2022年 04月 06日
【声明】経済安保法案による秘密保護法制の拡大に反対する声明 |
経済安保法案による秘密保護法制の拡大に反対する声明
2022年4月6日
秘密保護法対策弁護団
1 本日2022年4月6日、衆議院内閣委員会において、岸田政権が国会に提出した「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案」(以下、「経済安保法案」という。)について、立憲民主党の提案していた「自由かつ公正な経済活動を維持する」という観点からの修正を拒否し、原案が採決された。経済安保法案は、明日7日の本会議で審議・採決される見通しとされている。
2 経済安保法案は、「安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進することを目的」とし、安全保障の確保に関する経済施策として、①特定重要物資の安定的な供給の確保(サプライチェーンの強化)、②特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度(サイバー攻撃等から防御する基幹インフラ整備)、③特定重要技術の開発支援、④特許出願の非公開に関する制度を創設することを内容としている(法案1条)。
しかし、経済安保法案は、経済活動が軍事・安全保障目的に従属することとなり、政府が自由な経済活動に介入してこれを規制し、学問・研究の自由を侵害するものである上、秘密保護法制の拡大をするという点でも重大な問題がある。特定秘密保護法に反対し、その運用を監視している私たち秘密保護法対策弁護団としては、この秘密保護法制の拡大の問題に焦点を絞って、以下、反対意見を述べる。
3 経済安保法案により、秘密保護法制が拡大され、企業秘密の範囲が不当に拡大される。上記の①、③、④については、民間人に対しても、「事務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない」として、罰則付きで守秘義務を課すものとなっている。
しかも、この「秘密」は、特定秘密保護法の「特定秘密」に限定されるものではなく、本来は経済活動の自由に属する「特定重要物資」、「特定重要技術」、「特許出願情報」を保有する者を対象として「事務に関して知り得た秘密」とだけ規定されるのみで、「秘密」の範囲が不当に拡大されるおそれがある。軍事技術に転用が可能な技術とのレッテル貼りをすれば、あらゆる技術が対象となりかねず、既に大川原化工機事件のような冤罪事件も生じている。
しかも、国会に設けられた情報監視審査会の監視対象にすらならず、秘密の範囲の拡大を防止する歯止めがない。
そして、秘密漏洩・盗用に係る処罰条項によって、特定重要物資の安定的な供給の強化については、取扱業者に対して、生産、輸入 、保管状況等について国が調査する権限を持つとされるため、企業活動に対する過度な介入・統制を招きかねない。
さらに、先端的な特定重要技術の研究開発の官民協力については、基本指針に基づき、「特定重要技術」(いわゆる軍事技術)の研究開発等に対し政府が支援を行い、官民パートナーシップと称する「協議会」によって、軍事技術につながる特定重要技術の研究開発を政府が一元的に管理・統制するシステムとなるおそれがある。官民協議会では、研究開発に必要な資料や説明などの協力を求めることができ、研究者らには「求めに応じる」よう努力義務が課された。知り得た機微情報は、研究者らにも国家公務員と同等の守秘義務が求められる。
これは、官民と大学・研究機関の協力による秘密の軍事技術の開発につながる提案である。このような開発体制に巻き込まれた研究者は、守秘義務の名の下に、軍事技術の研究からの離脱も、意見表明をすることも許されなくなるおそれが高い。これはユネスコの科学及び科学研究者に関する勧告で認められている、軍民両用技術の開発における「研究を離脱する権利と責任」「意見表明と報告の権利と責任」を無効なものとしてしまう危険性がある。
4 以上により、私たち秘密保護法対策弁護団は、経済安保法案による秘密保護法制の拡大、すなわち、特定秘密保護法によって主に官に対して課された秘密保護法制が、民間企業や大学・研究機関にまで拡大されることに反対する。上記の懸念を払しょくできるように経済安保法案を抜本的に修正するか、そのような修正がなされないのであれば廃案とすべきである。
以上
by himituho
| 2022-04-06 17:14
| 弁護団の声明など


