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2023年 03月 16日

【声明】企業版秘密保護法案(防衛省調達装備品の開発・生産のための基盤強化法案)に反対する声明

企業版秘密保護法案(防衛省調達装備品の開発・生産のための基盤強化法案)に反対する声明
2023年3月16日
秘密保護法対策弁護団
デジタル監視社会に反対する法律家ネットワーク

1 法案の内容
 「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案」(以下、「本法案」という。)が、本年2月10日に国会に提案された。
 第1に、本法案は、防衛(兵器)産業の位置付けを明確化し、兵器(この法案では「装備品等」と名付けられているが、その本質は兵器であるので、「兵器」と呼ぶ。)の開発・生産のための基盤を強化することが一層重要となっていることを明確化するための法案と説明されている。そのため、防衛大臣が兵器の開発と生産の基盤の強化に関する基本方針を定め公表するとされる(第1条、第3条)。
 第2に、任務に不可欠な兵器を製造する企業に対して、サプライチェーン調査(第8条)を定め、調査により、防衛省がサプライチェーンリスクを直接把握できるようにするとされる。企業は防衛省の調査に対して回答の努力義務を負い、企業の調達先を国が直接把握するシステムを構築しようとしている。そして、この調査の結果を以下の措置にも活用し、基盤の強化を図るとしている。
 第3に、兵器の製造に資する企業の取組について、サプライヤーも含め、経費を直接的に支払うことを可能とする。そのことにより、様々なリスクへの対応や兵器生産基盤の維持・強化を図るとしている。そして、基盤強化の措置(第4条~第7条)として、防衛省は、防衛大臣から計画の認定を受けた事業者に対して、①供給網の強靱化 (サプライチェーン)、②製造工程効率化、③サイバーセキュリティ強化④事業承継等についての経費を直接支払うことができる。また、装備移転円滑化措置(第9条~第25条)として、防衛省が、装備品等の仕様・性能等を変更する費用に対して助成金を交付するシステムを構築するとしている。さらに、装備品製造等事業者に対して、日本政策金融公庫による貸付けについての配慮をするとしている(第26条)。兵器生産企業に対する国の直接・間接の資金供与を可能にする仕組みをつくろうとしている。
 第4に、製造施設等の国による保有について規定し(第29条~第33条)、上記の措置を講じてもなお、他に手段がない場合、国自身が製造施設等を保有し、企業に管理・運営させることを可能とするとしている。兵器の国産政策を維持するため、倒産しかかっている兵器産業を国有化しようというのである。
 第5に、装備品等契約における秘密の保全措置について規定し、兵器等の機微情報の保全を強化するとしている(第27条、第28条)。

2 本法案は企業版秘密保護法であること
 我々は、本法案に対して、特に上記第5の、兵器に関する情報保全を強化するとされる点などについて危惧される点を指摘し、その提案に反対するものである。
 本法案は、装備品等契約を履行させるため、装備品等又は自衛隊の使用する施設に関する情報であって、公になっていないもの(自衛隊法により隊員が漏らしてはならないこととされる秘密に該当する情報に限る。)のうち、その漏えいが我が国の防衛上支障を与えるおそれがあるため特に秘匿することが必要であるもの(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法に規定する特別防衛秘密及び秘密保護法に規定する特定秘密に該当するものを除く。)を取り扱わせる必要があると認めたときは、これを「装備品等秘密」に指定し、その指定の有効期間を定めた上で、当該装備品等秘密を当該契約事業者に提供することができると定め、「装備品等秘密を取り扱う業務を行わせる従業者を定め、当該従業者の氏名、役職その他の防衛大臣が定める事項を防衛大臣に報告しなければならない。この場合において、契約事業者は、あらかじめ当該従業者の同意を得るものとする。」とし、秘密保護のための必要な措置を求めている。
 そして、「装備品等秘密の取扱いの業務に従事する従業者は、その業務に関して知り得た装備品等秘密を漏らしてはならない。装備品等秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。」と定め、企業の従業員にも法的な守秘義務を課している。
 さらに、本法案37条は、サプライチェーンについて報告又は資料の提出の求めに係る事務に関して知り得た秘密を正当な理由がなく漏らし、又は盗用した者は、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処することとしている。また、本法案38条は、装備移転支援業務に関して知り得た秘密を漏らし又は盗用した者と装備品等秘密を漏らした者は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処するという刑事罰を定めている。
 このような法制度は、処罰の対象とされる「装備品等秘密」の要件が、極めてあいまいであり、国の特定秘密保護制度を兵器産業従事者にまで拡大するものであって、「企業版秘密保護法」を制定しようとするものにほかならない。

3 結論
 現在、政府が防衛3文書により大軍拡を図る方針を明らかにしている中で、その当否をめぐる国民的な討論が必要である。防衛省が調達している兵器についても、その必要性が厳しく吟味されなければならない。
 ところが、本法案は、防衛省が調達している兵器技術の内容を秘密にし、これに関する国民的な討論を著しく萎縮させる効果を持っている。国民の知る権利と表現の自由、ひいては我が国の民主主義を危機へと導く「企業版秘密保護法」の制定に強く反対する。
 また、兵器産業への国の資金による援助、ひいては国有化の提案は、経営危機に陥っている兵器産業の救済のための法案といわざるを得ない。そして、その経済的なコストは莫大なものとなり、日本の財政破綻を招きかねない。防衛3文書の目指す大軍拡は、戦争を食い止めるのではなく、国際的な緊張を高め、むしろ戦争の危機を拡大する。本法案は、防衛3文書の目指す大軍拡政策の一環であり、法案の目的と内容そのものに深刻な問題がある。
以上

by himituho | 2023-03-16 13:34 | 弁護団の声明など


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