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2018年 05月 31日

【声明】民主制と人権保障を破壊する緊急事態条項改憲に反対する声明

民主制と人権保障を破壊する緊急事態条項改憲に反対する声明
2018年5月28日
秘密保護法対策弁護団

1 自民党憲法改正推進本部案公表される
 3月25日,自由民主党憲法改正推進本部は,党大会において、憲法9条の改正などに加え、緊急事態対応について次のように提案している。
 すなわち、憲法73条の2として「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。」,憲法64条の2として,「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議員の出席議員の三分の二以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。」を「条文イメージ(たたき台素案)」として決定し,「今後、衆参憲法審査会や各党、有識者等の意見を踏まえ、具体的条文案の完成を目指す。」としている。憲法9条の改正には憲法の平和主義を掘り崩す重要な問題点が指摘されているが、緊急事態条項は、立憲主義と人権保障を根本から掘り崩す危険性がある。

2 災害には戦争災害も含まれる
 まず、自民党改憲案73条の2が適用される事態は,「大地震その他の異常かつ大規模な災害」とあり,一見「外部からの武力攻撃」や「大規模テロ・内乱」は対象に含まれないかのように読める。しかし、憲法改正推進本部のまとめにはこれらの事態も対象にすべきとの「意見」があったとされている。自民党自らが、自然災害に限定することを約束していないのである。
 国民保護法に「武力攻撃災害」が規定されているように,「災害」の中に外部からの武力攻撃・テロ・内乱等を含ませる解釈も十分可能であるし,「法律の定めるところにより」として包括的な法律への委任を定めているので、国民保護法のように,法律で外部からの武力攻撃・テロ・内乱等も「災害」と規定することも可能なのである。
 従って、この憲法改正案は、大規模自然災害に限られるとみるべきではなく戦争災害を含む緊急事態全般を想定した改正案だと見なければならない。

3 災害時に緊急事態政令は有害無益であり、改憲には立法事実がない
 大規模自然災害に対しては,既に災害対策基本法,大規模地震対策特別措置法,原子力災害特別措置法,新型インフルエンザ特別措置法,災害救助法,警察法,自衛隊法等の法律レベルでの対策が整備されている。災害対策において重要なことは事前の十分な準備と災害後におきる事態に即応した機敏な対応であり、それらはこれらの法律の解釈運用によって十分まかなうことができる。逆に、事前に準備していないことを、災害時に思いつきで対応しようとすると、現地のニーズに対応しない指示が出て混乱を招くことがある。このことは、福島原発事故の際に、メルトダウンの事実やSPEEDIによる被曝予測データが隠され、結果として飯舘村など汚染地域に長期に人が残る原因となり、無用な被曝を住民に強いたことからも、裏付けられる。
 このように、災害時にこそ、正しい情報を速やかに市民に知らせることこそが、市民の安全を図る上で重要である。「災害時の混乱を押さえるために」という名目で政府中枢に情報と権限を集中し、情報の流れを止め、知る権利を制約するような政令を出すことは百害あって一利なしであると言わざるをえない。
 外部からの武力攻撃・テロ・内乱等への対処についても、正確な情報を市民に知らせることが対処の基本であり、立憲主義が損なわれる危険を冒して市民の知る権利を制約することは、このような事態を市民の英知を活かして乗り越えることを不可能にしてしまう。

4 表現の自由・知る権利をはじめとする人権制限のやりたい放題に
 自民党改憲案73条の2が内閣に制定権を与える「政令」は,現行の憲法73条とは別に定めることからすると、同条に定める憲法や法律の規定を実施するための執行命令や法律の委任に基づいて定める委任命令ではなく「独立命令」と呼ばれるもので,法律と同一の効力を有する政令と解される。そして、自民党改憲案73条の2は、緊急時に内閣に立法権を与えるのと同じことになるため、いわゆる非常事態宣言時に政府が出す命令と同様の効果を持つことになると考えられる。日本においては、1923年の関東大震災の際に、朝鮮人が凶悪犯罪を画策しているとデマを流されて「治安維持の為にする罰則に関する件」という緊急勅令を出し、それを前身として治安維持法が制定され、その厳罰化のための緊急勅令が1928年に制定されている。
 ドイツでは、ヒトラーが1933年に政権をとると、国会を解散し、4年間の政権委任を訴える選挙キャンペーンを行い、この選挙中の2月27日にドイツ国会議事堂放火事件が発生した。この放火事件は、今日ではナチスによるものであったとする見解が有力であるが、ヒトラーは共産主義者によるものと濡れ衣を着せ、大統領に要請し、共産主義暴動の発生に対応するためとして、「民族と国家防衛のための緊急令」(まさにこれが緊急事態政令である)などを布告させた。ヒトラーはこの大統領令に基づいて、選挙期間中に国会議員を含む多数の共産党員・社会民主員を逮捕・予防拘禁した。国民からすると、いわば候補者の情報について知る権利が害されているという異常な選挙の結果、ナチスは288議席、連立を組む国家人民党は52議席を得て、議会の過半数を獲得した。そして、ヒトラーは共産党と社民党の議員が出席できない状態で、ポツダムにおいて3月21日議会を開き、「民族および国家の危難を除去するための法律案」(全権委任法・授権法)を国家人民党と共同で提出した。この法律は議会から立法権を政府に移譲し、政府の制定した法律は国会・第二院や大統領権限を除けば憲法に背反しても有効とするものであった。この法律は、形式的にはワイマール憲法の改正手続を践んでいるが、前後の経過と内容から見て、近代的な立憲主義を公然と否定した独裁立法であり、謀略と弾圧によって実現され、この体制はドイツの敗戦まで回復しなかったのである。
 また、近年のタイでは、非常事態宣言をすると、メディアを閉鎖することができてしまう体制となった(「タイのメディア規制」(2010年08月17日朝日夕刊))。首相時代のタクシン氏は名誉棄損罪や広報予算の配分でメディアに介入した。同氏が排除された06年クーデター後は、刑法の不敬罪適用が急増するなど反タクシン側による体制批判封じが強化された。07年にはコンピューター犯罪法が施行され、非常事態宣言下では治安当局がメディアの閉鎖などを命令できるようになった。そして、現在、議会が停止されているが、2018年11月には選挙が実施される見込みであるものの、極めて知る権利が制限されている中では、公正な選挙が行われるとは考えにくい。
 自民党改憲案73条の2の政令制定権発動の要件である,「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるとき」という事態の認定も内閣の専権に委ねられていて,戦争災害を含みうるし、国会あるいは議員・特別委員会の関与等民主的手続が全く規定されていない。
 政令制定の対象事項についても何等の限定がなく、言論・出版・放送・インターネット発信等の検閲・制約、刑事訴訟法に定めた身体拘束・家宅捜索・通信傍受など刑事手続における令状主義の保障の無効化など憲法に反する人権制限政令(立法)が作りたい放題となり、知る権利が侵害される可能性がある。
 草案では、事後に国会の承認が求められているが,承認を得られない場合に効力が失われるとされておらず,国会の承認を得るための短期間の具体的な期間の定めもない。議員の任期の特例と相まって政権与党の都合で人権を制約する政令の効力が永続する可能性があると言わなければならない。行政機関への民主的統制等が不可能となり、立憲主義が崩壊する可能性がある。そうした事態を避けるための歯止めが全く規定されていない。

5 緊急事態を理由に知る権利を制約すれば、国の進路を誤り、これを是正することができなくなる
 アメリカ軍がベトナムに本格的に介入するきっかけになった1964年8月の、北ベトナム海軍によるトンキン湾の魚雷攻撃事件の2回目は、いわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」の中に「アメリカ側で仕組んで捏造した事件だった」と暴露されている。エルズバーグ氏が内部告発し、これをニューヨークタイムスとワシントンポストが報じたからこそ、ベトナム戦争の真相などがアメリカ国民に知られ、アメリカ国民は戦争を遂行し続けるかどうかについて、これらの正しい情報をもとに政策決定を下すことができたのである。国家安全保障に関わる秘密情報が公表されたことにより、正当な国家安全保障が図られたといえる。
 ひるがえって日本の場合はどうか。1931年9月18日、柳条湖(りゅうじょうこ)付近で、日本の所有する南満州鉄道の線路が爆破された。関東軍はこれを中国軍による犯行と発表することで、満州における軍事行動と占領の口実とした。しかし、この事件は、関東軍高級参謀板垣征四郎大佐と関東軍作戦主任参謀石原莞爾中佐らが仕組んだ謀略事件であった。国際連盟からは侵略行為と指摘されたが、日本では、太平洋戦争終結に至るまで、爆破は張学良ら東北軍の犯行と信じられていた。
 さらに、戦前の軍機保護法の下では、ミッドウェーの海戦で、かろうじて生還した息子の話を近親者に話したことが軍事上の秘密を漏洩したとして、検挙された。その話の内容は、「多くの戦艦が旧式で奇襲に適さなかった、新鋭艦「飛龍」のみが、先進艦隊と行動を共にしていた。被弾し、一時間で沈没、艦長は割腹自殺を遂げた。乗組員1500名中、生還したのはわずか5名である。飛行機の損害は100機をくだらない」などと言うものであった。戦況を伝えること自体が全面的に秘匿されていたことがわかる(「外事警察概況」八 昭和17年(横浜弁護士会「国家秘密法」168頁))。このような情報統制のもとで、日本国民は敗色の濃い無謀な戦争の真実を知ることができず、破滅への途を突き進んでいったのである。
 緊急事態であるから、人権を制限し、事態を秘密になければならないという発想は近代的な国民主権、知る権利の発想からはほど遠いものであり、国の進路を誤る間違った考え方であると言わざるを得ない。

6 人権保障回復のための制度的保障がない
 自民党改憲案73条の2のように、憲法で法律と同一の効力を有する政令制定権を認めた場合,国会の立法権が侵害され,かつ民主主義システムの回復が困難になるおそれもある。このように,基本的人権制約の可能性が高まるにもかかわらず,改正案には基本的人権侵害への歯止めがない。なお,内閣の政令制定権自体は,災害対策基本法や国民保護法において既により厳格な要件の下に認められている。

7 議員任期の特例は必要がない
 次に自民党改憲案64条の2が規定する議員の任期の特例については,適用される事態の認定を国会自身が行うこと,「法律の定めるところにより」設けることができること,任期特例のより延長できる期間の制限がないこと等が問題であり,これらについて憲法上の歯止めが全くない。
 政権維持のために「大地震その他の異常かつ大規模な災害」が利用されかねず,かつ是正する手段がない状態を生み出しかねない。
 現行の憲法,法律の規定を見ると,参議院の通常選挙の実施が困難な場合には選挙を延期しても非改選議員が二分の一在任しており議決に必要な定足数を充たすので参議院の審議に影響はない。衆議院の解散総選挙が困難な場合には参議院の緊急集会により対応できる。衆議院の解散総選挙・参議院の通常選挙が同時となった場合にも参議院の緊急集会で対応できる。そうすると、日本国憲法は、衆議院議員が全員存在せず、参議院も半分しか存在しないという場合まで想定し、許容しているというべきなのである。
 なお,衆議院の任期満了による選挙は日本国憲法下で一度しか行われておらず,かつ選挙が延期となった事態は阪神淡路大震災と東日本大震災の二回だけであり,衆議院の任期満了選挙と大震災が重なる確率は極めて低い。こうした極めて例外的な場合であっても,公職選挙法57条の規定する繰延投票の制度,あるいは法律の改正により具体的事態に即した対処を図ることが考えられる。いずれにしても,立憲主義が損なわれる危険を冒してまで憲法で議員の任期の特例を規定する必要性は全くない。
 この自民党改憲案64条の2についても、対象は大規模自然災害に限られないことは,「大地震その他の異常かつ大規模な災害により」という規定は自民党改憲案73条の2と同様である。

8 国際人権基準にも反する
 国際人権法では自由権規約第4条において緊急事態における人権規定の一時的な効力の停止について定められている。しかし、同条では、限界と手続きを明確に規定して、政府による恣意的な判断を可能な限り排除している。
 第一に、自由権規約4条1項では「事態の緊急性が真に必要とする限度において」という文言で比例原則の厳格な適用が明確にされており、第二に、同項では「人種、皮膚の色、性、言語、宗教又は社会的出身のみを理由とする差別を含んではならない」との無差別原則も明確にされている。
 さらに第三として、同条2項では、「生命に対する権利(自由権規約6条)」、「拷問等の禁止(7条)」、「奴隷制度等の禁止(8条)」、「契約不履行を理由とする拘禁の禁止(11条)」、「刑罰不遡及の原則(15条)」、「人として認められる権利(16条)」、「思想良心、宗教の自由(18条)」といった効力を停止することのできない重要な人権を明確にしている。
 しかし、改正案73条の2には、これらの緊急事態条項の効果に対する限界が明確に定められておらず、特に自由権規約4条2項のように、緊急事態であっても効力が停止できない人権条項を明確にしていない点において、自由権規約に反するといわざるを得ない。
 自由権規約4条2項では、「知る権利」(19条2項)が明記されていないが、柳条湖事件・トンキン湾事件(ベトナム戦争)・イラク戦争(大量破壊兵器所持疑惑)における軍事情報に関する情報隠し、ならびにチェルノブイリ原発事故及び福島第一原発事における放射能汚染に関する情報隠しによって、甚大な被害が生じてきた現代史の経験に鑑みれば、現代において、「知る権利」もまた緊急事態においても効力を停止しえない権利として、同項に明記されるべきことは明らかである。
 国連自由権規約委員会は、2019年に日本政府第7回報告書審査を予定しており、その討議事項(リストオブイシューズ)として緊急事態条項も挙げられているところである。当弁護団としては、当審査にあたって、他の市民団体とともに改正案の問題点とともに、「知る権利」の現代的意義を踏まえた自由権規約4条2項の解釈がなされるべきであることを、国連に対して強く訴えていく構えである。

9 我々は立憲主義を破壊し、基本的人権保障のシステムを不可逆的に破壊する改憲案に反対する
 よって、秘密保護法対策弁護団は,自由民主党憲法改正推進本部が示した憲法第73条の2,第64条の2を内容とする緊急事態に対処する憲法改正は、国民の知る権利・表現の自由を中核とする人権保障制度の根幹を崩壊させる危険性があり、これに強く反対する。
以 上

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by himituho | 2018-05-31 17:34 | 弁護団の声明など
2016年 09月 21日

【声明】共謀罪法案(「テロ等組織犯罪準備罪」)の国会提案に反対する声明

共謀罪法案(「テロ等組織犯罪準備罪」)の国会提案に反対する声明
-秘密保護法×共謀罪×盗聴は監視社会をもたらす-

1 政府による新法案の国会提出検討とその断念
 報道機関は、政府が、2003、2004、2005年の3回に渡り国会に提出し、日弁連や野党の強い反対で廃案となっていた共謀罪規定を含む法案の修正法案をまとめ、今臨時国会に提案を検討していると報じた。
 新法案では、「組織犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」を新設し、その略称を「テロ等組織犯罪準備罪」とする。新法案を2003年の政府原案と比較すると、適用対象を「団体」とされていたものを、「組織的な犯罪集団」とし、団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が死刑若しくは無期若しくは長期4年以上の懲役若しくは禁固の刑が定められている罪等を実行することにある団体と定義するとされる。
 また、犯罪の「遂行を二人以上で計画した者」を処罰することとし、「その計画をした者のいずれかによりその計画にかかる犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の当該犯罪の実行の準備行為が行われたとき」という要件を付すとされる。
 その後、市民が新法案にいち早く反対の声を上げたためか、政府は、2016年9月16日、臨時国会への法案の提案はひとまず断念した。しかし、政府は提案そのものを断念したわけではなく、予断を許さない状況である。

2 なぜ共謀罪は危険なのか
 そもそも犯罪とは、人の生命、身体、財産などの法益が侵害され、被害が発生することだと考えられている。法益の侵害又はその危険性が生じて初めて事後的に国家権力が発動するというシステムが、近代的で自由主義的な刑事司法制度の基本である。
 人は、様々な悪い考えを心に抱き、口にもすることがあるかもしれない。しかし、大多数の人は、自らの良心や倫理感から、これを実行に移すことはなく、犯罪の着手に至らないのである。
 我が国の刑事法体系が、犯罪の処罰を「既遂」を原則とし、必要な場合に限って「未遂」を処罰し、ごく例外的に極めて重大な犯罪に限って、着手以前の「予備」等を処罰しているのは、刑事法が「悪い意思」を処罰するのではなく、法益侵害の現実的危険性がある「行為」を処罰する法益保護主義に基づくものである。
 共謀罪は、刑法の基本原則を否定するものであり、極めて危険である。

3 やはりこれは「共謀罪」だ

 新法案の「計画」は、旧法案の「共謀」の言換えにすぎず、どのような行為を「準備行為」とするかについて、明確な限定も付されていない。そのため、例えば生活費のための預金の引き出しであっても、「(犯罪資金の)準備行為」とされかねない。結局、「計画」(共謀)だけで処罰することは、元の政府案と変わりがない。
 また、旧法案では、適用対象が単に「団体」とされていたが、新法案では、「組織的犯罪集団」とされ、その定義は、「目的が長期4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」とされる。しかし、捜査機関による法律の解釈によっては処罰される対象が拡大する危険性が高い。例えば、現在、高江ではヘリパットの建設に抵抗して、市民が座り込みを続けており、これに対して警察は全国から機動隊を動員して警察権を濫用し、多数の市民を負傷させ、逮捕者も出ている状況であるところ、これらの抗議活動が、組織的な業務妨害行為をする組織的犯罪集団の活動と見なされ、摘発の対象とされる可能性がある。また、原発の再稼働に抗議するような活動についても、同様に、摘発の対象とされる可能性がある。
 政府の修正によって、人権侵害の危険性が除かれたとは、到底評価できない。

4 秘密保護法で導入された共謀罪の危険性
 2013年12月に成立した「特定秘密保護法」にも、共謀や煽動を罰する規定が既に盛り込まれていた。
 私たち秘密保護法対策弁護団は、この秘密保護法に強く反対し、その廃止を求めてきた。特に、秘密保護法に盛り込まれた、共謀や煽動を罰する上記規定の存在は、国にとって不都合な事実を明らかにする内部告発やこれを報ずるジャーナリズムに大きな萎縮効果をもたらし、これにより市民の知る権利を制限し、民主主義の機能不全をもたらすことは明らかである。

5 共謀罪の制定は盗聴の拡大をもたらす
 共謀罪法案が成立すれば、警察当局は、秘密保護法違反の共謀罪を含む共謀罪全体について通信傍受(盗聴)の対象とすることを求めて来るであろう。既に産経新聞は2016年8月31日の「主張」において、「(共謀罪)法案の創設だけでは効力を十分に発揮することはできない。刑事司法改革で導入された司法取引や対象罪種が拡大された通信傍受の対象にも共謀罪を加えるべきだ。テロを防ぐための、あらゆる手立てを検討してほしい。」とまで述べている。
 人と人とが犯罪を遂行する合意をしたかどうかや、その合意の内容が実際に犯罪に向けられたものか、実行を伴わない口先だけのものかどうかの判断は、犯罪の実行が着手されていない段階では、極めて困難である。そして、検挙しようとする捜査機関の恣意的な判断を容れる余地がある。人と人との意思の合致によって成立する共謀罪の捜査は、会話、電話、メールなど人の意思を表明する手段を収集することとなる。そのため、捜査機関の恣意的な検挙が行われたり、日常的に市民のプライバシーに立ち入って監視したりするような捜査がなされるようになる可能性がある。
 秘密保護法違反の共謀罪が、通信傍受(盗聴)の対象とされれば、政府の違法行為や腐敗を暴く内部告発・調査報道は極めて困難となる。

6 秘密保護法は廃止、共謀罪は新設阻止
 秘密保護法と、今般の刑事訴訟法改正に盛り込まれた盗聴の拡大に、さらに共謀罪の新法案が加われば、それらはセットとなって、監視社会をもたらし、市民活動に対する萎縮効果を生じさせ、ひいては、民主主義的な政治プロセスの崩壊を招きかねない。
 政府は、同年9月16日、臨時国会への新法案の提案はひとまず断念したと報道されている。しかし、政府が提案そのものを断念したわけではない。政府は、10年前に成立させられなかった修正案よりも、さらに後退した法案を出してこようとしており、予断を許さない状況である。
 私たち秘密保護法対策弁護団(構成員約400名)は、敢然とこれに立ちふさがり、秘密保護法の廃止を求める同時に、共謀罪法案と盗聴拡大を阻止するため、共謀罪法案の国会提案に強く反対するものである。

2016年9月21日
秘密保護法対策弁護団       
共同代表  海 渡  雄 一
同     中 谷  雄 二
同     南    典 男

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by himituho | 2016-09-21 23:00 | 弁護団の声明など
2015年 06月 02日

【声明】戦争法制の整備に反対する声明

戦争法制の整備に反対する声明
「秘密法の下で戦争法制の発動の根拠は秘密にされる」


1 はじめに
 政府は、本年5月14日、自衛隊法など安全保障関連の10法案を一括して改定する「平和安全法制整備法」と「国際平和支援法」(以下、併せて「戦争法制」という。)を閣議決定し、国会に提出した。
 しかしながら、そもそも、この戦争法制の前提となる昨年7月1日の閣議決定は、集団的自衛権の行使の禁止、海外での武力行使を禁止するための武力行使一体化論などの枠組み等憲法第9条に関する歴代政府の憲法解釈を一内閣の独断で変更したものであり、憲法第9条の条文解釈の限界を超えるものである。また、憲法第96条の改憲手続によらずに、閣議決定および戦争法制の整備により憲法第9条の実質的な改憲を行うことは、立憲主義の原理に反し、違憲無効である。
 さらに、特定秘密保護法(以下「秘密保護法」という。)の下では、戦争法制における武力行使の要件である自衛の措置の三要件に該当するか、重要影響事態や国際平和共同対処事態を認定して自衛隊を海外に派遣できるのかを判断するために必要な情報が、防衛や外交等に関する特定秘密に指定され、政府が恣意的に作出した情報に基づき戦争参加が決定される危険性がある。

2 戦争法制がもたらす2つの大きな変化
 戦争法制のポイントは、以下の2点である。
(1) 第一に、日本が戦争に参加するときの条件が緩められるということである。
 これまでは、日本が武力を行使して戦争に参加できるのは、「武力攻撃事態」(日本に対する武力攻撃が発生した場合)のみとされてきた。個別的自衛権の行使である。
 しかし、戦争法制により、日本は、「武力攻撃事態」に加え、「存立危機事態」(武力攻撃事態法改正案第2条4号)においても武力を行使して戦争に参加することができるようになる(自衛隊法改正法案第76条2号)。すなわち、日本に対する武力攻撃が発生していなくても、日本と密接な関係にある外国に対する攻撃が行われていれば、日本は集団的自衛権の行使として武力を行使して、戦争に参加することができるようになる。
 さらに、これまでは自衛隊が後方支援活動を行うのは、日本国の周辺地域(周辺事態法)やイラクの特定の地域等(特措法)に限定され、活動場所も「後方地域」や「非戦闘地域」という形で限定されていたのに対し、今回の戦争法制では、「現に戦闘行為を行っている現場ではない場所」であれば、戦場のすぐそばであっても支援活動を行うことになる。
(2) 第二に、日本が平和維持活動等において武器を使用する条件が緩められ、なし崩し的に戦争に参加しやすくなるということである。
 戦争法制には、「存立危機事態」「重要影響事態」「国際平和共同対処事態」以外の「平時」における自衛官の武器使用権限の拡大も含まれている。すなわち、外国軍隊の武器等の防護(自衛隊法改正法案第95条の2)やPKO活動を含む国際平和協力活動での安全確保活動や駆け付け警護活動及び在外邦人保護活動における任務遂行(PKO協力法改正案26条)のために自衛隊は武器を使用することができるようになる。
 シリアを始めるとする現在の中東情勢をみれば分かるように、現代の紛争は、正式な宣戦布告がなされて開始されるものではない。グレーゾーン事態などという概念を作出し、自衛隊の「平時」の武器使用権限を拡大することは、自衛隊が現地において、なし崩し的に紛争や戦争に参加することになる危険性を高めることにほかならない。
 安倍首相は、今回の法案についてあらゆる事態に「切れ目」のない対応を可能とする法整備を行うことが必要だと説明している。これは、「平時」とされる区域から戦争に参加し、暴力の応酬を通じて、武力行使へと「切れ目」なく戦闘活動をエスカレートできるようにするという意味にほかならない。

3 戦争は秘密から始まる
 秘密保護法については、従来から戦争法制の準備のための立法であることが指摘されてきた。
 近現代史を紐解けば、戦争が政府のウソから引き起こされてきたことは明らかである。満州事変(柳条湖事件)もベトナム戦争(トンキン湾事件)もイラク戦争(大量破壊兵器疑惑事件)も、すべて政府のウソから戦争が始められた。
 今回の戦争法制についても、「存立危機事態」や「重要影響事態」、「国際平和共同対処事態」の認定において、国会が自衛隊による海外活動の承認審議をしたり、市民がその根拠となる事実の存否を判断するために必要な情報が、秘密保護法により特定秘密に指定される危険性がある。安倍首相も、2014年10月の国会答弁において、武力行使の根拠となる情報が特定秘密となる可能性を認めているところである。これらの情報が市民にも国会にも公開されないまま、政府が恣意的に作出した情報に基づき、戦争参加が決定される危険性が高いのである。
 秘密保護法は、指定の範囲・要件が曖昧で、運用を監視する第三者機関の独立性・実効性が保たれておらず、内部通報制度にも実効性がないため、政府による濫用を防ぐことができないことは、これまで秘密保護法対策弁護団が指摘してきたとおりである。秘密保護法の下では、政府が防衛や外交等に関する情報を特定秘密に指定することで、戦争法制における要件に該当する事実があるか否かを判断するために必要な情報を秘匿することは容易である。また、これらの特定秘密を取り扱う官僚等が、政府が恣意的に作出した情報がウソであると気付いて市民に真実を伝えようとすると、秘密漏えい罪として最高で懲役10年という厳罰を覚悟しなければならず、強い萎縮効果が生じる。
 戦争法制が、秘密保護法の施行から僅か約半年後に提出されたということからしても、戦争法制と特定秘密保護法との強い関連性が推定されるところであり、戦争法制が施行され、秘密保護法が悪用されれば、日本が戦争へ突入することを止めることは誰にもできなくなってしまう。

4 日本人人質事件に関する検証委員会のレポートにみる秘密保護法の悪影響
 「イスラム国」(IS)による日本人人質事件に関して「邦人殺害テロ事件の対応に関する検証委員会」は5月21日、政府の対応について「救出の可能性を損ねるような誤りはなかった」とする検証報告書を公表した 。犯行グループの要求に政府は直接対応せず、被害者家族が専門家に相談して交渉したことが明らかにされた。しかし次のような重要な事実関係が公開されておらず、政府の対応に対する独立した検証はできていないと評価せざるを得ない。このような不十分な報告となった原因は多くの情報が特定秘密に指定されているためと、特定秘密を口実に特定秘密ですらない情報も隠しているためである。
 まず「特定秘密」に該当する情報が有識者メンバーに開示されたかどうかも確認できない。この検証がどのような情報に基づいてなされたのかもわからないのである。
 政府が人質拘束の可能性を認識した12月3日から、殺害予告動画が公表された1月20日までの対応の適否が焦点であった。人質となった後藤健二さんの妻は、この段階で犯人側とメールのやりとりをしていた。報告書は政府の関与について「必要な説明・助言を行うなど支援を行った」としたがその詳細は明らかになっていない。このような状況で、安倍首相・日本政府は中東に訪問する計画を変更することなく、1月18日にはエジプトにおいて、「地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。」と演説した 。
 その二日後である1月20日に後藤さんについての身代金要求額が、それまでの20億円程度から、安倍首相の演説後に2億ドル(日本政府の支援約束額と同額)に上がった原因について報告においては何ら検討がなされていない。
 さらに、この「スピーチ案を検討した時点で、政府としては、邦人が確かに拘束されていると認識し、犯行主体を特定するには至っていなかったが、様々な可能性がある中でISILである可能性も排除されないとの認識であった。同時に、中東地域のみならず国際社会全体にとっての脅威となっているISILをはじめ、テロとの闘いを進めている中東諸国に対して、連帯を示し、日本ができる人道支援を表明することが重要だとの考えに基づいて、スピーチの案文については、様々な観点から検討した。」と説明している(検証報告書17頁)。
 報告は、首相がこの時期に中東訪問を判断したことに問題はない、首相のカイロでの演説には問題はないとしているが、ISに身柄拘束されている可能性の高い邦人がいるところに行くことでISを刺激する危険はないのかという観点からの事前の検討がどのようになされたのかどうか明らかになっていない。また、邦人がISに身柄拘束されているときに、人道支援とはいえISと闘う諸国に援助すると演説することが本当に必要だったのか、そのような演説がISに身柄拘束されている者の身の安全にどのような影響をもたらすか、どのような検討の結果このような演説がされたのか、実際にどのような影響があったのかが全く検討されていない。
 このように、特定秘密保護法は既に重要な国の政策の適否を判断するうえで、特定秘密であるとする理由で詳細な説明をしない、特定秘密ではない情報まで、秘密にしてしまうという点で大きな障害となっていると評価できる。

5 戦争法制に反対する
 戦争法制は、本来1つ1つ時間をかけて吟味されるべき11の法案(①武力攻撃事態法改正案、②周辺事態法改正案、③PKO協力法改正案、④自衛隊法改正案、⑤船舶検査法改正案、⑥米軍行動円滑化法改正案、⑦海上輸送規制法改正案、⑧捕虜取り扱い法改正案、⑨特定公共施設利用法改正案、⑩NSC設置法改正案、⑪国際平和支援法案)を2つにまとめて提出されたことに加えて、「存立危機事態」等の新たな法概念を多数含めて提案されたことによって、大変分かりづらい法律案となっている。
 そのため、多くの市民にとって、これらの法案により実現されようとしている日本の戦争法制を正確に理解し、現実の運用を踏まえた戦争突入の危険性を想像した上で、法案の賛否を判断することは極めて困難である。戦争法制に重大な問題があることは上述したとおりであるが、それに加えて、本国会期間中に戦争法制の採決を行うことは拙速審議であり、民主主義に対する冒涜であると言わざるを得ない。
 秘密保護法は、多数の反対の声に囲まれるなか、2013年12月6日に国会で強行採決された。あの暴挙、不正義を、二度と繰り返してはならない。

6 日本が重要な情報を秘匿したまま新たな戦争を始めることを食い止めなければならない
 私たち秘密保護法対策弁護団は、秘密法に反対する法律家集団として、戦争法制そのものが憲法第9条・平和主義と立憲主義の原理に反するだけでなく、戦争法制と秘密保護法が結びついて悪用されるときには、日本が新たな戦争を重要な情報を秘匿したまま始めるであろうという強い危惧を持つ。
 私たち秘密保護法対策弁護団(構成員約400名)は、戦争法制に反対し、政府および国会に対して即刻廃案とするよう強く要求する。

 2015年6月1日
秘密保護法対策弁護団      
共同代表  海 渡  雄 一
同     中 谷  雄 二
同     南    典 男





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by himituho | 2015-06-02 22:25 | 弁護団の声明など
2014年 12月 09日

【声明】法律家8団体の秘密保護法廃止の共同声明

昨日、法律家8団体による秘密保護法に対する反対声明の記者会見に
秘密保護法対策弁護団も参加して参りましたので、ご報告致します。

東京新聞:「秘密法、即時廃止求める」 弁護士8団体声明
2014年12月8日 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014120802000227.html

共同声明の内容は、以下のとおりです。
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by himituho | 2014-12-09 18:20 | 弁護団の声明など
2014年 09月 09日

【申入れ】秘密保護法関連パブリック・コメントに関する申入書

本日10時30分頃、海渡雄一、杉浦ひとみ、海渡双葉、小川隆太郎の4名の秘密保護法対策弁護団メンバーが、同弁護団を代表して、内閣情報調査室の担当者と面会し、申入れを行いました。以下の申入書も手渡しました。
面会時には、秘密保護法の問題点について改めて指摘した上で、内閣官房および情報保全諮問会議で、パブリックコメント及び国連自由権規約委員会からの勧告を誠実に検討し、秘密保護法自体の抜本的見直しを含めた慎重な議論を行うことを求めました。また、寄せられたパブリックコメントの詳細及び情報保全諮問会議の議事詳細も明らかにするよう要請しました。

また、本日昼には、秘密保護法廃止へ!実行委員会主催の院内集会「パブコメをいかし、秘密保護法の抜本的見直しを求める市民と議員の集い」に、当弁護団メンバーが参加し、申入れについても報告を行いました。



2014年9月9日
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
内閣官房長官 菅 義偉 殿
内閣官房特定秘密保護法施行準備室 御中
内閣官房内閣情報調査室 内閣情報官 北村 滋 殿
情報保全諮問会議 座長 渡辺 恒雄 殿

秘密保護法対策弁護団      
共 同 代 表  海 渡 雄 一
同        中 谷 雄 二
同        南   典 男

秘密保護法関連パブリック・コメントに関する申入書

 2014年7月24日から同年8月24日までの間、特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という)に関連して、「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」、「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」、「内閣府本府組織令の一部を改正する政令(案)」の意見募集が実施され、2万3820件もの意見(以下「パブリック・コメント」という)が寄せられた。多くの市民が秘密保護法について関心を持っていることが明白である。
 私たち秘密保護法対策弁護団は、秘密保護法廃止運動を市民と共に担い、仮に秘密保護法が施行されて逮捕起訴された者が出た場合の刑事弁護を積極的に行うことを目的として結成した、全国の約370人の有志の弁護士の集まりである。当弁護団は、貴殿らに対し、上記パブリック・コメントに反映される市民の声を踏まえて、関連法令についてはもとより、秘密保護法そのものの抜本的な見直しを求める。
 今後、パブリック・コメントを踏まえて、情報保全諮問会議で秘密保護法について議論するとされている。同会議の次回の開催が大幅に前倒しになり、本年9月10日に開催されることとなったという。
 しかし、国民の声を無視して、拙速な議論のみで秘密保護法を強行施行することは許されない。昨年末の強行採決の愚を繰り返してはならない。
 特に、7月24日には、国連自由権規約委員会が、秘密保護法の秘密指定範囲・要件の曖昧さやジャーナリストに対する重罰等に対する懸念を示したうえで、規約19条に適合するため必要なあらゆる措置を執るよう勧告を出したばかりでもある。
 9月10日という日程では、国連自由権規約委員会の勧告を踏まえ、かつ、2万3820件にも及ぶパブリック・コメントを集計・分析して制度に反映させる準備が整っているとは到底言えない。
 さらに、今回のパブリック・コメントからも明らかなように、秘密保護法に対する市民の関心は非常に高く、秘密保護法に関する情報を強く求めている。今後の情報保全諮問会議における秘密保護法に関する議論は、このような市民の意思を尊重して、公開討議とし、市民の知る権利に十分配慮しなければならない。

 以上を踏まえて、当弁護団は、貴殿らに下記の実施を求める。
1 国連自由権規約委員会の勧告及びパブリック・コメントの内容を精査し、これらの意見を誠実に検討すること。
2 本年9月10日開催予定の情報保全諮問会議を延期し、その上で、国連自由権規約委員会の勧告及びパブリック・コメントの内容を精査し、秘密保護法の抜本的見直しの可能性も含めて、それらの意見への対応を検討し、検討結果が議論に反映できる段階で同会議を改めて開催すること。
3 パブリック・コメントの内容を集計・分析した結果の詳細について、市民に公開すること。
4 情報保全諮問会議について、議事を公開し、かつ、議事要旨の公開だけでなく議事録を公開し、同会議の構成員の誰がどのような発言をしたのかを明らかにすること。
以 上



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by himituho | 2014-09-09 16:22 | 弁護団の声明など
2014年 06月 16日

【声明】秘密保護法廃止法案の提出を歓迎する声明

秘密保護法廃止法案の提出を歓迎する声明


 昨年12月6日に強行採決により成立した特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」といいます)につき、本日、社民党、共産党、無所属の山本太郎議員と糸数慶子議員が、参議院に秘密保護法の廃止法案を共同で提出しました。

秘密保護法は、特定秘密の範囲が広範かつ曖昧であり、秘密指定が恣意的になされうる上、重罰化と共謀・独立教唆の処罰規定によって内部告発や取材・報道に対して萎縮効果を与え、市民の知る権利が害されるおそれがあることや、適性評価制度によるプライバシー侵害と差別の問題など、民主主義社会において看過できない危険性を有するものです。また、情報保全諮問会議は半年間も議論が行われず、実質的には行政機関である事務方を中心に指定基準が決められようとしています。国会法改正により設置されようとしている情報監視審査会は、行政機関の判断次第で特定秘密の提出が受けられないこととなっており、十分な監視を期待することはできません。このような根本的に不備のある秘密保護法は、いったん廃止し、今一度、知る権利と国家機密のあり方に関する国民的議論を尽くすべきです。

 私たち秘密保護法対策弁護団は、秘密保護法の廃止運動を市民とともに担うとともに、秘密保護法が施行された場合の犠牲者の弁護のために、本年3月12日に、有志の弁護士たちで結成されました。私たちは、憲法と国際人権基準に反する秘密保護法は廃止されるべきであると訴えるために、結成式の際には、村井敏邦教授と落合洋司弁護士による「秘密保護法の刑事法上の問題点」に関する記念講演会を行いました。さらに、本年5月上旬には、弁護団の国際部会メンバーが中心となり、「秘密保護法は国際的な基準であるツワネ原則にことごとく反している」と批判した米国政府元高官モートン・ハルペリン氏の招聘企画に協力し、本年5月下旬には、超党派国会議員団による海外調査報告書を踏まえ、秘密指定等に対する国会による監視のあり方について院内集会を行うなどして議論を喚起してきました。

今回、秘密保護法廃止の法案が国会に提出できたことは、人権擁護のための大きな前進であると考えます。この廃止法案が、より多くの国会議員の賛同を得て成立するよう強く希望し、そのために私たちも努力し続けるという決意をここに表明します。

 2014年6月16日

                   秘密保護法対策弁護団

                       共同代表 海渡雄一

                        同   中谷雄二

                        同   南 典男


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by himituho | 2014-06-16 17:30 | 弁護団の声明など
2014年 04月 28日

【声明】甲状腺がんに関するテレビ報道に対する環境省の「見解」発表に抗議する声明

甲状腺がんに関するテレビ報道に対する

環境省の「見解」発表に抗議する声明

 

 

2014年3月11日、テレビ朝日は、「報道ステーション」において「甲状腺がん」に関する特集企画を放送した。福島県で、東日本大震災当時18歳以下だった子ども約27万人のうち33人が甲状腺がんと診断されていることについて、福島県が行った「県民健康管理調査」の実態を検証し、委託先の県立医大が発表した「(現在までに分かっているがん患者33人について)被曝(ばく)の影響とは考えにくい」との結論に疑問を呈するものであったが、内容は、初期の検査体制の不備のために、内部被ばくデータ自体が不足し、検証を行うための重要なデータが足りない事実も紹介した上で、さまざまな立場の異なる専門家の見解を紹介するなど、公平性・客観性にも十分に配慮した上で、広く議論を呼びかけるものと評価できるものであった。

ところが、同番組に対し、翌3月12日、福島県立医大が「甲状腺がんと診断された方については福島第一原発事故の影響によるものとは考えにくい」との見解を公表したほか、3月18日ころには、環境省がウェブサイト上で番組に対する「見解」を公表した。

「見解」は、「事実関係に誤解を生ずるおそれもあるので、環境省としての見解を以下のようにお示しいたします。」としたうえで、「平成26年2月に環境省等が開催した「放射線と甲状腺がんに関する国際ワークショップ」に参加した国内外の専門家からは「原発事故によるものとは考えにくい」とされています」との同省の公式見解を示すものであるが、これは、公式見解と異なる見方及びその存在を放送した番組に対する、事実上の抗議にほかならない。

政府であっても、メディアによる報道内容が一方的かつまったくの誤報であり、重大な権利侵害にあたる場合、これに抗議し、内容の訂正を求め得ることまでは否定しない。しかし、当局の公式見解と異なる見解があることを報じたメディアに対し、そのことを理由として事実上の抗議を行うことは許されない。

なぜなら、第1にジャーナリズムの本旨は公権力の監視にあるからである。メディアは本質的に政府に批判的な立場・視座を持つことが要求されている。政府の政策が誤っていると判断した場合、それに対し批判的な番組や紙面を制作することは批判の対象とならないだけでなく、メディアとして当然の行為なのである。このようなメディアの本質的な行為に対して抗議をすることは、一切の政府批判は許されないと言う結果につながりかねない。今回のように、メディアが独自取材に基づき、公平性・客観性に十分に配慮した上でその見解を披歴しているに過ぎない場合はなおさらである。

第2に、マスメディアに過度の委縮を引き起こし、憲法で保障された報道の自由、知る権利を侵害するおそれがあるからである。報道の自由は、市民の知る権利に奉仕するために保障されていることに重要な意義があり、知る権利は、マスメディアが権力からの不当な干渉に動じることなく、多様な報道を行うことによって初めて実現される。

「誤解を生ずるおそれがある」という理由で、政府当局が報道の内容そのものにコメントするという今回の環境省のような所為は、事なかれ主義に走りがちな報道機関の経営者やスポンサーに、国策に反する報道は許されないとのメッセージを伝えることとなり、メディアに求められる知る権利に資するための報道姿勢を萎縮させかねない。同様の動きが重なることで、メディアは批判を躊躇するようになり、日本全体の言論の自由の幅を狭め、自由で闊達な言論空間を失わせることになるだろう。特に紙媒体と異なり、総務省による免許事業である放送メディアについては、とりわけ政府の行為による萎縮効果が生じやすく、謙抑的な姿勢が求められている。

これらの政府の一連の動きは、市民の知る権利を侵害し、国民の生命・健康にとって重要な政府の行為が秘密にされてしまいかねないものであり、秘密保護法に反対する当弁護団が、最も懸念しかつ憂慮していた事態である。健康管理調査に関する情報は、特定秘密に当たるとは考え難いが、国民、特に福島で暮らす子どもたちの生命・健康の権利保障に直結しうる極めて重要な情報である。このような国民の基本的人権保障に関する情報が、福島原発事故後に政府や福島県によって意図的に隠され、知る権利が制約されてきたことは疑いがない。当弁護団は、政府は、不当な抑圧につながるような個別報道への懸念の表明などの行為をしてはならないと考え、環境省に対して、強く反省を求めるものである。

 

平成26年4月28日

秘密保護法対策弁護団

共同代表 海渡 雄一

同   中谷 雄二

同   南  典男


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by himituho | 2014-04-28 11:19 | 弁護団の声明など


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