刑事責任を問
いうる、啓発活動に取り組んでいるという答弁に終始した。
 このやりとりを通じて、日本に包括的な差別禁止法制がないことの問題点も明
確になった。

2 求められる限定された刑事法的規制
 日本から出席していたNGOはJapan NGO Network 2014 ICCPRとして、ヘイト
スピーチに関して、人種差別撤廃委員会の一般的見解35 para15,16にもとづ
いて、一定の行為の犯罪化を求める勧告を求めた。
 この点について、二日目のフォローアップ質問において、シャニイ委員は表現
の自由の保障は重要であるとしつつ、規約20条がバイオレンスの防止のため、
人種差別の煽動をするヘイトスピーチ抑制しなければならないことを定めている
ことを指摘し、民事法的な措置だけに委ねることは問題であり、民事提訴ができ
ない場合もあり、国が抑制することが望ましいと述べた。
 人種差別撤廃委員会の前記の見解は、法律により処罰されうる流布や扇動の条
件として、委員会は以下の文脈的要素が考慮されるべきであると考える。として、
スピーチの内容と形態、経済的、社会的および政治的風潮(委員会は、ジェノサ
イドに関する指標において、人種主義的ヘイトスピーチの意味および潜在的効果
を評価する際に地域性が関連することを強調した)、発言者の立場または地位、
スピーチの範囲、スピーチの目的を考慮すべきだとしている。
 また、締約国は、扇動罪の重要な要素として上記の考慮事項に加えて、発言者
の意図、そして発言者により望まれまたは意図された行為がそのスピーチにより
生じる差し迫った危険または蓋然性を考慮に入れるべきであるとされている。
 日本の状況は、放置すれば、人種差別的暴力への歯止めが利かなくなる一歩手
前まで来ている。委員会がどのような具体的な勧告を行うか、ここでも大いに注
目される。

第5 慰安婦問題をめぐる委員会内外のできごと
1 異常な事態
 今回のセッションには、慰安婦は強制連行されておらず、売春婦だったと主張
している日米の団体の人たち約10人が来て、NGOのブリーフィングに入れる
かどうかでもめたり、セッションで慰安婦が性奴隷ではないとした政府代表発言
に一斉に拍手したり、慰安婦問題について発言したマジョディナ委員をセッショ
ンの終了後に取り囲んでつるし上げたりという事件が起きた。

2 委員会でのやりとり
 委員会では、マジョディナ委員が慰安婦問題を取り上げた。河野談話の検証に
ついても質問がなされた。
 これに対する政府の回答は、これまでの経緯をふまえ、日本政府としては強制
連行の事実は確認できないが、当時植民地統治下にあり、「甘言、強圧による等、
総じて本人たちの意思に反して」なされたと述べた。そして、今後も河野談話を
継承すると述べたが、アジア女性基金を超える慰藉措置は示されず、慰安婦を
「性奴隷」と呼ぶことは相応しくないとも述べた。
これに対して、マジョディナ委員は最後のフォローアップ発言の中で、性奴隷制
という発言は1926年の奴隷廃止条約の定義に基づくと発言したのに対し、政
府代表はさらに、「奴隷制度の定義について、条約上の検討をした上で、この制
度は性奴隷制の問題ではない。その定義に当てはまるものとは理解していない。
性奴隷制度は不適切な表現である」と強く反論した。
 この時に、慰安婦の存在を否定するグループの人たちが一斉に拍手をしたので
ある。 これに対して、ロドリー議長はこのような行為(慰安婦を性奴隷ではな
いとする発言に拍手する)ことは、許されない行為であると言明した。

3 まとめ
 今回のセッションでは、慰安婦とヘイトスピーチ、秘密保護法が大きく取り上
げられたが、このような慰安婦否定派の人たちが審査に来たことにより、日本の
民主主義と人権状況の悪化が委員の皆さんにも肌身で感じられたのではないかと
思う。それが勧告にどのように反映されるかも興味深い注目点である。

第6 福島原発事故後の知る権利も議題に
1 委員の質問
スイスのケリン委員は、委員の一巡目の最後の質問で福島原発後の状況に懸念が
あるとし、特別報告者(アナンダ・グローバー氏)も提起しているとして、国際
基準(年間1ミリシーベルト)の20倍の線量地域に帰還政策がとられているこ
と、福島における災害関連死亡(1704人)の中に健康被害の者が含まれてい
るのか、帰還した者に月次の補償がなされるのか、避難している人々にどの程度
の情報が提供されているのか。情報へのアクセスに問題はないのかなどの質問が
なされた。

2 政府の回答
これに対して、政府代表団は、福島の放射線影響については、わかりやすくリス
クコミュニケーションをしている。科学的知見をまとめた基礎的な情報のパンフ
レットを作成し、 責任を持って長期的リスクについて、正しい情報を住民と労
働者に提供していると説明した。

第7 審査を総括したロドリー議長総括発言
1 感動的だった総括発言
審査の最後にロドリー議長が次のように発言した。これは、委員会全体の偽りの
ない日本政府に対する気持ちを表していると考えられる。


(総括発言を述べたロドリー議長)
********************************
二つの問題が指摘された。
代表団が察知されているように、繰り返しのプロセスがあるということである。
政府り説明には、繰り返しが多い。このようなプロセスは資源の有効活用といえ
ない。
人権の尊重がリソース次第という状況は日本のような先進国ではあってはならな
いことである。
代用監獄の制度を取り上げる。代用監獄は暫定的なものとして、1908年に当
時「資源がない」という理由で、捜査の対象となる被疑者を警察に拘禁してきた。
これに加えて、今回政府は「家族や弁護士に利便だ」という説明を付け加えられ
た。便宜だというが、全く反する意見を持っている団体もある。このような説明
は無意味に聞こえる。こういう制度が維持されている理由は、起訴側が自白を求
めたいと考えているためであるとしか考えられない。このような状況は明らかに
規約に矛盾している。
可視化については、改善が進むでしょう。でも、もっと多くの人と金を投入する
べきである。取調に弁護士の立会は認められていない。
日本政府は、委員会がこれまでよりも強い形で勧告を出しても驚かれることはな
いでしょう。日本政府は明らかに国際コミュニティに抵抗しているようにみえま
す。
もうひとつの繰り返しは慰安婦の問題です。意見の対立があるようである。私に
は理解ができない。頭が悪いのだろうか。「強制連行されたのではない。」とい
いつつ、「意図に反した」という認識が示されている。これは、理解しにくい。
性奴隷である疑念があるなら、意図に反して行われたのなら、河野談話でも謝罪
がなされたとしても、日本政府はなぜこの問題を国際的な審査によって明確化し
ないのか。政府のこのような言葉を受け容れるしかないのか。
 政府には48時間以内に反論できる機会がある。
 このセッションでなされた拍手は適切なものではない。とりわけ人権侵害の被
害者を辱めるような拍手は適切でない。
日本はこの委員会にとって重要な国である。自由を認めているである。この場に
市民社会はたくさん参加している。でも、人権にマイナスな影響を与えるような
深刻な問題がないわけではない。次のラウンドでは、こういうことが続かないよ
うにしたい。
 ぜひ、日本政府から、追加情報を頂きたい。最終見解を出し、フォローアップ
をしていきたい。
   *********************************

2 総括所見の実現は私たちの責務
総括所見について、期待が持てる審査であった。
いろいろな事件があり、また、リストオブイシューになかった問題で取り上げら
れた問題があった一方で、日の丸君が代問題のように、リストオブイシューに入っ
ていながら、誰も質問しないでイシューから落ちてしまった問題もある。このよ
うに、明暗はあったが、最後のナイジェル議長の発言を聞く限り、委員会はかな
り踏み込んだ勧告をしてくるにちがいない。この勧告を受け止め、日本国内にひ
ろげ、政府と真剣に対話し、日本を包む人権と民主主義の危機を克服したいと思
う。

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by himituho | 2014-07-18 10:00 | 報告
2014年 06月 25日

【報告】情報監視審査会設置に関する国会法改正法の成立について

以下、弁護団メンバーの海渡雄一弁護士からの報告です。


情報監視審査会設置に関する国会法改正法の成立について

―秘密保護法体制に絡め取られていく立法府―

海渡 雄一(弁護士)

2014年6月24日


.. 7

1. 国会は二度死んだ

国会に「特定秘密」の追認機関となる「情報監視審査会」を作る国会法改定案は、619日に参議院議院運営委員会(議運)で審議入り(3時間)したばかりにも関わらず、20日の午前2時間、午後2時間という計7時間のみの審議を経て、議運で1555分頃、参考人質疑すら省いて強行採決された。民主、共産の他、衆院で賛成した維新、みんな、結いも慎重審議を求めて反対した。そして、夕方に始まった本会議で、2130分に賛成146、反対78(民主、共産、社民、生活他が反対、みんなは賛成、維新、結いは棄権)で可決成立した。

 また、国会法改定案に関連する「参議院規則の一部を改正する規則案」、「参議院情報監視審査会規程案」の両案も、2140分頃、賛成134、反対91で可決成立した。 

この国会法改正と規則案・規程案の拙速きわまりない審議と成立は、議会制民主主義の暗い未来を暗示している。当日の院内集会と記者会見でも申し上げたが、国会審議を傍らで見ていて、620日は昨年12月6日の秘密保護法成立に引き続いて、「国会が行政と秘密の前にひれ伏した日」となったと感じた。この屈辱を決して忘れまい。

6月16日には、社民党・共産党と無所属議員二名によって秘密保護法廃止法案が参議院に提案された。国会閉会時に廃案になったとはいえ、市民の悪法廃止の声を議会の内部に届けることができたことを歓迎したい。次の国会時には、民主党などにも呼びかけ、より広範な勢力によって秘密保護法廃止の声が高まるように、努力を続けたい。

2 国会による秘密指定・解除の監視というコンセプトについて

特定秘密保護法附則10条は、「国会に対する特定秘密の提供については、政府は、国会が国権の最高機関であり各議院がその会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定める権能を有することを定める日本国憲法及びこれに基づく国会法等の精神にのっとり、この法律を運用するものとし、特定秘密の提供を受ける国会におけるその保護に関する方策については、国会において、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」と定めていた。私は、秘密保護法はいったん白紙に戻して、現在の国際水準に即して情報公開制度と公文書管理制度全体を作り直すべきであると考えている。しかし、秘密保護法の廃止がいますぐ実現することが難しいのであれば、国会に秘密保護に関する監視機関を作ることには意味があると考える。

アメリカでは上下両院にそれぞれ情報特別委員会があり、中央情報局(CIA)をはじめとする政府機関と軍の情報活動などを監視している。ドイツでも議会監督委員会が連邦情報局など情報機関に対して情報開示を求めたり、職員の事情聴取をしたりする権限を持っている。しかし、制度の作り方によっては、国会は行政機関の統制のもとに置かれ、最高機関性を奪われてしまう危険性すらある。

欧米で国会に設置されているのは、情報機関の活動と予算に関する監督機関が主であり、秘密の指定・解除に関する監視機関が設けられている例は見出せない。それは、国会という機関の中に秘密の指定と解除に関する監視機関を作ることが非常に難しいからだろう。

まず、行政機関内部の独立性の確保できる場所に、人員的、財政的な独立性の確保された第三者機関を作るべきだ。そして、このような機関の設置において最も重要なことは秘密を指定する機関に所属していた経歴の持ち主を排除することはできないとしても、少なくとも、第三者機関から、もう一度秘密指定機関に戻るような人事はあってはならないと言うことである。

3.アメリカの事例から学ぶべきこと

 特定秘密保護法が施行された後に,実際に国会の第三者監視機関が直面する事態を想定する際の参考として,以下のようなアメリカの事例を紹介する。

(1) 政府による違法な盗聴プロフラムの実施

NSAの監察官が9.11後にブッシュ政権がいかに違法な盗聴を行っていたかを詳しく示すレポートによると,政府は,コードネーム「ステラウィンド」という盗聴プログラムを実行し,何百万人ものアメリカ人の交信内容やメタデータを許可なく集めていた[1]

(2)裁判所による違法な盗聴プログラム実施への協力

NSAの内部資料によれば,あるプロバイダーが訴訟リスクを恐れて,NSAに対し電話メタデータの提供を頼まないでほしい,裁判所命令によって提出させるように強制されることを望んできた。そこで,司法省とNSAは,国内での電話メタデータ収集の法的根拠として,第215条(いわゆる「ビジネス記録条項」)を作りだした。そして,2006年5月24日,ステラウィンドの概要を知っている議会内のFISA裁判所のマイケル・ハワード裁判官は,「提出が求められている『有形物』が,FBIの行う正式なテロ捜査と関連していると考える足りる合理的根拠がある」と内々に決定を下し,通信会社に対して,政府へ大量の通話記録を開示するように求める裁判所命令を出した[2]

 このように,アメリカのように情報先進国と言われる国であっても,その行政府が市民のプライバシーを侵害する違法な情報収集を行ったり,議会内の秘密裁判所がその違法な情報収集を阻止するどころか、これを追認するような判断を下すことがありうる。日本でも同様の事態が起こらないという保障はどこにもない。

 制度的な安全措置を作らなければ,国会が情報機関に巻き込まれてしまうという事態は避けがたい。国会すら監視機関として機能しないのであれば,スノーデンのような英雄的な公益通報者の登場を待つ他にないこととなってしまう。

4.独立した監視機関とは

秘密保護法案の審議の過程で、にわかに第三者機関の必要性がクローズアップされた。独裁国家ではなく、現代民主主義国家において、政府が秘密指定の基準を作成し、秘密を適切に指定し、指定の解除を適切に行い、秘密文書を確実に保管し、最終的に市民に公開するための法制度を構想するならば、秘密の指定権限を持つ行政機関から完全に「独立した監視機関」がどうしても必要である。

それでは、第三者機関が政府から真に独立機関を作るためには、どのような点が留意されなければならないのだろうか。安全保障と市民の知る権利の調整のために策定された立法者のためのガイドラインであるツワネ原則は第5章において、監視機関のあり方について、詳細に規定している。

(1)原則31

まず、原則31は、監視機関は、監視対象機関からは、組織・運営・財政の面で独立しているべきであるとしている。

(2)原則32

原則32は、独立監視機関が、その責務を遂行するために必要な全ての情報にアクセスできることが、法によって保証されるべきである。情報の機密性のレベルに関わらず、合理的な安全保障上のアクセス条件を満たしていれば、アクセスに制限を設けるべきではない。

(3)原則33

原則33は、独立監視機関は、責務を遂行する上で必要とみなされるあらゆる関連情報にアクセスし解釈できるために十分な法的権限を有するべきである。また独立監視機関は、人物を召喚し記録を取り寄せ、責務を達成する上で必要な情報を保有していると判断された人物に、宣誓の上で証言させる権限を与えられるべきである。法は安全保障部門の組織に対し、監視者が責務を達成するために必要と判断した特定の種類の情報を、積極的且つ速やかに、独立監視機関へ開示することを義務付けるべきである。これらの情報には、法や人権基準の違反の可能性についての情報が含まれ、しかもそれだけに限定されるべきではないとしている。

(4)原則34

原則34では、独立監視機関自身の透明性について規定し、定期的な報告書の作成などを求めている。

このような国際水準に照らして、秘密保護法の下で国会が導入しようとしている「情報監視審査会」も含めて、第三者機関とされる組織をひとつひとつ検討する必要がある。

5.どの範囲で情報共有できるのかが不明確

 参議院での審議では、民主党の大野元裕議員が「アメリカ議会の情報委員会では、議員秘書も適性検査の対象になっているが、案ではどうなっているか」と質問したが、自民党の上月良祐議員は、「秘書は対象にならない」と答弁した。大野議員が、適性検査を受けた参議院情報監視審査会事務局職員が、秘書が特定秘密を知っていると気づいたときには、刑事訴訟法にもとづき告発しなければならないのか」と聞くと、上月さんは「今回はなっていない」「運用上の問題」と言った答弁を繰り返したびたび審議がストップした。大野議員から「要するにそこまで詰め切れていないんでしょう。案を撤回する考えはあるか」と質問したが、提出者は拒否した。

このように、議会関係者の間で、どの範囲で情報共有されるのかも明確にはならなかった。

6.秘密の提出・提示要求の要件が不明確

 審査会の8人の委員のうち,どれだけの賛成があれば特定秘密の提出・提示を要求できるのかが明確になっていない。

 仮に過半数の賛成がなければ要求できないとして,所属議員の数に応じて会派で割り振られるのだとすれば,結局は与党から選出された議員の賛成がなければ秘密の提出・提示要求ができないことになり,議院内閣制の下では審査会が政府の意のままの組織となり、機能不全になる事態が予測される。

 例えば複数の委員が要求すれば,政府に提出・提示を要求できるようにして,審査会の政府からの独立性を確保するべきだ。

7.政府に秘密の不提出を認める例外要件が曖昧過ぎる

同法律案102条の15は、内閣が、特定秘密の提出が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがある旨の声明を出しさえすれば、特定秘密を国会に提出しなくてよいとしている。これは、秘密保護法10条が、特定秘密の提出等が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあると行政機関が判断した場合には、国会に特定秘密が提出等されないため、国会の行政監視機能を後退させると批判されている点が何ら払しょくされずそのまま踏襲されていることになる。

 秘密保護法10条や本法律案102条の15の定める安全保障に著しい支障を及ぼすとの要件は極めて抽象的であり、いかようにも解釈可能である。このような秘密保護法の考え方そのものが抜本的に変更されなければ、行政機関の判断次第で情報監視審査会が特定秘密の提出を受けない可能性は払しょくされず、どのような監視機関を設置したとしても、特定秘密を見ないまま特定秘密の指定などについての監視を行うことになり、十分な監視を期待することはできない。

8.議事録の非公開期間に定めが無い

 審査会の会議が非公開で行われ,その議事録も非公開にしなければならないものが存在すること自体は止むを得ないとしても,特定秘密にも指定期間や解除手続が定められているのだから,議事録の非公開についても,期間制限や解除手続を設けるべきである。

 現行の法制度の下では,公文書管理法は立法府の保管する文書については適用を直接受けない以上,議事録について非公開期間の制限や解除手続を設けなくては,情報公開を求めることができず,議事録が永遠に国民の目の届かないところに置かれることになりかねない。

9.内部告発を受けられる仕組みが不十分

 公益通報制度は、安全保障や外交に関する分野も例外としていない。しかし、現在の制度は行政機関内部の公益通報に限定されている。国会に情報監視審査会が設けられても、公務員がこの機関に特定秘密の内容を通報する行為も、特定秘密保護法上では秘密の漏えいという扱いを受けることとなる。

内部告発は,審査会が具体的な特定秘密を監視する端緒として重要な意味を持ち,秘密法の運用をチェックする際の有力な手掛かりになる。本来なら国会にも、行政機関に設けられているような、公益通報の受付窓口をしっかりと設けるべきである。

 しかし,この法案には,公益通報を法的かつ安全に受け付ける仕組みがない。特定秘密の指定について問題があると公務員が考えたときに,法的に安全に国会に通報できる法的根拠を作らなければならない。これは、このような機関を作る以上必須の措置である。

10.議員に対する刑事罰と懲罰規定の振り分けが不確定

 提供された情報を国会議員が国会の外で漏らしたときは,秘密法により最高5年の懲役になる。国会の中で,例えば本会議で特定秘密に触れた場合については,懲罰規定をこれから検討する流れになっている。

水野賢一議員の質問に対して大口善徳議員は免責特権について、「国会議事堂内でも、記者会見やぶら下がりで特定秘密を洩らした場合は、刑事罰の対象になる」と答弁した。さらに、水野議員が細かく質問すると、「理事懇談会は刑事罰の対象になるが、理事会は院内だ(から除外される)」と答弁することになった。水野議員も「要するに詰め切れていないんでしょ」と法案の出し直しを要求された。

 そもそも「議員は,議院で行った演説,討論または表決について,院外で責任を問われない。」と憲法51条は定めている。自由な議論が封じられ戦争へと突き進んだ歴史の反省に立った規定である。

 国会議員が特定秘密の指定が不当であると考え、国民に向け特定秘密をあえて公表する場合もあり得るはずだ。議員に対する懲罰規定は民主主義の根幹に関わる。この点も十分な時間をかけて、欧米諸国の例なども参考にこの法律の中で、制度設計をしてほしい。

11.審議が拙速であり国民の理解が全く得られていない

 情報監視審査会は、秘密保護法上の特定秘密の指定等の運用を監視するために設置されるものとされているが、特定秘密の指定等の監視の在り方は、知る権利、ひいては国民主権に関わる重大な問題である。それにも関わらず、自民党、公明党が、市民から広く意見を聞く手続も経ないまま本法律案を国会に提出し、衆議院で7時間、参議院で7時間の拙速審議によって法を成立させたことは、秘密保護法成立時と同じ過ちを繰り返していると言わなくてはならない。

12.独立した監視機関を求めて

私は、政府の秘密指定を適切にコントロールするためには、いま、提言されている役割をすべて統合し、ツワネ原則に定められた独立性を備えた大きな機関の設立を目指すべきであると考える。そのためにも、法律が制定されてから海外調査をしなければならないような特定秘密保護法はいったん廃止して、既存の国家公務員法や情報公開法、公文書管理法などを含めて、政府の保有する情報の管理制度全体を、市民の知る権利を強く保障する方向で、根本から見直すことが必要であると考える。


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by himituho | 2014-06-25 22:21 | 報告
2014年 06月 18日

【報告】緊急集会「国際人権法から見ると ~日本の特定秘密保護法は自由権規約第19条違反!~」‏

6月17日、秘密保護法対策弁護団と「その後の秘密法ウォッチャーズ」の主催で、英国エセックス大学人権センター研究員の藤田早苗さんによる緊急院内集会「国際人権法から見ると ~日本の特定秘密保護法は自由権規約第19条違反!~」‏を開催しました。
以下、弁護団メンバーである海渡双葉弁護士の報告です。

藤田さんからは、「情報の自由は基本的人権であり、国連が関与するすべての人権のかなめ石である。」という第1回国連決議を出発点に、世界では政府の透明性や情報公開を図るという大きな流れがあるにもかかわらず、日本はそれに逆行する動きをしており、秘密保護法が国際人権基準に反するということを、分かりやすく解説して頂きました。
また、国連人権理事会の表現の自由の特別報告者フランク・ラ・ルー氏のビデオ・メッセージでは、公的情報は公共財であるという認識の重要性と、秘密とすることが本質的に反民主主義的であることなどが指摘されると共に、我々の秘密保護法廃止運動に対するエールを頂きました。

以下のとおり、ユープランがYoutubeに映像配信しているので、ご覧ください。

20140617 UPLAN 藤田早苗「国際法から見ると~日本の秘密保護法は自由権規約19条違反?!~」

http://www.youtube.com/watch?v=QcAq07ekIuo


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by himituho | 2014-06-18 17:11 | 報告
2014年 05月 29日

【報告】院内集会「秘密保護法監視は可能か」

5月20日、秘密保護法対策弁護団及びその後の秘密法ウォッチャーズ主催で、院内集会「秘密保護法監視は可能か ~議員団報告書を踏まえて~」を開催しました。
以下、弁護団メンバーの藤原家康弁護士の報告です。

集会は、国会議員、国会議員秘書、スタッフを含め計70名が参加で、盛況でした。
議員参加は6名でした。

前半は、議員団報告書の検討として、アメリカについて小川隆太郎弁護士、イギリスについて藤原家康弁護士、ドイツについて海渡双葉弁護士が報告を行いました。
後半は、議員調査団の一員である宮本議員、秘密保護法を審議した特別委のメンバーであった福山議員、クリアリングハウスの三木由希子氏をパネリストに迎え、海渡雄一弁護士をコーディネーターとして、パネルディスカッションを行いました。

なお、議員調査団の一員であった宮本議員によれば、
・調査はもともと各党が参加(して公平に調査を行う)という前提ではなく、秘密保護法賛成派が行おうとするところに反対派が主張して入った。
・議員団の名称にも示されている通り、調査は、各国の「情報機関」に対するものに過ぎない。国会等が総体的に秘密保護法を監視するということは、始めから調査の目的ではない。そして、国会が総体的に秘密保護法を監視している国はない。
とのことであり、今回の調査そのものにそもそも問題があることも、訴えていきたいと思います。

UPLANから、当日の動画がアップされました。
会場で配布した資料も添付されています。
ぜひご覧ください。拡散、活用大歓迎です。
https://www.youtube.com/watch?v=EFFmQV_Dvhw

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by himituho | 2014-05-29 14:25 | 報告
2014年 05月 29日

【報告】雑誌「法と民主主義」4月号への掲載

秘密保護法対策弁護団の結成式の報告と呼びかけが、日本民主法律家協会の発行する雑誌「法と民主主義」4月号に掲載されました。
なお、同じく秘密保護法の特集ページで、弁護団メンバーの岡田俊宏弁護士が「秘密保護法と公務労働者の権利・義務」を執筆しています。
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by himituho | 2014-05-29 14:03 | 報告
2014年 05月 29日

【報告】秘密保護法対策弁護団の結成式・記念講演

2014年3月12日、参議院議員会館にて、秘密保護法対策弁護団の結成式と記念講演会が行われ、130人が参加しました。以下、弁護団メンバーである矢崎暁子弁護士の報告です。
結成式の動画 http://www.youtube.com/watch?v=vH_x1243rgk

秘密法弁護団は、①秘密法による検挙者が出る前に体制を整えておき、それにより検挙を予防すること、②秘密法の問題点について学習した弁護士を育てて秘密法廃止運動を市民とともに担うことを目的としています。昨年12月から呼びかけが始まったこの弁護団は、ほとんど口コミだけで広がり、この日までに上は14期から下は66期まで330人の弁護士が加入しました。目標は1000人。まだまだ弁護団の存在自体が伝わっていません。これから一層呼びかけて大きくしていきたいです。
12日の結成式には、真山勇一参議院議員(結いの党)、福島瑞穂参議院議員(社民党)が挨拶に訪れ、野党の中で廃止法案の提出に向けた協議が進行していることが報告されたほか、市民運動、日弁連、医師・歯科医師の会の代表による発言も行われました。


↑全体の写真


↑弁護団を担う若手弁護士たち


↑開会の挨拶をする南典男弁護士


↑真山勇一参議院議員


↑福島瑞穂参議院議員


↑設立趣意を説明する海渡雄一弁護士



↑呼びかけ人代表として挨拶をする井上正信弁護士、升味佐江子弁護士


↑フリーランス表現者による秘密保護法違憲訴訟を担当する山下幸夫弁護士
フリーランスのジャーナリスト達30人が原告となって秘密保護法の違憲確認と差し止めの訴訟を準備中。3月末に提訴予定。秘密法の影響が一番大きいのはやはり取材の自由や表現の自由。一定の配慮をするなどと書かれたがフリーの記者が「報道」に入ると判断される保障はない。秘密保護法反対には色々な活動があっていい。期間は短いかもしれないが、様々な方法で裁判の中で秘密法の問題点を訴えていきたい。


↑「秘密保護法」廃止へ!実行委員会の高田健さん
ふだんは必ずしも一緒にやれなかった市民団体が、秘密保護法を廃案にするために集まり実行委員会を作った。全国の仲間とネットワークも作った。法律の廃止という大変な目標に向けて市民運動は燃えている。


↑日本弁護士連合会秘密保護法対策本部から齋藤裕弁護士
今後政令が作られたり国会内に委員会を設置したりする動きが出るだろうが、日弁連としてもそれらの内容に対して意見を出していくし、法律自体の廃止に向けて全力を尽くす。


↑特定秘密保護法に反対する医師と歯科医師の会から青木正美医師

この日は、結成記念講演として、刑事法の観点から見た秘密保護法の問題点について、村井敏邦一橋大学名誉教授と落合洋司弁護士による講演が行われました。


↑村井敏邦一橋大学名誉教授

「特定秘密保護法の刑事法上の問題――刑事実体法を中心として」
村井名誉教授からは、秘密保護法が①国家が公的秘密と私的秘密を独占する情報コントロール法であるという側面と、②情報コントロールを手段とした本質的には軍事立法という側面を有する、との分析がなされました。秘密保護法が戦前の軍機保護法や国防保安法との構造的な共通点を有し、米軍の「特別防衛秘密」を対象としたMDA秘密保護法を一般法化するものであるという指摘もなされました。
実体法上の問題点としては、①そもそも立法の必要性がなく仮想的を想定した軍機保護法的側面が憲法9条に違反することに加え、②特定秘密の規定の不明確さが憲法31条(実体的デュープロセス)違反、③処罰範囲の過度の広範さ(主体、過失犯、取得罪での「取得手段」に対する刑罰法令との重畳適用)、④漏示罪と取得罪とが対向関係に立つかどうか議論されていない点、⑤共謀・教唆・煽動罪処罰の行為主義原則違反、⑥罰則の過大性(他の刑罰法令との重畳適用により刑の上限は10年を超えうる)が指摘され、実体法上の重大な論点がほとんど全く議論されずに法律が制定されてしまった現実が浮き彫りとなりました。


↑落合洋司弁護士

「特定秘密保護法の刑事手続上の論点」
落合弁護士からは、まず、秘密保護法違反事件の捜査が始まるパターンとしては①警察の監視・内偵による立件、②内部調査や内部情報(たれ込み)による立件、③秘密が外に出ていることが報道等により発覚して立件(典型例は西山記者事件)の概ね3パターンが想定されるとの指摘がなされました。
特に③のケースと関連して、秘密保護法に「報道又は取材の自由への配慮」と記載されていることについて話されました。政府は「報道機関に対する捜索差押えはされない」と述べているが、従来の判例は比較衡量の枠組みを用いて報道機関に対する捜索差押えを許容しており、「証拠を押さえる」という点が強調されて比較衡量は「捜査の必要性」に振れやすいこと、記者には押収拒絶権や証言拒否権は認められていないことを例に、もともと取材や情報源秘匿への保護が希薄であるにもかかわらず、この点への手当がないことの指摘がなされました。
そして、公判手続ではとくに外形立証の点に重点を置いて話されました。(※外形立証とは、特定秘密の内容を明らかにせず、特定秘密の指定手続、当該事項の種類、性質、特定秘密とすることを必要とする由縁等の事実を立証することにより、反証のない限りその実質秘性を推認させる立証方法を言います。)
法案制定過程で法務省や警察庁は「外形立証では立証できない」と懸念していたのに対し、内閣情報調査室は対応不要として不正競争防止法の秘匿決定制度のような制度も採用しないとしたこと、外形立証で公判を維持できるかの検察庁の判断が不透明であり関係者が不安定な立場に置かれうること、故意を争う場合に外形立証では防御権を侵害しうること、弁護活動として秘密の内容を明らかにすることが漏えい罪とされうる(刑法35条の正当行為にあたるとされないかぎり)ことなどが指摘されました。

(質疑)
Q.実質秘性を争う場合の弁護活動はどうなるか
→(村井)秘密指定の妥当性は争わなければならない。無罪主張となる。ただ秘密指定の不当性をどう立証できるか。外形立証だと弁護活動はできない。
(落合)従来国公法などでは実質秘性が要件。他方特定秘密は指定によりある意味形式的に決まるため、「特定秘密に指定されているから」とされると裁判所がその実質・中身に立ち入らない可能性。秘密の中身を明らかにしないとデュープロセスに反するという主張立証が重要。

Q.秘密の中身がわからない場合の「故意」。「知得」に関する内調と警察庁のやり取りからすると、『特定秘密を含めた何らかの秘密であること』の認識があり、かつ、『特定秘密を含めた何らかの秘密の意味(=何たるか=漏えいすればどういう結果を導くか)を全く認識していないわけではない』程度の意味の認識があれば「知得」要件を満たすとされうることとの関係は。
→(村井)全く内容を知らなければ過失だが、例えば「特定秘密の防衛プランであるようだ(しかし具体的な内容は知らない)」という程度で認識ありとされる可能性はある。意味の認識についてわいせつ文書で議論されたようなことが問題になりうる。
(落合)秘密取扱者より、一般の人がアクセスした場合、共謀や教唆の場合に一層問題。確定的故意はなく概括的故意の問題となり、ケースバイケース。検察官としては立証が難しい。曖昧で立証できないとして起訴を断念するか、あるいは情況証拠や自白に基づき起訴するか。

Q.情報公開法や公益通報者保護法との関係
→(村井)内部通報がこの法律により一層難しくなる。秘密保護法の中には内部通報者を保護する規定がない。正当行為論、秘密とすべき必要性、秘密にすることの憲法上の問題点等を指摘していくことになる。
(落合)立法過程で「アメリカにも同様の制度があるから」と言われていたが、アメリカではスパイではなくいわゆる内部告発者が処罰されており、そのことがアメリカ国内でも問題視されている現状。秘密とされた情報を明るみに出すことでより大きな正義を実現しようとすることが封殺されていく。保護する規定が刑35条しかなく不安定。
(海渡)ツワネ原則の「開示により得られる利益が非開示による利益より大きければ処罰されない」等の保護規定が秘密保護法にはない。公益通報者保護法により解雇はされなくても処罰はされるという異常な制度。

Q.ジャーナリストには黙秘権はないのか。情報源を明らかにするなどやってはいけないのでは。
→(落合)参考人として呼ばれることを想定すると証人尋問では自己負罪拒否特権はある。被疑者・被告人とされれば黙秘権はある。ただ被疑者的参考人として呼ばれたときに自己負罪でないと証言義務を負う。ニュースソースの保護は、現在の刑訴法では保護対象となっていない。
(村井)記者に証言拒絶権がないことについて、学者の中では問題視してきたが裁判所は証言拒絶権を認めてこなかった。ぜひ争ってほしい。

Q.本当に公正な裁判が行われるのか疑問。外形立証自体が憲法31条違反ではないか。
→(村井)たいへん難しく根源的な質問。捜査段階から問題。運用させないことが第一。適用されたときには憲法を総動員して主張していくしかない。外形立証は実質秘性を推定することになるが、推定ではダメ。
(落合)外形立証は訴因の特定とも絡む。実務の識別説によれば理屈上は外形立証もありうることになる。しかし訴因が特定されているかどうかとは別に防御権は保護しなければならない。起訴前から「外形立証だめですよね」と言っていかないといけない。警察庁も法務省も危惧していたのだから。捜査機関の痛いポイントを突くこと、世論を巻き込むことが必要。

Q.森雅子大臣と交渉して日弁連で議論してほしい
→(海渡)交渉して何とかなるならやりたい。


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by himituho | 2014-05-29 13:53 | 報告


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