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2014年 08月 22日

【パブコメ・テーマ別】適性評価制度に問題意識を持つ方々向けのパブコメ参考例

秘密保護法関連のパブコメについて、市民の方々から、「テーマ別に参考例を作ってほしい」という意見が寄せられたため、順次、テーマ別で掲載していきます。

適性評価制度に問題意識を持つ方々向けのパブコメ参考例

第1 総論
1 私は、この運用基準案に反対です。特定秘密保護法は憲法や国連自由権規約に違反する法律であって、運用基準案でどれだけ詳しい手続を定めたとしても、その問題が解消されていないからです。
 特に、適性評価の点では、特定秘密保護法は、憲法に定める思想信条の自由、プライバシー権などを侵害します。運用基準案では思想信条、政治活動、労働組合活動についての調査は慎むようにと書かれていますが(Ⅳ1(4))、運用基準を無視してこれらの調査を行ってもなんの処罰も懲戒処分もありません。違反行為に対して何の歯止めにもならない無意味な運用基準であり、むしろ法律を廃止する方が適切とさえ考えられます。
2 適性評価で一番問題なのは、大臣等、適性評価の対象外とされている人たちへ色仕掛けで秘密を盗むこと(ハニートラップ)が全くカバーされていないということです。 秘密を守ろうという目的と手段が全く対応していません。
3 適性評価では、どんな調査をしたかは分かりませんし、知らされることもありません。調査の結果、もし間違った事実を記録されたとしても、それを確認する方法はなく、間違いを訂正する手段もありません。
 また、同意不同意に関わらず、プライバシー情報の保存期間の制限がなく、ずっとプライバシー情報を保有し続けることができます。これは、憲法の定めるプライバシー権を侵害するもので、違憲というべきです。

第2 同意・人事について
1 自由な同意・不同意を決められるのが前提のはずですが、自分だけ同意しないと組織の中でどう扱われるか、という恐怖感があり、その下で事実上同意が強制される可能性が高いです。
2 運用基準では不同意書面を出すこととなっていますが(Ⅳ4(3))、これは秘密保護法にも根拠のないことであり違法です。
 また、不同意書(別添3)には、「特定秘密の取り扱いの業務が予定されないポストに配置換えになること等があることについても理解しています」という記載があり、不利益処分を容認する以外の選択肢がない書式となっていて不当です。
3 そもそも評価担当者をだれがどうやって評価するかについても定めがありません。評価担当者がテロ組織とつながっていたら、適切な適性評価はできません。

第3 質問票(別添5)
 犯罪及び懲戒の経歴(質問票4(1))について、既に処罰や処分が終わって償ったものまで申告させるのは問題があります。処罰や処分を受け、更生しているのであれば、書かせる必要は全くありません。しかも、犯罪や懲戒対象行為の動機まで書かせるのは、思想信条の侵害であり、プライバシーの過剰な取得です。

第4 公務所等への照会(Ⅳ5(5))
1 医療機関に対して個人の医療情報の照会を行うことは、医師に対して守秘義務違反の情報提供を強要することとなります。医師が患者からの相談内容を調査担当者に話してしまうと思うと、患者は医師に何でも相談できなくなります。そうすると、通院を控えたり、本当のことを言えなくなったりして、きちんとした治療が受けられず、不利益となります。
2 通信事業者に対して照会する場合、通信内容の報告をさせることも考えられます。これは憲法21条の定める通信の秘密を侵害する行為ですが禁止する規定がありません。裁判所の令状が必要な通信傍受と違い、適性評価の場合は裁判所のチェックはなく、同意をたてにしてなんでもやってしまうおそれがあります。
3 調査書で家族や関係者の住所氏名や国籍を報告させることになっていますが、家族等の同意は要件ではありません。それに、公務所照会として、内閣情報調査室、公安、自衛隊の情報保全隊等に照会し、照会するという名目で、事前に調査対象者の名簿をこれらの機関に流して事実上調査させることも考えられます。適性評価のための照会書(別添7)で、家族、関係者の住所氏名を記載して、「把握している情報を提供されたい」として、第三者提供の禁止をすり抜けた上で調査をさせることができてしまいます。そうすると、調査対象者の家族、関係者は、同意していないのにプライバシーを上記機関に把握されてしまいます。

第5 事業者(Ⅳ3(3)ア)
 適合事業者の従業者についての適性評価は、「契約後当該事業者が特定秘密の取扱いの業務を行うことが見込まれることとなった後に実施する」とされています。契約を締結するには適性評価に応じざるを得ないため、事実上、適性評価への同意が強制されています。強制された同意によるプライバシーの取得は、プライバシー権の侵害であり、憲法13条に反します。
以上



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# by himituho | 2014-08-22 13:21 | 秘密保護法パブコメ
2014年 08月 21日

【パブコメ・テーマ別】TPPに反対の意見をお持ちの方向けのパブコメ意見案

秘密保護法関連のパブコメについて、市民の方々から、「テーマ別に参考例を作ってほしい」という意見が寄せられたため、順次、テーマ別で掲載していきます。

TPPに反対の意見をお持ちの方向けのパブコメ意見案

1 はじめに
 私は、特定秘密保護法の廃止を強く望んでおります。なぜならば、日本国憲法や国際自由権規約に反する法律だからです。したがって、違法な法律について、運用基準を定めたところで、違法性は解消されません。
 私は、特定秘密保護法の運用基準を設けること自体に、反対です。

2 環太平洋戦略的経済連携協定(以下、「TPP」という。)の問題点
 特定秘密保護法には様々な問題点がありますが、私が特に気にしているのは、TPP交渉の情報開示に関することです。
 TPPを締結した場合、海外からの安価な製品が際限なく流入してきます。それは、日本の農家に対して対抗できない価格競争を強いて、近い将来破滅に向かわせるものです。最近、中国で食肉の安全性を揺るがすニュースを見ましたが、TPPを締結することで安価で安全性の低い食材が日本に輸入されるのではないかと心配です。
 また、農業のみならず、日本の公的医療保険制度をも破壊しかねないものです。
 現状でさえ、TPPは、2つもの大きな問題点を抱えております。今後、秘密保護法が施行された場合、TPP交渉の経過が国民に正しく伝わらないことを危惧します。特に、多くの国民が納得するように、政府にとって都合の悪い情報は隠すことをされるのではないかと不安でたまりません。

3 TPP交渉の情報隠し
⑴ 外交に関する事項(法 別表第2号)
 別表第2号イの適用範囲であるが、「国民の生命及び身体の保護」、「国際社会の平和と安全の確保」といった文言の判断基準が明確ではありません。また、「外国の政府等から提供された情報」についても(別表第2号ハ)、同様です。
 これらの文言を恣意的に解釈すれば、TPP交渉における全情報を秘密指定とすることは、容易になります。先日、森雅子担当相は、TPP交渉に関する情報が秘密指定となるか否かについて、秘密指定になると言ったり、秘密指定の対象外といったりと、発言を二転三転させています。それだけ、法文が不明確なのです。
 仮に、政令・運用基準を定めるならば、具体的に明記するべきです。それにもかかわらず、政府が公表した運用基準は、何をもって「国民の生命及び身体の保護」、「国際社会の平和と安全の確保」といえるのか、全くわかりません。このような事態は、時の政権により、解釈を大きく変更できるものとなりかねないのです。
 時の政権の恣意的運用を阻止するためにも、TPP交渉は、秘密指定の対象外であるということを明記するべきです。
⑵ 開示制度の不徹底
ア TPP問題は、国民の健康にも直接的に関係する問題なのに、なぜ、国民に知らせないようにするのでしょうか。これでは、正しい情報がなければ、TPPを締結するべきか否かについて、国民は正しい判断を下せないはずです。
 むしろ、情報開示制度に不備があり、政府にとって、不都合な情報の身を隠そうとしか思えてなりません。
イ 我々の代表者たる国会議員ですさえも、一度秘密指定になると、公開の国会では、開示できないのはなぜでしょうか。秘密会でなければ、なぜ国会議員にも開示できないのでしょうか(法10条1項1号イ)。
 これでは、国会議員が秘密会で議論をしたとしても、国民には何も情報が下りてきません。秘密を知った国会議員が公にすれば、刑事処分を受けかねないからです(法23条2項)。
 これで、果たして三権分立の精神が保たれているのでしょうか。私には、三権分立を破壊しているようにしか見えません。民意を反映していない官庁の方が、何故国会よりも優越的に扱われているのでしょうか。納得できません。
ウ TPP問題は、多くの国民に直接関係する問題なのに、なぜ開示したら、刑事処分を受けるおそれがあるのでしょうか。多くの国民にとって有益な情報を開示した者は、何故罰を受けなければならないのでしょうか。
 このような規定が存在するだけで、違法行為があったとしても、見て見ぬふりをすることになり、かえって国益を害するのではないでしょうか。
エ 以上の私の疑問点を踏まえれば、政令・運用基準には、TPP交渉については、特定秘密保護法の適用除外と明記すべきです。



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# by himituho | 2014-08-21 22:12 | 秘密保護法パブコメ
2014年 08月 20日

【パブコメ参考例】モートン・ハルペリン氏とオープンソサエティのパブコメ

5月に来日した元・米国政府高官で、知る権利と国家機密との調整を図ったツワネ原則の起草にも関わったモートン・ハルペリン氏らが、秘密保護法関連パブコメを作成してくれましたので、転載します。
非常に示唆に富む内容です。ぜひ参考にして下さい。

運用基準に対するモートン・ハルペリン氏のパブリックコメント

1. 運用基準には、なにを秘密に指定してはいけないかという指標が欠けている
 ある情報のもたらす公益が、公開によって生じる損害を上回るときには、その情報は秘密に指定してはいけない、ということ明確にするのが近年、秘密保護法に関して(国際的に)一般的になってきている傾向である。

 また、指定の解除への要求に対応する際に、少なくともそのようなバランスをはかるテストが必要である。また、いくつかの裁判所でも、ある情報の公開によって生じうる損害よりも公益のほうが大きい場合には、政府はそれが政府役人でも個人でも、情報を公開したという理由でその人を罰してはいけない、という判決を下している。

 当運用基準はこの概念を取り入れて改訂されるべきである。政府役人はある情報が秘密に特定されるべきだと決定する前に、公益を考慮することが要求されるべきである。(ある情報の公開による)公的な価値が損害よりも上回る場合は、その情報は秘密に指定してはいけない。秘密指定において、その指定の正当性を説明する場合には、指定をした役人はその情報の公の討論における重要性を吟味したことを明記し、いかにその情報の公開によって生じうる損害が公益よりも上回るのかを説明すべきである。

 そのような基準の実施の一例は秘密指定に関する米国大統領令(E.O.13526)である。この大統領令の3.1(d)節は政府職員はある情報の秘密指定の解除をするかどうか考慮する際、「その情報の公開により当然予期される安全保障に対して生じうる危険を、公開による公益が上回るかどうか」を判断しなければならないと規定している。

 また、人々が知る権利を有する政府の活動に関する情報や、国内法や国際人権の原則を侵害する行為を説明する情報も秘密指定されてはいけない。従って「公益通報の通報対象事実その他の行政機関による法令違反の隠蔽を目的として、指定してはならない」(運用基準II.4(イ))とするだけでは不十分である。それは、政府役人は自分たちが不法行為を隠したり、気まり悪くならないように、という「目的として」情報を秘密指定しているとは考えないからである。むしろ彼らは、自分たちは国家安全保障への危険を防ぐために情報を秘密指定しているのだ、と考えている。多くの場合、不正行為に関する情報を公開することで国家安全保障に対していくらかの損害が生じうる。実際、危険は多くの場合、まさに政府が国際法に反する行いをしていたということを明らかにすることに起因する。こういう理由のため、規則は単に不正行為を隠蔽する「目的として」という区分でなく、これらのカテゴリーに関わる情報の秘密指定の禁止をしなければならない。

 近年のいくつかの秘密保護法は、汚職、人権侵害、その他の刑事犯罪、公衆衛生や安全に関する情報は秘密に指定したり、国民一般に与えるのを差し控えたりしてはいけない、ということを強調して規定している。裁判所もその立場をとり、例えば拷問に関する情報は決して秘密指定してはいけない、という判決を下している。

 それとは対照的に、日本の秘密保護法には何を合法的に秘密指定してよいのか、ということへの制限が盛り込まれていない。運用基準に盛り込まれているのは「公益通報の通報対象事実その他の行政機関による法令違反の隠蔽を目的として、指定してはならない」ということだけである。前に述べたように、これでは甚だ全く不十分である。国民がどのような状況においてでも知る権利があるような情報は、秘密保護法のもとで秘密指定してはいけないということを明確にするように、運用基準は改訂されるべきである。

 その点に関して、ツワネ原則には重大な人権侵害、人の生命の剥奪を許可する法律や規則、現存するすべての軍隊、警察、治安と諜報当局、そしてそれらの機関に関する法律と規則の存在、他国との安全保障協定や公約、武力の行使、大量破壊兵器の入手などの例が挙げてある。ある情報が人々が基本的な知る権利を有する分野を含んだカテゴリーに関するものである場合には、その情報は秘密指定できないということを規定するように運用基準は改訂されるべきである。

2.法律(秘密保護法)は、明確な定義を行い、法の抜け道を極力狭めた場合を除いて、政府役人が報道機関に情報を提供しても政府役人を罰してはいけないし、また最も甚だしい状況を除いては、そのような情報へのアクセスに権限がない者(メデイァのメンバーやほかの市民のメンバーなど)がそれらの情報を出版・発表しても彼らを罰してはいけない。

 日本の秘密保護法は、秘匿情報へのアクセスが与えられた者が、秘匿情報を報道機関に公開した場合にも極めて厳格な罰則を課している。大きな公的価値を有する情報の多くが秘密に指定されるであろうことを考えれば、刑罰は通信情報や戦争計画といった規則に明文化されるべきもののような、狭義で特定のカテゴリーの情報にのみ適用されるべきである。また損害が実際にその情報の公表によるものであり、その情報の公的な価値が損害よりも上回ることがないということを政府が証明するように要求されるべきである。

 個人の市民に刑罰を科す範囲はもっと狭くするべきである。秘密保護法の24条1項は他国の利益のために利用したり、または日本の安全保障もしくは国民の安全を危険にさらす目的で情報を取得するためにその他の不法行為に従事する個人に対して、刑罰を科すのが適当かもしれない究極の状況についての適切な規定ではある。

 しかしこの法規については、この法規による厳しい刑罰の対象になるのではないか、と恐れる記者やほかの民間人の行動を抑制するであろうという、もっともな憂慮がされている。民間人に刑罰が科されるのは、政府がこれらの条件をすべて満たす場合のみであるということを法規は明確にするべきである。「不法な利益を得る」という側面に関しては、ある人が政府が行っていることを一般大衆に警告することにより得られる「利益」はそこに含まれないように解釈されるべきで、事実上24条1項のほかの条件を拡大しないように解釈されるべきである。共謀、教唆に関する規定は、24条1項の条件をすべて満たしているということを政府が証明できる場合にのみ適用されるように明確に定義されるべきであり、人々が情報を得られるようにジャーナリストやほかの人が政府役人に情報を公開するように説得する努力はそこに含まれないということを明確にするべきである。

 ジャーナリストを保護する趣旨の秘密保護法22条は24条1項よりも広義に解されうる。法規は22条で規定されている保護は24条の条件への追加であり、追加的な防御を提供するものであると解されるべきである。この規定(22条)に当てはまる人々の定義は広範囲でされなければならない。

 民間人が取得した情報を公表することに対して刑罰で脅すのは危険なことである、ということは国際法上、確立している。自由権規約委員会は「安全保障を害さない正当な公益を有する情報をジャーナリスト、研究者、環境活動家、人権擁護者その他が公開すること」で起訴することは、日本が30年以上前に批准し締約国である自由権規約19条3項の違反である、と明言している。

 3人の表現の自由に関する国際的な専門家(国連、欧州安全保障協力機構、米州機構によって任命された)は2004年の共同宣言で、ジャーナリストやほかの民間人が公益のために情報を公開することに対して刑罰から守られるべきである理由を以下のように説明している。
「官庁やその職員は自分たちの管理する合法的に秘密である情報の機密性を守る責任を負う。ジャーナリストや市民社会の代表は、不正行為やほかの犯罪によって情報を得たのでなければ、その情報が漏洩されたものであろうとなかろうと、その情報を発表したり広めたりすることで責任を問われたりしてはいけない。政府の秘密を公表したことで問われる責任を、その秘密を扱う公式な権限が与えられている人に限定していないような刑法の規定は、廃止または改訂されるべきである。」

(運用基準の英訳、英文コメントの和訳 ―― 藤田早苗;英国エセックス大学人権センター)

運用基準に対するオープンソサエティ・ジャスティスイニシアチブ(OSJI)の
サンドラ・コリバー氏(シニア・リーガル・オフィサー)によるパブリックコメント

 オープンソサエティ・ジャスティスイニシアチブ(OSJI)は日本の秘密保護法とその運用基準が、日本が1979年の6月21日から締約国である自由権規約と、またツワネ原則に反映されている国際法と規範、そして民主国家の法と慣行に及んでいないということに注意を喚起するために、このパブリックコメントを提出する。

 OSJIは22の市民団体と学術機関の支援の下、世界で14の会合をもち500人以上の専門家により、国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)の起草を促進した。ツワネ原則は表現の自由に関する国連特別報告者と、人権とカウンターテロリズムに関する国連特別報告者、そしてアフリカ人権委員会、米州機構、欧州安全保障協力機構のそれぞれの表現とメディアの自由に関する専門家、そして欧州評議会の議員会議によって支持されている。この原則はオープンガバメントパートナーシップで加盟国のコミットメントの実施を評価する際に用いられている。また内部告発者の保護に関する原則は欧州連合(EU)の欧州議会によって支持されている。

1. 何を秘密指定できるかということについての条件が精密性を欠く
 秘密保護法の3条にはなにが秘密として指定できるかが挙げられている。運用基準はいくらかのガイドラインを提供しているが、不十分である。「防衛」などの重要な用語の定義がなされていない。
 運用基準は、行政機関の長が、ある情報を秘密指定するためのいくつかのガイドラインが提供されているが、何を含んではいけないかを明記していない。よってここでは単に「外国との信頼関係を失う」「安全保障への危険性」と書くだけで十分であるが、それでは国際法とその基準を満たさない。これとは対照的に、ツワネ原則の原則9(b)は「機密指定の根拠として、その情報が属する、原則9でリスト化されたカテゴリーのいずれかに対応した、情報の厳密な分類を示すべきであり、また、開示することによって生じうる損害を、その深刻さの程度、それが起こりうる可能性を含めて、記述しなくてはならない。」とする。5つのカテゴリーは以下の通りである。
1.その情報が戦略上有効である期間中の、進行中の防衛計画や作戦、状況に関する情報
2. 通信システムを含む兵器システムその他の軍事システムの製造、性能、使用についての情報。
3. 国土や重要インフラ又は重要な国家機関を、脅威または妨害工作や武力の行使から護衛するための具体的な手段に関する情報で、機密であることでその効果を発揮するもの。
4. 情報局の活動、情報源、手段に関連又は由来する情報で、国家安全保障の問題に関するもの、及び
5. 外国や政府間機関からとくに極秘を期待されて提供された国家安全保障の問題に関する情報、及び他の外交上のコミュニケーションで提供された国家安全保障の問題に関する情報。

 さらに、それぞれのカテゴリーの重要な用語は注記をつけて明確に定義されている。

 ツワネ原則は原則11に「各情報の機密指定の決定理由を述べる文言を添付することが推奨されるのは、開示した結果起こり得る具体的な損害に公務員の注意を向けるためである」という注記を含んでいる。

 アメリカ合衆国も同様のレベルの明確さを求めている。大統領令(E.O.)13526号は秘密の特定をする機関は安全保障に対して生じうる「損害を確認し、詳細に記述しなければならない」とし、またその情報がどのカテゴリーに属するのかを確認しなければならない、とする。ちなみに、大統領はツワネ原則の5つのカテゴリーと類似の8つのカテゴリーをあげている。(1.2項と1.4項を参照のこと)  (996)

2. 秘密保護法は不相応な刑罰を科している。
 秘密保護法23条1項は特定秘密の取扱いの業務に従事する者が特定秘密を漏えいしたときは、最長10年の懲役に処する、としている。3条は「その漏えいが国の安全保障に著しい支障を与えるおそれ」があるときにのみ秘匿されうるという有用な明記をしている。しかしながら、その漏えいによって刑事罰がもたらされるためには情報は「合法的に」特定されなければならない、ということを要求していない。秘密保護法は有罪判決が下される条件として、政府に、実害についての証明、または起こりうる害についてすら証明することを求めていないし、また漏洩には悪意が存在したという証明も要求していない。意思について唯一求められている条件は、漏えいが意図的なものであったということだけである。さらに、漏えいが単に過失に基づくものであった場合でも、最高2年の懲役に処される。秘密保護法も運用基準も刑罰について損害との均衡性を要求していない。

 特に損害や損害への意図に関する証明を要求せず、秘密の漏洩が公益に資するという防御が不可能で、刑罰の軽減が存在しないところで、23条に記されている処罰は一般への漏えいについて、行き過ぎである。

 OSJIが26か国を対象にした調査では、13か国の秘密保護法がスパイ活動、反逆罪、外国への漏えい、損害を引き起こす意図などが存在しない場合に、漏えいに関して定めているのは5年以下の懲役である。
 例えばブラジル(1年)オーストラリア、スェーデン、英国(2年)、パナマ、スペイン(4年)コロンビア、ノルウェー(4年半)、ベルギー、メキシコ、パラグアイ、ポーランド(5年)など。ほかの6か国では最長10年以下の懲役、例えばボリビア、エクアドル、フランス、グアテマラ、オランダ、ロシア。

3. 日本の監視機関には独立性と有効な権限が欠けている

 日本政府は現在外部アドバイザリーによる委員会と3つの政府機関の少なくとも4つの機関に監視機能を与えている。しかし、外部アドバイザリー委員会は助言の権限しかなく、ある情報について指定解除されるべきだというような指図ができない。3つの政府機関は秘密指定をする行政機関からの独立性がない。これらに加えて、国会が常設の委員会である情報監視審査会を設置した。しかし、委員の選出過程は規模の小さな政党からの議員を排除する仕組みのようである。さらに、政府機関に情報開示を強制する力もない。審査会は特定秘密を審査のために審査会に提出することを行政機関の長に要求できるが、行政機関の長はそれに応じる義務はない。審査会は内部告発者からの通報を受け付けたり、彼らを罰則から守ったりする権限もないし、不適切な秘密指定を阻止する拘束力ももたない。
 対照的に、ツワネ原則の原則26では以下のように
(a)秘匿情報を請求した者は、情報開示の拒否若しくは請求に関する事柄について、独立機関による迅速且つ低費用の審査の権利をもつ。
(b)独立機関は、たとえ秘匿情報であっても、すべての関連情報への十分なアクセスを含む、実効的な審査に必要な資格と資源を有するべきである。
(c)人は、あらゆる関連問題について、権限のある裁判所や法廷による独立した有効な審査を実施させる資格を有するべきである。
(d)裁判所が情報非開示を承認する判決を出す場合、裁判所は、特殊な状況を除き、原則3に則り、事実に即した根拠及び法的分析を書面で公的に入手できるようにするべきである。

 原則31は「国家は・・・安全保障部門の組織を監視するための独立監視機関を設置するべきである。監視項目には、機関の活動・規則・指針・財務・管理運営が含まれる。このような監視機関は、監視対象機関からは、組織・運営・財政の面で独立しているべきである。」とする。

 原則33(d)は「法は、独立監視機関が責務を遂行するために必要な情報にアクセスし解釈できるように、安全保障部門の組織による協力を義務付けるべきである。」とし、原則39B(1)は「国は、保護された開示を受理及び調査する独立の機関を設置又は指定すべきである。この機関は、安全保障部門、及びその内部から開示が行われうる、行政府を含むその他の当局から、組織上及び運営上独立しているべきである。」ということを明確にしている。

4. 資料の廃棄可能時期についての指針がもっと必要である。

 運用基準は秘密指定されていた情報がのちに指定解除され、歴史的価値がない場合は総理大臣の了承を得て廃棄できるとしている。しかし対照的に、アメリカ合衆国を含めたほとんどの現代民主主義においては情報を破棄する前に、独立機関がその情報が歴史的に重要かどうかを決定する権限を有する。これは極めて重大な条件である。もしある情報が秘密指定されるほど重要であるならば、秘密指定が不要になった時点でもその情報は重要性を保持しているはずであり、したがって人々はその情報について知る権利を有するからである。

 秘密指定の権限を有する公的機関がそれぞれ保持する秘匿情報の資料のリストを作成し補完するべきであるということも重要である。

 ツワネ原則15(c)は「各々の公的機関は、保有する機密記録の、詳細で正確なリストを作成し、公開し、定期的に検討し、更新すべきである。ただしその存在自体が、(これらの)原則に基づき合法的に秘匿されているような例外的な文書があればそれを除く」、と規定している。

(運用基準の英訳、英文コメントの和訳 ―― 藤田早苗;英国エセックス大学人権センター)

# by himituho | 2014-08-20 11:00 | 秘密保護法パブコメ
2014年 08月 19日

【パブコメ参考例】海渡雄一弁護士のパブコメ意見

当弁護団の共同代表の1人である海渡雄一弁護士のメッセージとパブコメ意見を、本人の同意の上、転載・公表します。

 いま、秘密保護法のパブコメをやっています。皆さんはもう出しましたか。私は、下記の意見を提出しました。私が提出したパブコメ意見を公表します。これまで考えてきたことをまとめたものです。転載歓迎著作権フリーです。お気に入ったら、一部でも切り取って皆さんのご意見としてお使い下さい。
 24日が締めきりです。あと一週間を切りました。法律が施行されるまえに、市民の秘密保護法廃止の声を政府に届ける貴重な機会だと思います。

 秘密保護法は市民の知る権利を侵害する憲法21条、自由権規約19条違反の法律だ。秘密保護法の下では、市民が知るべき情報が特定秘密に指定されてしまうことは防げません。特定秘密保護法をそのままにして、政令や運用基準でさまざまな監視機関を作ったり、内部通報制度を作っても、有効に機能するわけがないのです。
 違憲な法律は、まず廃止するしかないし、我々は、政令や運用基準の制定そのものに反対です。
 せめて、行政機関の法令違反の事実を指定してはならないことを法律あるいは政令のレベルで明記するべきです。
 独立公文書管理監の独立性を確保するには、政令レベルせめて運用基準で、秘密指定行政機関に帰るような出向人事は否定するべきです。
 内部通報窓口を19機関と独立公文書管理監に設置したとされるが、法律や政令中に、政府の法令違反について秘密指定をしてはならないという規定がない以上、公務員が、その秘密指定が秘密保護法に違反していると確信できるなどという場合はほとんどあり得ず、公益通報の実効性は全くありません。

日弁連のHPにパブコメの案内と簡単な文例が載っています。http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/secret/about.html
秘密保護法廃止実行委HPに例文集が載っています。また、5分程度のパブコメミニ講座が動画で掲載されています。秘密保護法対策弁護団の矢崎暁子弁護士があつく語ってくれています。
http://www.himituho.com/
この秘密保護法対策弁護団HPにも例文集が載っています。
http://nohimituho.exblog.jp/

ぜひ、皆さんも、簡単なものでいいですから、思い思いのパブコメを提出し、これをウェブ、ツイッターやフェイスブックで弘めましょう。


統一運用基準と内閣府令、施行令に対する意見

内閣官房特定秘密保護法施行準備室 御中

1.個人
2.海渡雄一
3.東京都新宿区●●●●●●●●
4●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(東京共同法律事務所)
5.各部分に運用基準、内閣府令、施行令の該当箇所を明記(このパブコメ意見は、全体として統一した意見であるから、同一の意見を運用基準と施行令と内閣府令に対して提出する。)
6.意見 下記のとおり

このパブコメ意見は、全体として統一した意見であるから、同一の意見を運用基準と施行令と内閣府令に対して提出する。その意見の対象は各項目に明記した。

第1 総論
1 パブリック・コメントに臨む私の基本的立場(統一運用基準Ⅰ1)
 私は、秘密保護法は廃止すべきだと考えている。
 今回のパブリック・コメントでは、法律をそのままにして、政令案や運用基準案についてだけ、意見を述べることを求めている。しかし、特定秘密保護法は市民の知る権利を侵害する憲法21条、自由権規約19条違反の法律である。この秘密保護法の下では、市民が知るべき情報が特定秘密に指定されてしまうことは防げない。特定秘密保護法をそのままにして、政令や運用基準でさまざまな監視機関を作ったり、内部通報制度を作っても、有効に機能するわけがない。違憲な法律は、廃止するしかありません。私は、政令や運用基準の制定そのものに反対である。

2 自由権規約委員会からも見直しが求められている(統一運用基準Ⅰ1)
 2014年7月24日、自由権規約委員会より日本政府に対して以下のような勧告意見が出された。
 私は、この委員会に日弁連の代表団の代表として参加した。
 秘密保護法については、日本のNGOは19団体のジョイントレポートを提出した。日弁連、アムネスティもこの問題を取り上げ、ツワネ原則を起草したオープンソサエティ・ジャスティスイニシアティブも、秘密保護法の内容を検討した詳細なレポートを提出した。このような動きを受けて、審査の第二日目にドイツのフォー委員が表現の自由について質問する中で、秘密保護法について詳細に取り上げた。
 日本政府は、法全体の英訳を委員会に提供し、今回の立法は欧米なみのものであり、恣意的な運用はされない、報道目的の情報取得は処罰されないなどと回答した。
 しかし、委員会は、勧告23項において、規約19条にもとづいて、「近年国会で採決された特定秘密保護法が、秘密指定の対象となる情報について曖昧かつ広汎に規定されている点、指定について抽象的要件しか規定されていない点、およびジャーナリストや人権活動家の活動に対し萎縮効果をもたらしかねない重い刑罰が規定されている点について懸念する」として、「日本政府は、特定秘密保護法とその運用が、自由権規約19条に定められる厳格な基準と合致することを確保するため、必要なあらゆる措置を取るべきである。」とし、「(a)特定秘密に指定されうる情報のカテゴリーが狭く定義されていること、また、情報を収集し、受取り、発信する権利に対する制約が、適法かつ必要最小限度であって、国家安全保障に対する明確かつ特定された脅威を予防するための必要性を備えたものであること。(b)何人も、国家安全保障を害することのない真の公益に関する情報を拡散させたことによって罰せられないこと。」が具体的に勧告された。
 秘密指定には厳格な定義が必要であること、制約が必要最小限度のものでなければならないこと、ジャーナリストや人権活動家の公益のための活動が処罰からの除外されるべきことが求められた。
 このパブコメの開始されたのと同じ日である7月24日に示された自由権規約委員会の勧告は下位法令や運用基準レベルでの小手先の対応ではなく、法そのものの廃止を含めて抜本的な見直しがなされなければ国際社会の日本政府に対する言論弾圧の疑念は払拭できないことを示している。
 日本政府は、この勧告にしたがって、ただちに特定秘密保護法を抜本的に見直すべきである。

3 ツワネ原則に従い全面的な見直しを(統一運用基準Ⅰ1)
 特定秘密保護法は、既存の国家公務員法や自衛隊法、日米安全保障条約に関連する秘密保全法制度、情報公開制度、公文書管理制度、公益通報者保護制度を含めて、自由権規約19条によって保障される表現の自由・知る権利と国際的に承認されたツワネ原則などに基づいて、より情報公開が図られ、市民の知る権利を保障する方向で、以下の諸点を含む全面的な制度の見直しを行うべきである。
① 秘密指定の立証責任は国にあることを法律に明記する。
② 何を秘密としてはならないかを法律において明確にする。
③ 秘密指定について60年よりも短い期限を法律で定める。
④ 市民が、秘密解除を請求するための手続を法律に明確に定めること。
⑤ 刑事裁判において、公開法廷で秘密の内容を議論できることを法律において保障すること。
⑥ すべての情報にアクセスし、秘密指定を解除できる政府から独立した監視機関を法律に基づいて設置すること。
⑦ 内部告発者が刑事処罰から解放されることを法律上明確に保障すること。
⑧ ジャーナリストと市民活動家を処罰してはならず、情報源の開示を求めてはならないことを法律に明確に定めること。

4 ジャーナリストと市民活動家を処罰の対象としてはならない(統一運用基準Ⅰ2(1)ウ)
(1)ジャーナリストだけでなく市民活動家も保護すべき
 運用基準では、「出版又は報道の業務に従事する者と接触する際には、特定秘密保護法第22条1項及び第2項の規定を遵守し、報道又は取材の自由に十分に配慮すること」とある。
 まず、なぜジャーナリストの報道又は取材の自由だけが特に留意され、その他の環境活動家や人権活動家等、公益活動を行う者の情報公開又は情報収集活動が保護されないのかを指摘しなければならない。ヨーロッパ人権裁判所の判例(2005年2月15日SteelおよびMorris対イギリス事件。通称「マック名誉毀損事件」)によれば、ジャーナリストだけではなく、人権活動家等も同等の保護を受けるべきとされている。法にはこのような配慮が全く見られない。

(2)特定取得行為はジャーナリストと市民活動家を対象としている
 秘密保護法は、23条において、ジャーナリストと市民活動家らによる特定秘密取得行為を「秘密の管理者による管理を害する行為」によって取得することを処罰の対象としている。取材源などの情報源の開示を求められないことの保障も見あたらない。
 秘密保護法が定める特定取得行為という犯罪類型は明らかに公務員以外の者の処罰を意図している。ここでは、ジャーナリストも原則として排除されておらず、その取材行為のやり方によって処罰の対象とされる仕組みとなっている。そして、この点は、自由権規約委員会からも最も厳しく規約19条違反が指摘された。

(3)ジャーナリストと市民活動家を処罰の対象から除外することを求めるツワネ原則
 ツワネ原則は公務員については、処罰される場合があり得ることを否定していないが、公務員でない者(ジャーナリストと市民活動家)は処罰してはならないことを明確に定めている。
 原則47(a)は「公務員以外の者は、機密情報の受領、保有又は公衆への暴露に関して、制裁を受けない。」「 (b)公務員以外の者は、情報を求めたり入手したりしたという事実を理由に、共謀その他の容疑で訴追されるべきではない。」としている。ただ、この条項に付けられた注によれば、「情報の入手又は複写に対する刑事訴追を防止することを目的にしている。しかしながら、この原則はその他の犯罪、たとえば情報を探索又は入手する過程での不法侵入や恐喝のような犯罪の免責を目的とするものではない。」としている。この原則は、ジャーナリストが情報の入手の過程で犯した犯罪があれば、これを処罰すれば、足りると考えているのである。
 また、公務員でない者は、情報流出の調査において、秘密の情報源やその他の非公開情報を明らかすることを強制されるべきではない(原則48)ともしている。

(4)ヨーロッパ人権裁判所の判例
(a)ヨーロッパ人権条約10条
 ツワネ原則が採用している秘密を公にした場合に、それによる公益と秘密を漏らしたことによる不利益のバランスを考慮して、バランスがとれていれば処罰しないという考え方は、ヨーロッパ人権裁判所で近時急速に発展してきた考え方である。
 取材・報道のための活動が形式的には法に違反しても、刑事処罰を求めることが表現自由を保障したヨーロッパ人権条約第10条に反するとされたケースがヨーロッパ人権裁判所の判決には多数含まれている。
 ヨーロッパ人権条約第10条は、国際人権規約19条と同様に、表現の自由を保障している。表現の自由に対する制限が条約に反するかどうかを検討する場合には、第1に、この制限が法によって規定され、第2に、その制限が(a)他の者の権利又は信用の尊重、(b)国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護という合法的な目的にかなっていなければならず、第3に、その制限が、「民主社会において必要」でなければならないとされている。「国の安全」、「公の秩序」などの用語は日本で準備されている秘密保全法制と共通するようにも見える。しかし、その中味はかなり違う。

(b)「フレッソおよびロワール対フランス」事件
 この中で「必要性」の要件が最も重要である。ヨーロッパ人権裁判所の興味深い判決を二つ紹介する。一つ目は「フレッソ(Fressoz)およびロワール(Roir)対フランス」事件である。
 同事件では、二名のジャーナリストが、匿名の税務関係者による違法な情報漏えいを受けて、プジョー社の取締役の納税申告書を公表したことから、盗難資料を入手したとしてフランスの裁判所から贓物(ぞうぶつ)贓物(不法入手物)犯罪で有罪判決を受けた。
 この取締役が二年間で45・9%の昇給を自らに与えていたことを示すこの二名のジャーナリストによる記事は、プジョーの労働者が昇給を要求して拒否されていた労使紛争のさなかに発表された。裁判所は以下のように判断し、両名に対して刑事罰を科すことはヨーロッパ人権条約10条に反するとした*1 。
 「民主主義社会において報道機関が果たす不可欠な役割を認識しながらも、裁判所は、第10条がその保護を認めているという前提で、原則としてジャーナリストを通常の刑法に従うという義務から解放することはできないことを強調する」、「つまり、取材に携わる個人は、法を犯すことを全般的に許可されているのではなく、個々の事例において、世間に情報が知らされることの重要性が刑法によってもたらされる利益にまさるかどうかを評価しなければならない」、「欧州人権裁判所は、フレッソとロワールが、透明性の高い方法で誠実に行動しており、納税申告書のコピーを入手するという犯罪行為が彼らの記事の信頼性を証明するのに必要であったと判断した」、「課税査定の真正さを検証したRoire氏は、ジャーナリストとしての自身の職業を遂行する(倫理)基準に従って行動した。個々の資料からの抜粋は問題となっている記事の内容を裏付ける目的があった」。

注1) FressozおよびRoir対フランス」、1999121日、申請No.29183/95 欧州人権裁判所

(c)「グジャ対モルドバ」事件
 外形的には違法行為でも、違法行為として責任を問うことがふさわしくないとヨーロッパ人権裁判所が判断した最近の判例として2008年2月の「グジャ(Guja)対モルドバ」事件がある。
 このケースは、モルドバ検察庁の報道室長であったグジャ氏が政治家による不当な検察への圧力を証明するメモを事前の検察庁からの承諾なしに新聞社に渡したという内規違反で解雇されたことについてその解雇が「表現の自由」に違反しているかが争われた。グジャ氏はこの解雇は不当としてモルドバ国内で解雇取り消しの民事訴訟を起こしていたが認められず、その後ヨーロッパ人権裁判所に訴えていた。ヨーロッパ人権裁判所は以下のように述べグジャ氏の解雇は第10条違反にあたるとした*2 。
 「民主社会において政府の行為や怠慢については立法機関や司法機関だけでなく、報道機関や世論などの緊密な監視の下に置かれなければならない。ある情報に関して市民の関心が特に高い場合には、時に法的に科されている秘密保持の義務でさえくつがえすことができる」。

注2)Guja対モルドバ」、2008212日、申請No. 14277/04 欧州人権裁判所

(5)秘密を暴露したことで罪に問われたアメリカ人ジャーナリストはいない
 アメリカの国家安全保障会議(NSC)元高官のモートン・ハルペリン氏が、2014年5月初旬に日弁連と秘密保護法廃止実行委員会などの招きで来日し、東京と名古屋で院内集会や市民集会で講演した。ハルペリン氏はアメリカの核戦略と国家秘密法制の専門家であり、国防総省の高官として沖縄返還交渉に関与した。佐藤栄作首相の密使だった若泉敬氏とも親交がある。また、ハルペリン氏はオープンソサエティの上級研究員として、ツワネ原則の起草にも深くかかわった。
 ハルペリン氏は秘密保護法がツワネ原則に反する点を多数上げたが、とりわけ秘密保護法は市民やジャーナリストら民間人が刑罰に問われる点が特に問題であるとした。アメリカでは、明文の法規定はないが、これまでにジャーナリストが秘密保護法違反の罪で起訴され有罪となったケースはないという。公務員で内部告発した者の保護も十分でないと批判した。

(6)政府に不都合な情報の秘匿を防ぐために
 ジャーナリズムのことを社会の木鐸と呼ぶことがある。社会を教え導くことが報道機関には求められている。その大きな役割が、政府が秘密にしている「不都合な真実」を明らかにしていくことである。
 エルズバーグ氏の内部告発と「ワシントン・ポスト」「ニューヨークタイムス」の記者たちの努力が実らず、ペンタゴンペーパー事件とこれに続くウォーターゲート事件でニクソン大統領が辞任に追い込まれていなければ、ニクソン大統領は再選され、ベトナム戦争は泥沼化し、核戦争にまで発展していたかもしれない。
 政府にとって都合の悪い情報を徹底して秘密にしようとする政治体制は、チェルノブイリ事故後のソビエトの例を見ても、民主政治の根本を危うくする危険性がある。
 ヨーロッパ人権裁判所はこのことを深く自覚し、ジャーナリストやNGO(非政府組織)活動家が政府の隠された情報にチャレンジして情報を入手して公開する過程に形式的な法違反があっても、その情報が公共の討論に貢献し、違反による害が大きくなければ、倫理的な基準に沿ってなされた行為に対して刑事罰を科すべきではないという法理を確立したのである。
 また仮に均衡を欠き、刑罰を科さざるを得ない場合も、表現行為に対する刑罰は罰金に止めるべきであるという判例理論も確立している*3 。
 世界一の厳罰国家となっているアメリカですら、政府の秘密にチャレンジするジャーナリストは処罰しないことを実務運用の根本原則としてきた。
 ジャーナリストや市民活動家を刑務所に送り込もうとしてやまない日本政府とは根本的に違う価値観がヨーロッパとアメリカでは共有されている。ツワネ原則は、このようにしてヨーロッパにおいて発展してきた民主主義と国の安全保障を両立させる考え方をガイドラインとして定式化したものだと言える。秘密保護法は、この決定的に重大な点においても、明らかにこの原則に違反している。

注3)ルハース及びヘーセルス対ベルギー事件(1997年2月24日)や、スチューア対オランダ事件(2003年10月28日)、スリスト対フィンランド事件(2004年11月16日)など

5 秘密法違反の法廷では特定秘密を開示すること(施行令18条)
 特定秘密保護法により起訴された刑事事件の裁判手続において、証拠開示決定がなされた場合には秘密指定を解除しなければならないとされているが(逐条解説57頁)、証拠開示決定に至らなかった場合には、刑事弁護人に対しても特定秘密は開示されないこととなると考えられる。
 逐条解説57頁によると、「かかる検察官による裁判所への提示のほか、当該捜査又は公訴の維持に必要な業務に従事する者以外の者に当該特定秘密を提供することがない」と記述されており、「検察官」「裁判所」は明記されているのに対して、「弁護人」が明記されていない。裁判所がインカメラ手続を経た上で証拠開示決定を行わなければ、「弁護人」に対してのみ公訴事実となっている特定秘密が提供されないことになる。
 ツワネ原則は秘密に関わる裁判手続についても、重要なことを決めている。原則28(a)は「公衆が訴訟手続へアクセスする基本的な権利は、国家安全保障が持ち出されてもこれに依拠して損なわれてはならない。」「 (d)国家安全保障を理由として、公衆の訴訟手続へのアクセスの制限が絶対に必要だとする、公的機関によって発せられるあらゆる主張に対して、公衆は異議を申し立てる機会を有するべきである。」
 刑事訴訟について定める原則29(b)は、「いかなる場合でも、被告人が証拠について精査、反論する機会を持たないまま、有罪判決を下したり、自由を剥奪したりするべきではない。」「(c)法的公正さの点から、公的機関は被告人と被告人の弁護人に対し、その個人が問われている容疑と、公正な裁判を確実に行うために必要なその他の情報を、たとえ機密扱いの情報であっても、原則3〜6、10、27、28に従い、公共の利益を考慮した上で、開示するべきである。」「(d)公正な裁判を保証するために必要な情報の開示を公的機関が拒んだ場合、裁判所は審理を停止、若しくは起訴を棄却すべきである。」と定める。また、民事裁判についても、原則30(b)は、「人権侵害の被害者は、被った侵害についての情報公開を含む、実効的な救済及び補償を受ける権利を有する。公権力は、この権利に矛盾するような方法で、被害者の主張のために不可欠な情報を秘匿してはならない。」と定めている。
 日本国憲法82条は表現の自由など人権に関する裁判の公開を絶対的な要請としており、秘密保全法違反の裁判の公開は絶対的な要請のはずである。しかし、この点について秘密保護法は、刑事裁判と民事裁判に関して裁判所へ特定秘密の情報を提供するインカメラ手続については10条1項ロ、ニにおいて規定しているが、その場合にツワネ原則の定めるような、公開の法廷において特定秘密を公開して審理できることを保障するような根拠規定が欠けている。前述のように、裁判官が証拠開示命令を認めなければ、検察官と裁判官だけに秘密が提示されて弁護人には提供されない裁判が現実のものとなる。また、法には公開の法廷で秘密の内容に言及したことで弁護士も刑事責任を問われるような扱いがなされても、これを食い止める保障がない。
 このような刑事裁判は、実質的武器対等の原則に反し、被告人の防御権に対する不当な制約となる。このような裁判は公正な裁判といえず、自由権規約14条に違反していると言わざるを得ない。

第2 秘密の指定・解除
1 政府は自らの違法行為を秘密指定するな(統一運用基準Ⅱ1、同Ⅲ2(1)、同Ⅲ2(2))
 近現代の歴史を見ると戦争の始まりには必ず政府のウソがあり、そのウソは秘密とされてきた。
 1931年9月18日、柳条湖(りゅうじょうこ)付近で、日本の所有する南満州鉄道の線路が爆破された。関東軍はこれを中国軍による犯行と発表することで、満州における軍事行動と占領の口実とした。しかし、この事件は、関東軍高級参謀板垣征四郎大佐と関東軍作戦主任参謀石原莞爾中佐らが仕組んだ謀略事件であった。
 アメリカ軍が本格的にベトナムに介入するきっかけとなった1964年8月の北ベトナム海軍による魚雷攻撃事件のうち、2回目に起きた8月4日の事件は、8月7日の議会の宣戦布告の理由とされたが、ペンタゴンペーパーズによって、アメリカ側が仕組んだ捏造された事件であったことが明らかになっている。
 2003年2月6日国連でパウエル国務長官が説明したイラクが大量破壊兵器を保有しているという説明は、CIAの情報に基づくとされたが、長官退任後にパウエル氏自身がこの発言は間違いだったと認め、「人生最大の恥」とまで述べている(2004年4月3日BBC)。
 秘密保護法は、政府の秘密を拡大し、民主主義を破壊し、市民の判断を誤らせ、むしろ国の安全保障を根底から危機に陥れる可能性がある。
 本来は、法律の段階で、せめて政令の段階で、特定秘密の指定と解除、廃棄の各段階において、政府の違法行為や汚職腐敗、環境汚染の事実などを秘密指定してはならないことを要件としてきちんと書き込むべきだ。そして、このような事項を違法に秘密指定したり、これを黙認した公務員に対して懲戒責任を問えるようにするべきだ。

2 法令違反の秘密指定禁止は法律政令事項にせよ(統一運用基準Ⅱ1(4))
 運用基準の特に遵守すべき事項として、「公益通報の対象事実その他の行政機関の法令違反の隠蔽を目的として、指定してはならないこと。」が決められた。
 ツワネ原則では、原則10で何を秘密としてはならないかがA-Fに詳細に示されている。この項目は、原則37によって内部告発によって免責される開示情報のリストともなっている。原則10は膨大なので、これを要約した原則37から引用すると「(a)刑事犯罪/(b)人権侵害/(c)国際人道法違反/(d)汚職/(e) 公衆衛生と公共の安全に対する危険/(f) 環境に対する危険/(g) 職権濫用/(h) 誤審/(i) 資源の不適切な管理又は浪費/(j) この分類のいずれかに該当する不正行為の開示に対する報復措置/(k) この分類のいずれかに該当する事項の意図的な隠蔽」とされている。これらの情報を明らかにした者は保護されなければならない。
 ところが、秘密保護法は、3条と別表において、秘密指定の対象となる事項を定めているが、極めて広範な事項が秘密指定の対象とされ、他方でどのような種類の情報を秘密指定してはならないかという観点から定められた規定は皆無である。「何を秘密にしてはならないか」という観点からの規制が欠如し、これと連動する内部告発者の保護の規定が欠如することとなっている。
 隠蔽目的は必要なく、政府の違法行為を秘密指定してはならないことが法規範として明確化されることが決定的に重要である。そのためには、「公益通報の対象事実その他の行政機関の法令違反の事実を指定してはならないこと」を法律、せめて政令のレベルで明記するべきだ。

第3 適性評価
1 医療機関に対する医療情報の照会をするな(統一運用基準Ⅳ5(5))
 医療機関に対して個人の医療情報の照会を行うことは、医師に対して守秘義務違反の情報提供を強要することとなる。

2 適性評価の強制は許されない(統一運用基準Ⅳ3(3)ア)
 適合事業者の従業者についての適性評価は、「契約後当該事業者が特定秘密の取扱いの業務を行うことが見込まれることとなった後に実施する」とされており、まだ契約締結が不確かな「見込まれる」という状況であっても、契約を締結するために適性評価に進んで応じざるを得ない状況を作り出している。

3 適性評価の範囲が無限定だ(統一運用基準Ⅳ5(6)ア)
 運用基準では、面接などで「疑問点、矛盾点その他の事実を明らかにすべき事項がないかどうかを確認することを基本とし、これにより疑問点が解消されない場合等に、公務所等への照会を行うものとする。ただし、調査を適切に実施するために必要があるときは、これらの手続の順序を入れ替えて実施することを妨げない」として、「調査を適切に実施するために必要があるとき」という極めて不明確な要件で、要件充足の判断手続も明らかでないまま、評価対象者の極めて個人的な情報について公務所又は公私の団体に対して調査を行うことが可能とされ、原則と例外が逆になってしまうおそれがある。

第4 第三者機関
1 独立公文書管理監には独立性が欠如している(統一運用基準Ⅴ3(1)ア、内閣府令)
(1)ツワネ原則が求める監視機関の独立性
 ツワネ原則は監視機関について、重要な原則を提供している。安全保障部門には独立した監視機関が設けられるべきである。監視機関は、実効的な監視を行うために必要な全ての情報に対してアクセスできるようにすべきである(原則6,31-33)としている。
 ツワネ原則*4 は第5章において、監視機関のあり方について、詳細に規定している。
 まず、原則 31は、独立監視機関の設置について規定し、「国家がまだ安全保障部門の組織を監視するための独立監視機関を設置していないならば、これを設置するべきである。監視項目には、機関の活動・規則・指針・財務・管理運営が含まれる。このような監視機関は、監視対象機関からは、組織・運営・財政の面で独立しているべきである。」としている。
 次に、原則 32は、任務の遂行のために必要な、情報への無制限のアクセスについて規定する。「 (a)独立監視機関が、その責務を遂行するために必要な全ての情報にアクセスできることは、法によって保証されるべきである。情報の機密性のレベルに関わらず、合理的な安全保障上のアクセス条件を満たしていれば、アクセスに制限を設けるべきではない。
(b)監視機関がアクセスできる情報には以下のものが含まれるべきであり、しかもこれに限定されない。
(i)安全保障部門の機関が保有する記録、テクノロジー、システムの全て。その形式と媒体、その機関によって作成されたものであるか否かは問われない。
(ii)所在場所、備品、施設・設備。
(iii)監視職員が、監視職務に関わりがあると判断した個人が保有している情報。
(c)機密性を保持する立場にある公務員が負っているあらゆる義務は、彼らが監視機関へ情報を提供することを妨げるべきではない。このような情報の提供は、守秘義務を定めた法律又は契約の違反とみなされるべきではない。」
 さらに、原則33は、情報へのアクセスを保証するために必要な権限、資源、手続きについて規定する。「 (a)独立監視機関は、責務を遂行する上で必要とみなされるあらゆる関連情報にアクセスし解釈できるために十分な法的権限を有するべきである。
(i)上記の権限は少なくとも、現在と過去の行政府の成員と公権力の被雇用者及び契約業者に質問し、関連がある記録を要求・検査し、さらにその物理的な所在場所と施設を視察する権利を含むべきである。
(ii)また独立監視機関は、必要な場合には法執行機関による十分な協力のもと、これらの人物を召喚し記録を取り寄せ、責務を達成する上で必要な情報を保有していると判断された人物に、宣誓の上で証言させる権限を与えられるべきである。
(b)独立監視機関は、情報を処理する際と証言を強制する際には、自己負罪に対する保護やその他の適正な法の手続きが求める条件とともに、とりわけプライバシーに関する法律を考慮に入れるべきである。
(c)独立監視機関は、その責務の効率的な実行に関わる情報の特定、アクセス、分析を可能にするために必要な財的・技術的・人的な資源へのアクセスを有するべきである。
(d)法は、独立監視機関が責務を遂行するために必要な情報にアクセスし解釈できるように、安全保障部門の組織による協力を義務付けるべきである。
(e)法は安全保障部門の組織に対し、監視者が責務を達成するために必要と判断した特定の種類の情報を、積極的且つ速やかに、独立監視機関へ開示することを義務付けるべきである。これらの情報には、法や人権基準の違反の可能性についての情報が含まれ、しかもそれだけに限定されるべきではない。」
 原則34では、独立監視機関自身の透明性について規定し、定期的な報告書の作成などを求めている。

注4)オープン・ソサエティ・ジャスティス・イニシアティブ『ツワネ原則』(2013)全文の翻訳は日弁連HPに掲載

(2)独立公文書管理監
 このように、独立監視機関は、対象機関から、組織、運営、財政の面で完全に独立していなければならないこと、この機関は対象機関の保有している情報に対する完全なアクセスの権限が認められなければならないとされている。また、その権限を行使するための尋問などの権限を認め、安全保障部門は独立監視機関には協力しなければならないとされている。
 このような国際水準に照らして検討すると、独立公文書管理監について、内閣府令に設置根拠だけは作られたが、その構成メンバーの選任基準は全く明確にされていない。事前の報道では防衛省、外務省、警察庁の審議官レベルで構成するとされていた。人事などの組織、運営、財政などあらゆる面から見て、秘密指定機関からの独立性が欠如している。秘密へのアクセスも制限されている。
 知る権利と安全保障に関する国際基準であるツワネ原則は、すべての情報に対するアクセスを認められた、独立第三者機関が必要であるとしている。独立公文書管理監はこのような機関に該当しない。制度設計を根本からやり直すべきである。

2 独立公文書管理監の秘密指定行政機関からの出向人事を禁止せよ(統一運用基準Ⅴ3(1)イウ、内閣府令)
 独立公文書管理監は秘密の指定、解除について、行政機関を管理監督するというが、独立性を確保するには、政令レベルせめて運用基準で、秘密指定行政機関に帰るような出向人事は否定しなければ、最低限の独立性も確保できない。

3 秘密開示の権限がない機関では意味がない(統一運用基準Ⅴ3(2)ウ、内閣府令)
 独立公文書管理監が特定秘密の開示を求めても、行政機関は「安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認められない」ときには、理由を疎明すれば開示を拒否できるとされている。特定秘密に対する完全な開示の権限を持たないような、第三者機関は意味がない。

第5 内部通報の実効性が確保されていない
1 政府の法令違反について秘密指定をしてはならないという規定がない以上内部通報には実効性がない(統一運用基準Ⅴ4(2)ア(エ)、同Ⅴ4(2)イ(キ))
 内部通報窓口を19機関と独立公文書管理監に設置したとされるが、法律や政令中に、政府の法令違反について秘密指定をしてはならないという規定がない以上、公務員が、その秘密指定が秘密保護法に違反していると確信できるなどという場合はほとんどあり得ず、公益通報の実効性は全くない。
 ツワネ原則の37項に従い、「(a)刑事犯罪/(b)人権侵害/(c)国際人道法違反/(d)汚職/(e) 公衆衛生と公共の安全に対する危険/(f) 環境に対する危険/(g) 職権濫用/(h) 誤審/(i) 資源の不適切な管理又は浪費/(j) この分類のいずれかに該当する不正行為の開示に対する報復措置/(k) この分類のいずれかに該当する事項の意図的な隠蔽」については、明らかにしても処罰されないことを法ないし政令に明記するべきである。 
2 このままでは内部通報制度は内部告発の封じ込め手段になりかねない(統一運用基準Ⅴ4(2)ア(エ)、同Ⅴ4(2)イ(キ))
 内部通報は公務員が秘密の指定などが秘密保護法等に従っていないと考えたときにできるとされた。しかし、秘密保護法自身が政府の違法行為等について秘密指定を禁止していない以上、公務員が秘密の指定などが秘密保護法等に従っていないと考えられるような場合はほとんど想定できず、公務員が違法秘密と考えた場合も、通報は取り上げられない可能性が高い。そうだとすると、内部通報・市民団体はマスコミなど外部に情報を出ないようにするための封じ込め手段になりかねない。運用基準が定めている内部通報制度には、政府が自らの違法行為を秘密指定してはならないという根本原則が欠落しているため、実効性が欠けたものといわざるを得ない。

# by himituho | 2014-08-19 00:08 | 秘密保護法パブコメ
2014年 08月 14日

【8月18日】秘密保護法パブコメワークショップ

秘密保護法対策弁護団の共同代表の1人である海渡雄一弁護士が講師で、以下のとおり秘密保護法パブコメワークショップを開催します。以下、転載です。
パブコメを出そう!【秘密保護法】パブコメワークショップ・8/18夜:東京しごとセンターへ

昨年12月に国民の猛反対にもかかわらず国会を通過した「秘密保護法」。今年の11月施行に向けて運用基準等に関するパブリック・コメントが7月24日から募集されています(〆切8月24日!)。

パブリックコメントで秘密保護法にNO!の声を集中しましょう!

今回秘密保護法のパブコメは次の3件、
①「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」
②「内閣府本府組織令の一部を改正する政令(案)」
③「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」です。

パブコメ・ワークショップに参加してすぐに書いてしまいましょう!
今回は特に③を中心に議論しパブコメ書きの作業をします。締め切りまで一週間の18日、もうすでに出した人も、まだ悩んでる人も、このワークショップで最後の追い込みの宿題をやり遂げ、政府に秘密保護法NOの声を届けましょう!

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とき 2014 年8 月18 日(月)18:30~20:30
ところ 東京しごとセンター(千代田区飯田橋3 丁目10 番3 号 Tel 03-5211-1571)
◇飯田橋駅から
・JR 中央・総武線「東口」より徒歩7分
・都営地下鉄大江戸線・東京メトロ有楽町線・南北線「A2出口」より徒歩7分
・東京メトロ東西線「A5出口」より徒歩3分
◇水道橋駅から
・JR 中央・総武線「西口」より徒歩5分
◇九段下駅から
・東京メトロ東西線「7番出口」より徒歩8分
・東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄新宿線「3番出口」より徒歩10分

講師 海渡雄一さん(弁護士)

内容
・海渡雄一さんのお話とQ&A/・パブリックコメント作成
資料代 500 円
主催 秘密保護法を考える市民の会
連絡先 秘密保護法を考える市民の会
03-5225-7213(3・11 市民プラザ内)
090-3230-9219(斎藤)

# by himituho | 2014-08-14 19:17 | 関連イベントの紹介


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