【パブコメ・テーマ別】自由権規約勧告を踏まえたパブコメ参考例 |
自由権規約勧告を踏まえたパブコメ参考例
1 はじめに
このパブリック・コメントでは、法律をそのままにして、政令案や運用基準案についてだけ、意見を述べることを求めている。しかし、特定秘密保護法は市民の知る権利を侵害する法律で、自由権規約19条に違反する条文を含んでいる。
特定秘密保護法が自由権規約19条に違反する点について、2014年7月26日、自由権規約委員会より勧告意見が出された。勧告意見の中では、特に以下の点について、自由権規約19条との関係で問題があると具体的に指摘されている。
① 秘密指定の対象となる情報について曖昧かつ広汎な定義しかない点
② 指定について抽象的要件しか規定されていない点
③ ジャーナリストや人権活動家の活動に対し萎縮効果をもたらしかねない重い刑罰が規定されている点
自由権規約委員会からの勧告にしたがって、日本政府はただちに特定秘密保護法を抜本的に見直し、条約違反の点を解消するべきである。少なくとも上記に挙げられた3つの問題点を解消するまでは、特定秘密法を施行するべきではなく、当然その施行令や運用基準も定めるべきではない。
2 問題点1:曖昧な定義
統一運用基準では、秘密指定の対象となる別表該当性について定められている。しかし、統一運用基準は、一見、別表を多少詳細にしたように見えるが、よく読むと以下のように広範かつ抽象的過ぎて解釈運用次第で実質的に無限定となりうるものであり、秘密の定義が曖昧であるという問題点を解消することができていない。
(1) 防衛秘密指定の別表該当性について(統一運用基準Ⅱ1(1))
「情報手段を用いて収集した情報」(別表第1号ロa)「国内外の諸情勢に関する見積もり」(ニa)、防衛力の整備や能力の見積もり、計画、研究(ニbc)など、余りにも広範かつ抽象的である。
(2) 外交秘密指定の別表該当性について(統一運用基準Ⅱ1(1))
「各国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針」、「ハaからcまでに掲げる事項に関する情報の収集若しくは分析の対象、計画、方法、情報源、実施状況又は能力」など、余りにも広範かつ抽象的である。
(3) テロ活動別表該当性について(統一運用基準Ⅱ1(1))
「重要施設、要人等に対する警戒警備」「サイバー攻撃の防止」「情報収集手段を用いて収集した情報」など、余りにも広範かつ抽象的である。
(4) 特定有害活動(スパイ活動)別表該当性について(統一運用基準Ⅱ1(1))
「重要施設、要人等に対する警戒警備」「サイバー攻撃の防止」「情報収集手段を用いて収集した情報」など、余りにも広範かつ抽象的である。
3 問題点2:抽象的な秘密指定の要件
(1) 秘密指定禁止条項からの目的要件の削除(統一運用基準Ⅱ1(4)イ)
「公益通報の対象事実その他の行政機関の法令違反の隠蔽を目的として、指定してはならないこと」は、「隠蔽の目的」の有無にかかわらず、行政機関の法令違反行為等の秘密指定禁止事実に客観的に該当する情報の指定を禁止する条項に変更するべきである。また、このような重要な秘密指定の要件は、法律、せめて政令のレベルで明記するべきである。
(2) 指定禁止対象カテゴリーの追加(統一運用基準Ⅱ1、同Ⅲ2(1)、同Ⅲ2(2))
秘密指定禁止の対象カテゴリーが不足している。特定秘密の指定と解除、廃棄の各段階において、政府の人権侵害行為、違法行為、汚職腐敗、その他の刑事犯罪、公衆衛生や安全に関する事実などを秘密指定してはならないことも、本来は法律の段階で、せめて政令の段階で、要件としてきちんと書き込むべきである。
(3) 違法指定をした公務員への制裁条項の追加(統一運用基準Ⅱ1(4)ア)
「当該情報以外の情報を指定する情報に含めないようにすること」では不十分である。法令違反の事実など、秘密指定が禁止されている事実について違法な秘密指定を行った公務員、または、これを黙認した公務員に対して懲戒責任を問えるようにし、違法な秘密指定に対しては個人の責任を追及できるようにするべきである。
4 問題点3:重い刑罰によるジャーナリスト等への萎縮効果
萎縮効果を解消するため、ジャーナリスト、研究者、環境活動家、人権擁護者その他が安全保障を害さない正当な公益を有する情報を公開することは、処罰対象から除外されるということを法律で明記するべきである。また、処罰する際には、当該情報の公開により生じる損害が当該情報の有する公的な価値よりも上回るということを国が証明するよう法律で義務づけるべきである。
5 おわりに
この秘密保護法の下では、市民が知るべき情報が特定秘密に指定されてしまうことは防げない。自由権規約19条に違反する点を修正しない限り、法律を施行するべきでない。よって、政令や運用基準の制定そのものに反対し、仮に制定するとしても前提として法律の抜本的見直しが不可欠である。


